ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

活動報告ー8月基礎医学講座

 猛暑が続いている今年の夏。

 8月5日、この日も酷暑という表現が相応しいほどの暑さの中、開催させていただきました「鍼道 一の会」東洋基礎医学講座のレポートです。

 

  まずは、この暑さもなんのその、元気いっぱいの永松副代表による「易学」講義から

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 前回は、「混沌」から「太極」の立て方。そして両儀、四象、八卦までの流れを講義して頂きました。もうすでに八卦と五臓だけでなく、日常の現象においてイメージできる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 今回は、すでに説かれた太極の立て方を、実際の日常にどのように応用していけばいいのか講義下さいました。

 参加者のみなさま全員に 実際に太極を立てていただき、両儀から四象まで陰陽を分割し、終始・循環の考えを織り交ぜて変化を捉えることに主眼を置いての講義となりました。

 

 参加者の方が抱えている日常の諸問題を題材として、筆者もちょこっと参加させて頂きました。 

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  筆者、頭を丸めて座禅着を初披露。なんちゃって僧侶ですが…先ずは形から。

 

 太極を定めた後は、天地・南北が定まり、左右・東西が自然と定まります。

 天地の間、上下左右で昇降の気が動くのですから、これに法り問題解決を図れば良い訳です。

 筆者は、六十四卦のすべてに通じるところまでは程遠いのですが、四象レベルの単純なモデルでも十分、複雑な問題解決の糸口が見つけられると感じました。

 

 続きましては、江見木綿子先生による「臓象学」

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  江見先生、この酷暑にもかかわらず、パッと花咲くような華やいだイメージがしました。実はつい先日、誕生日を迎えたばかり。何かご自身の中で、ひらめくものでもあったのでしょうか。

 

 今回は、腎・膀胱の臓象でしたが、「一の会」教科書を予習してきていることを前提に、押さえておくべき要点と江見先生独自の臓象イメージを披露してくださいました。

 

 

 そして午後の休憩をはさんで、永松先生による「身体学」

 (参加者に混じって、筆者も楽しくやってましたので、うっかり写真を撮り忘れてしまいました。)

 

 今回感じたことは、身体の動作・所作と呼吸を意識することの重要性です。

 呼吸と動作、なかなか文字で表現することが難しいですが、会場はエアコンが効いている中、皆さんの熱気で熱く盛り上がりました。

 

 そして続くはこのお二人。

 江見木綿子先生と新妻裕希先生による「経絡学」

 新妻先生は「鍼道 一の会」2年目。新進気鋭かつフレッシュで、これから伸びようとする肝気盛んな気を十分に感じさせてくれます。

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 経絡流注の漢文は、参加者のみなさまに順次 読み下して頂きました。

 緊張感漂う、いい感じになりました。

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 永濱先生と高橋先生。両先生の真剣なまなざし。

 和やかさの中に真剣さを漂わせながら、経絡学は終了。

 

 江見先生と新妻先生のナイスペア。

 お二人ともいいお顔なさってます。

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 筆者は、お二人に講義をお任せして後ろから見ておりましたが、「経絡学」は古典の踏襲はもちろん、それを前提にしながらまだまだ臨床に基づいて発展させることが出来る余地が大いにあると感じさせられました。

 

 それを具体化するかのように、続いては稻垣座長による「稻垣流鍼灸医学臨床論」

 

 通常行っております「一の会式・東医理論」の番外編と銘打って、座長が半生をかけて培って来た「稻垣流脈診術とその治療」に至るまでの経緯を精密に講義。

 次回8/26に行います臨床医学講座の事前講義として行いました。

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 稻垣座長はとにかく写真が撮りにくいのです。

 と、言いますのは、講義中 目を閉じて内面世界と常に照合しているので、「目が開いている」瞬間が少ないのです。

 一見、理論派でありながら、常に心中の感覚と照らし合わせながら言語化しているのです。

 頭脳派に見えて、実は感覚派なのですね、稻垣座長は。

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 詳細をここに記すことは致しませんが、「難経」で言わんとする 五臓の脈 と 三才 の組み合わせ理論、またその臨床などは、おそらくこれまで誰も気付かなかったところではないでしょうか。
 

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 病を治すことが出来てこその理論。

 ここに至るまで紆余曲折はあったにしても、一定の治療成果を実感として手に入れた稻垣座長の喜びは、参加者のみなさまにも十分に伝わったと筆者は感じています。

 実際、参加者のアンケートからは、もっと古典に触れたいという感想が多数寄せられています。

 

 次回、8月26日の臨床医学講座では、午後より稻垣流臨床の実際を。

 また、その日の午前中には ご縁により草薙龍瞬先生をお迎えし、ご講演をしていただく予定です。

 さてさて盛りだくさんの一日になりそうです。^^

 

 

 

 次回、『鍼道 一の会』東洋臨床医学講座は8月26日(日)です。

(大阪・南森町の大阪医療技術学園専門学校実技室をお借りして、開催させていただきます。)

 

 『鍼道 一の会』は、随時入会を受け付けております。

 興味が湧いた、面白そう、ピン!と来た方、どうぞお問い合わせください。

 お問い合わせは

 『鍼道 一の会』 事務局 大上(おおがみ)まで

  詳細はこちらへ↓

仏教・禅・瞑想

仏 教

 仏教は、今を去ること約2600年前、インドで釈迦が説いた宗教です。

 その後は、みなさまもご存知の通り時代を経るごとに、また各地に伝播した先で変貌を遂げ、様々な部派・宗派が生まれました。

 日本でも、数多くの宗派がありますが、人々が平和を願い、この人生において「心の平安・安心」を実現したいという点では共通しています。

 ここに東洋医学の共通点を見出すことも、大切なことです。

 身体の充実は、心の充実に繋がります。

 心の安心とやすらぎは、心の自由な創造を実現します。

 心身がこのようでありますと、自由闊達として人生を大いに楽しむことが出来ます。

 そんな手掛かりとなる著書を集めてみました。

 

【ヴィッパッサナー瞑想】

 草薙 龍瞬

 専門用語をほとんど使わずに、誰にでも理解できる仏陀の教えを説いてます。

 また、坐って行う瞑想だけでなく、日常生活の中で「いま・ここ」の自分に気づきながら生活する方法なども、平易に説いておられます。

 

 

ティックナットハン

 

 

アルボムッレ・スマナサーラ

 

 

 

【禅】

 原田 祖岳

 

  

 

大森 曹玄

 

    

 

その他

 

易学

易経講座

安岡 正篤(著)
難解で狭き門となっている易経。
易の始まりは、認識論に乏しかった古代においては、卜占から始まったようである。
その後、認識論の高まりにつれて、自然界の変化をあらゆる分野に応用されるようになった。
鍼灸医学、とりわけ黄帝内経の世界観にも、易の認識論は色濃く反映されている。
現代では、易は売占的イメージがある一方、これを人生哲学に応用し、より人生を豊かに充実したものにしようとした人たちがいる。
まったくの素人でも、売占的でない、易本来のなんたるかを知ることのできる良書である。
志高く、これから易に挑もうとする初学の人には、是非ともお薦めしたい。

東洋医学書

*書名を直接クリック・タップすると、amazon.co.jpへのリンクが開きます。

【入門編】

やさしい中医学入門  

関口 善太 (著)  東洋学術出版社
初学の方には、とっつきがよく、しかも3日で読めると帯に記されている通り、短時間で中医学全体を把握するのに適しています。
丁寧に、何度も読み返しながら、『東洋医学基礎講座-中医学から学ぶ東洋医学用語 』を受講すると、より深く理解することが出来ます。

 

陰陽五行説―その発生と展開

 根本 幸夫 (著), 根井 養智 (著)

代表・金澤が、陰陽論と五行論の成り立ちが別であったことを知ったきっかけになった書籍です。
総論としてこれが一番だと今も考えています。是非ご一読を!

 
中国傷寒論解説

劉渡舟 (著), 勝田正泰 (著)  東洋学術出版社
必須の課題と理解していても、鍼灸師にとってはとっつきにくく感じる「傷寒論」。
六経概念を理論的に把握するだけでは、鍼灸師にとっては不足です。実際に切診を通じて、六経の変化を捉えることが必要だからです。
「一の会」では、中医学的解釈を踏まえながらも、具体的に気を捉えて臨床を行った日本漢方古方派を中心に講義を行っています。
まず理論的に「傷寒論」の中医学的解釈のスタンダードを把握すると、講義内容の理解が一段と深まります。

 
基礎中医学

神戸中医学研究会(著)
本書の内容に則して「一の会」の講義を進めています。
基礎とはいえ、内容は豊富で充実しています。
「やさしい中医学」が十分手の中のものとすることが出来ましたら、手元において丹念に読み進めると、臨床力がつきます。

 
中国漢方医語辞典

中医研究院 (編集), 中医学基本用語邦訳委員会

ぜひとも手元に一冊置いておきたい必須書籍です。単に「用語」だけでなく、科目別に疾患とその病機なども記されています。

 

 

【応用編】 

傷寒雑病論―『傷寒論』『金匱要略』
日本漢方協会学術部 (編集)
現在、もっともスタンダードとされている宋本の傷寒雑病論。
8月から新たに開始する「一の塾」のテキストです。
内容はすべて漢文ですが、傷寒雑病論の漢文は、比較的平易です。まず読めるようになること。そして条文を通じて何を伝えようとしているのかを、謎解きのように紐解いて行くことができるようになると、とても面白く、鍼灸臨床になくてはならない書であることが実感できます。
何度も読み込み、臨床に照らし合わせていくと、条文中の錯簡にも気がつくようになります。
 
中医臨床のための中薬学

神戸中医学研究会 (著)
「基礎中医学」をある程度読んで理解できるようになった後、証と方剤をより深く理解するために必携の書です。
古典に記されている薬種から、現代中医学で用いられているものまで、幅広く扱っています。

 

 

中医臨床のための方剤学

神戸中医学研究会 (著)
「基礎中医学」に記載されている方剤の方意、対象となる証の病機などが記載されており、「中医学基礎」をより精密に学び、また弁証力を向上させるに役立つ内容です。

活動報告ー7月 臨床医学講座

 猛暑が続いていますね。

 7月23日は、二十四節気では一年中で最も暑い頃とされている「大暑」でした。

 先日7月22日の「鍼道 一の会」東洋臨床医学講座も、暑いというより「熱い」がぴったりくるような気候の中、開催させていただきました。

 大阪・南森町にあります大阪医療技術学園専門学校の教室をお借りしての臨床医学講座レポートです。

  暑さを吹き飛ばすような気合で、今月も参ります!

 

 まずは稻垣座長から、本日の講座内容の流れを説明。

 その中で、前回の臨床医学講座でハル&ゼッキーこと、健志堂の尾関先生と古賀先生に講義して頂いた「ペップトーク」の骨子について触れています。

 動画は、約6分です。

 

 すでにお伝えいたしましたように、『鍼道 一の会』の今年のテーマは、 

 「祝由」

 「移精変気」

 「言霊」  です。

 

 そしてこのペップトーク。『鍼道 一の会』では、筆者をはじめとしまして、ちょっとしたブームとなっております。

  

 今回は、フィジカルヴァンガード、藤田実優先生によるペップトークをご紹介します。       

 藤田先生によるペップトーク動画。(約6分30秒)

 

 

 藤田先生からのエールを受けて、緊張しながらも、まるで挑戦者のような静かな闘志を感じさせる永濱先生にバトンタッチ。

 今回は、脈診以外の切診(腹診・背診・原穴診)について。

 なかなか脈診のようなはっきりしたマニュアルがない分野にもかかわらず、体当たりで挑んでくださいました永濱先生。

 ご自身がこれまで学んできた中で印象に残っていることを、いつもの愛らしい(?)口調で語って下さいました。

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 そしてお昼の休憩をはさみまして、永松先生による身体学。

 今回は、永松流の呼吸瞑想です。どのように自分の意識を拡げていくのかを説明してくださいました。

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 そして六字訣の中のひとつを使って、実際に応用してみました。

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 身体学で気を整えた後、実技に入ります。

 今回は腹診・背診・原穴診です。

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 立ち位置や手の持って行き方、触れ方、みなさまもれなく上達されています。

 これは何といっても身体学の成果だと、筆者はひとり合点しております!

 

 そして最後は、きっちりと稻垣座長が締めてくれました。

 今回も、非常に有意義な内容となったのではないでしょうか。

 以下の動画は、稻垣座長による、本日のまとめと今後の方針および予定です。(約7分)

 

  本日も、暑い中お集まりいただきました皆様、お疲れさまでした!

 そして会場をお貸しくださいました大阪医療技術学園専門学校の関係者の皆様、本日もありがとうございました。

 

 

 次回『鍼道 一の会』東洋基礎医学講座は8月5日、臨床医学講座は8月26日です。

 

 『鍼道 一の会』は、自由自在に気を扱える、高度なプロ鍼灸師を目指す集団です。

 ご興味のある方は是非、『場の気』を感じにお越しください。

  『鍼道 一の会』についてのお問い合わせは、事務局 大上(おおがみ)まで

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199.厥陰病 374条~381条 最終章

【三七五条】

下利後更煩、按之心下濡者、為虛煩也、宜梔子豉湯。方十六。

下利したる後更に煩し、之を按じて心下濡(なん)の者は、虛煩(きょはん)と為すなり、梔子豉湯に宜し。方十六。

  374条で、大承気湯もしくは小承気湯を服用した後、実邪が除かれて現れた証候だと思います。

 梔子豉湯に関しては、すでに述べています。

 62.太陽病(中)76条 心中懊憹(1)梔子豉湯

 63.太陽病(中)76条 心中懊憹(2)催吐薬?

 64.太陽病(中)77条~78条 心中懊憹(3)

 

【三七六条】

嘔家有癰膿者、不可治嘔、膿盡自愈。

嘔家(おうか)、癰膿(ようのう)有る者は、嘔(おう)治すべからず。膿(のう)盡(つ)きれば自ら愈ゆ。

  この条文は、解説いたしません。

【三七七条】

嘔而脉弱、小便復利、身有微熱、見厥者、難治、四逆湯主之。十七(用前第五方)。

嘔(おう)して脉弱、小便復た利し、身に微熱有りて、厥(けつ)を見(あら)わす者は、治し難(がた)し。四逆湯之を主る。十七(前の第五方を用う)。

  四逆湯に関しては、これまで何度も触れてきましたので、解説いたしません。

【三七八条】

乾嘔吐涎沫、頭痛者、呉茱萸湯主之。方十八。

乾嘔(かんおう)し、涎沫(えんまつ)を吐し、頭痛する者は、呉茱萸湯之を主る。方十八。

 呉茱萸湯もまた、以下のブログに詳述していますので、ご覧頂けたらと思います。

153.陽明病 243条 呉茱萸湯

【三七九条】

嘔而發熱者、小柴胡湯主之。方十九。

嘔して發熱する者は、小柴胡湯之を主る。方十九。

  ここでは、症候が簡述されていますが、前条の呉茱萸湯との鑑別のために並べていると考えています。

 少陰病・小柴胡湯証も、これまで何度も登場していますので、小柴胡湯証の正証を押さえて老いて頂けたらと思います。

 70.太陽病(中)96条 小柴胡湯

 

 以下、380条と381条は、原文と読み下し文のみの掲載です。

 これで「傷寒論」最終章とさせていただきます。

 みなさま、これまでお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

 

 【三八〇条】

傷寒、大吐、大下之、極虛、復極汗者、其人外氣怫鬱、復與之水以發其汗、因得噦。所以然者、胃中寒冷故也。

傷寒、大いに吐し、大いに之を下し、極めて虛し、復た極めて汗する者は、其の人外氣(がいき)怫鬱(ふつうつ)す。復た之に水を與(あた)え、以て其の汗を發し、因(よ)りて噦(えつ)を得る。。然(しか)る所以(ゆえん)の者は、胃中寒冷するが故なり。

 

【三八一条】

傷寒噦而腹滿、視其前後、知何部不利、利之即愈。

傷寒噦(えつ)して腹滿するは、其の前後を視て、何れの部の利せざるかを知り、之を利すれば即ち愈ゆ。

198.厥陰病 374条 讝語・燥屎 宜小承気湯

【三七四条】

下利讝語者、有燥屎也、宜小承氣湯。方十五。

下利して讝語する者は、燥屎(そうし)有るなり、小承氣湯に宜し。方十五。

 下利をして讝語するのですから、この下痢も熱痢の範疇に入りますね。

 208条に「若腹大満して通ぜざる者は、小承気湯を与えるべし」とありますが、今回は下利をしています。

 陽明病の正証は、以下で復習して頂けたらと思います。

 131.陽明病 208条 大承気湯と小承気湯

 しかも大承気湯と小承気湯の鑑別のひとつに、大承気湯には燥屎が有り、小承気湯には無いはずでした。

 ですので、この条文そのものに錯簡なり誤りがあるように思われます。

 小承気湯を与えるべき人は、讝語して大便通ぜざる者。

 大承気湯は便秘して燥屎有りが一般的ですが、協熱下利や熱結傍流の下利がみられることもありました。

 ですので宜小承気湯を改め、宜大承気湯がしっくりとくるように思うのですが、どうでしょう。

 

 

197.厥陰病 373条 欲飲水 白頭翁湯

【三七三条】

下利欲飲水者、以有熱故也、白頭翁湯主之。十四(用前第十二方)。

下利し水を飲まんと欲する者は、熱有るを以ての故なり。白頭翁湯を之を主る。十四(前の第十二方を用う)。

 この場合の下利は、熱痢でした。そして口渇が現れたのですから、やはり熱の存在を示していると思います。

 しかしながら、少陰病・四逆湯証で、あまりに下利がひどくて津液を失ってしまった場合にも欲飲水が現れます。

 白頭翁湯証は熱痢ですが、あまりに下利が続くと津液不足で口渇する側面も現れるのかもしれません。

 このような場合、先ず小便不利という状態が現れるだろうと推測されます。

 白頭翁湯に関しては、すでに371条に記していますので、振り返りをして頂けたらと思います。

 195.厥陰病 370・371条 白頭翁湯

 

196.厥陰病 327条 先裏後表 桂枝湯 四逆湯

【三七二条】

下利腹脹滿、身體疼痛者、先温其裏、乃攻其表。温裏宜四逆湯、攻表宜桂枝湯。十三(四逆湯用前第五方)。

下利し、腹脹滿し、身體(しんたい)疼痛する者は、先ず其の裏を温め、乃ち其の表を攻む。裏を温むるは四逆湯に宜しく、表を攻むるは桂枝湯に宜し。十三(四逆湯は前の第五方を用う)。

 元々は表証があったのでしょう。

 その後、下利が現れお腹が脹滿するようになって、しかも身体疼痛するようになってきたのですね。

 陽明病などですと腹満でしかも鞕満。

 脹滿となりますと陰証・虚証です。

 ここは、あまり間違わないだろうと思います。

 脹滿は、なんとなくお腹の輪郭がぼんやりとした感じであまり力を感じません。

 脈も微細で四肢の厥冷なども現れているのでしょう。

 この場合は、まず裏を救うべく四逆湯類で水を排いて陽気の回復を図り、脈が浮緩でそこそこ有力となってきたら、桂枝湯で解肌しなさいと言う事ですね。

 先表後裏の原則の逆です。

 

 

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四逆湯

 

 

 

195.厥陰病 370・371条 白頭翁湯

【三七〇条】

下利清穀、裏寒外熱、汗出而厥者、通脉四逆湯主之。方十一。

下利清穀、裏寒外熱し、汗出で厥する者は、通脉四逆湯(つうみゃくしぎゃくとう)之を主る。方十一。

 通脈四逆湯に関しては、すでに317条で詳しく解説していますので、ここでは省略いたします。

180.少陰病 316・317条 真武湯・通脈四逆湯

 

三七一条】

熱利下重者、白頭翁湯主之。方十二。

熱利(ねつり)して下重(げじゅう)する者は、白頭翁湯(はくとうおうとう)之を主る。方十二。

 冒頭にいきなり熱痢と記されています。<中国漢方医語辞典>では熱瀉で記載がありますのでそのまま記します。

 「熱迫大腸(熱が大腸に迫る)によって引き起こされる❝火瀉❞ともいう。

 主要な症状は、粥(かゆ)のような黄と白のまざったものを下す、あるいは粘り気を帯び悪臭を放つ、腸がゴロゴロ鳴り腹が痛み、ひとしきり痛むとひとしきり下し、下した後には後重感がある。

 肛門は灼(やけ)るように熱く、小便は短くて赤い、口は渇き、舌苔は黄色、脈象は数などである。」

 下利には軽重バリエーションがありますので、熱の性質を考慮して下痢の状態を想像できると、日常の臨床で遭遇する単純な下利も、寒熱・虚実の鑑別が容易になります。

 熱ですから、便臭はきつく感じるでしょうし、肛門も熱く感じます。

 また下した後に気が抜けたようになるのは虚、すっきりとするのは実です。

 ここは、生体の正気の状態によってあいまいなグレーゾーンもありますので、その場合は他の証候と参伍して決定します。

 さて、白頭翁湯の下利ですね。

 例によって方剤をみてみます。

白頭翁 気味 苦寒
中薬学:清熱解毒・涼血止痢
薬徴:熱痢下重を主治するなり。若し熱痢、渇して心悸すれば、則ち白頭翁湯を用ふるなり。
新古方薬嚢:味苦温熱性の下利を治す。熱ありて腹しぶる者、腹脹る者、或は便血する者等を治す。本薬には解熱収斂性あるものの如し。

秦皮 気味 苦渋寒
中薬学:清熱燥湿 渋腸止痢 清肝明目
本草綱目:秦皮味苦微寒、風寒濕痺洗洗として寒気するを主り熱と目中の青翳白膜を除く、久服すれば頭白からず身を軽くす。
新古方薬嚢:微寒は熱を冷やし、苦は充血を去る。故に白頭翁に入りて諸薬に合して熱利下重を治す。

黄檗 気味 苦寒
中薬学:清熱燥湿 清熱瀉火 清熱解毒
新古方薬嚢:血熱を去り、下痢を止め、腹痛を治す。又黄疸を治す。何れも熱を除くが本薬の主る所なり。金匱要略にては黄蘗を自死せる六畜の肉を喰らひ其の毒に中りたる者を治するに用ゆ。

 黄連 気味 苦寒 燥湿清熱

薬徴:心中煩悸を主るなり。

 白頭翁をみると、血便とありますので営分や血分の深い熱を清する働きがあるように思えます。

 また黄蘗は、腸内の糞便の腐敗が進んだ湿熱を清する働きとも考えられます。

 意外なのは心熱を清する黄連が配されているので、熱痢下重に心中煩悸の症状があってもおかしくないですね。

 そして今ひとつはっきりと分からないのが秦皮です。

 どうも目・白髪など、上焦の症状が記されていますので、黄連とペアとも考えられます。

 <類聚方広義>をみますと、「熱利下重して心悸する者を治す」とあります。

 やはり、心悸症状を伴っているのですね。

 そしてその傍注に「貉丘岑(みなかくきゅう)先生曰く、かつて甲斐に在りし時、痢疾流行す。患いに嬰(ふれ)ざらぬ者無し。

 その症、大便毎に肛門灼熱すること火の如し。この方を用いて多く効有り。」

 「眼目鬱熱を治す。赤く腫れ陣痛風にて涙止まらざる者、また洗蒸剤を為すもまた効有り」と記されています。

 これらから、白頭翁湯の熱痢は、かなり熱の厳しい下利で、その熱は心神にまで影響していることが分かります。

 また白頭翁湯を外用剤として用いて効を取っているのも、発想としてすばらしいものを感じます。

 湿熱タイプの皮膚炎などに、黄連解毒湯などを外用剤にしてみたら・八味地黄丸を命門や神厥・関元に貼り付ければどうだろうという発想にもつながりますね。

 面白いですね。

 それはそうとして、白頭翁湯がなぜ厥陰病に入れられているのか・・・謎です。

 

〔白頭翁湯方〕

白頭翁(二兩) 黄檗(三兩) 黄連(三兩) 秦皮(三兩)

右四味、以水七升、煮取二升、去滓、温服一升。不愈、更服一升。

白頭翁(はくとうおう)(二兩) 黄檗(三兩) 黄連(三兩) 秦皮(しんぴ)(三兩)

右四味、水七升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。愈えざれば、更に一升を服す。

 

194.厥陰病 359条 乾姜黄連黄芩人参湯

【三五九条】

傷寒本自寒下、醫復吐下之、寒格、更逆吐下。若食入口即吐、乾薑黄芩黄連人參湯主之。方十。

傷寒本(もと)自と寒下(かんげ)するに、醫復た之を吐下して、寒格(かんかく)し、更に逆して吐下す。若し食口に入らば即吐するは、乾薑黄芩黄連人參湯(かんきょうおうごんおうれんにんじんとう)之を主る。方十。

  傷寒に罹ってから、どのような経過をたどったのかは不明ですが、とにかく寒性下利をするようになったのですね。

 寒痢ですので、希薄であまり便臭がしない下利です。

 それをどういう訳か医師が吐き下しをかけたところ、寒格となったところにさらに逆治を加えたのですね。

 ここは、医師がどこを見て吐下の法を用いたのかは、不明です。

 

 寒格とは、陰陽が交流しない状態の事でした。

 そうしたところ、食べ物を口にしただけで吐くようになってしまった場合は、乾姜黄芩黄連人参湯証と言う事です。

 寒格ということですので、どこで上下・寒熱が交わらないのかが、配剤から見えてきます。

 人参は心下痞鞕、黄芩は心下痞を主冶するのですから、心下~中焦で陰陽の交流が阻まれていることが分かります。

 黄連は、心中煩悸を治すのですから、胸部に鬱熱が存在しています。

 そして乾姜は、結滞水毒を主冶するのですから、中焦に水邪が存在していることが分かります。

 これらから、気逆によって水邪が心下を塞ぎ、上実下虚・上熱下寒となってロックがかかったかのようになっていることが見えてきます。

 黄連・黄芩のペアは、149条の半夏瀉心湯や155条の附子瀉心湯などが思い浮かびますね。

 またこの条文中の寒痢は、下焦に水があって陽気を抑え込んだ附子の寒痢とは病位が異なります。

 ですから、同じ寒痢であっても、厥陰病の寒痢より少陰病の寒痢の方がより重篤ですので、陰証の病位の順序を、太陰→厥陰→少陰とする根拠とすることが出来ると考えています。

 360条から369条までは、原文と読み下し文のみ記載しています。

 

〔乾薑黄芩黄連人參湯方〕

乾薑 黄芩 黄連 人參(各三兩)

右四味、以水六升、煮取二升、去滓、分温再服。

乾薑 黄芩 黄連 人參(各三兩)

右四味、水六升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め再服す。

 

【三六〇条】

下利有微熱而渴、脉弱者、今自愈。

下利し微熱(びねつ)有りて渴し、脉弱の者は、今自(おのずか)ら愈ゆ。

 

【三六一条】

下利脉數、有微熱汗出、今自愈。設復緊(一云設脉浮復緊)、為未解。

下利し、脉數(さく)、微熱有りて汗出ずるは、今自ら愈ゆ。設(も)し復た緊なれば、未だ解せずと為(な)す。

 

【三六二条】

下利、手足厥冷、無脉者、灸之不温、若脉不還、反微喘者、死。少陰負趺陽者、為順也。

下利、手足厥冷し、脉無き者は、之に灸す。温まらず、若し脉還(かえ)らず、反って微喘(びぜん)する者は、死す。少陰、趺陽(ふよう)より負の者は、順と為(な)すなり。

 

【三六三条】

下利、寸脉反浮數、尺中自濇者、必清膿血。

下利し、寸脉反って浮數(さく)。尺中自ら濇(しょく)の者は、必ず膿血(のうけつ)を清す。

 

【三六四条】

下利清穀、不可攻表。汗出必脹滿。

下利清穀(せいこく)するは、表を攻むべからず。汗出ずれば、必ず脹滿す。

 

【三六五条】

下利、脉沈弦者、下重也。脉大者、為未止。脉微弱數者、為欲自止、雖發熱不死。

下利し、脉沈弦の者は、下重(げじゅう)するなり。脉大の者は、未(いま)だ止まずと為す。脉微弱數の者は、自ら止まんと欲すと為す。發熱すると雖も死せず。

 

【三六六条】

下利脉沈而遲、其人面少赤、身有微熱、下利清穀者、必鬱冒汗出而解、病人必微厥、所以然者、其面戴陽、下虛故也。

下利し、脉沈にして遲、其の人面少しく赤く、身に微熱有り。下利清穀する者は、必ず鬱冒(うつぼう)し汗出でて解す。病人必ず微厥(びけつ)す。然る所以(ゆえん)の者は、其の面戴陽(たいよう)して、下虛するが故なり。

 

【三六七条】

下利脉數而渴者、今自愈。設不差、必清膿血、以有熱故也。

下利し、脉數にして渴する者は、今自ら愈ゆ。設(も)し差(い)えざれば、必ず膿血を清す。熱有るを以ての故なり。

 

【三六八条】

下利後、脉絶、手足厥冷、晬時脉還、手足温者生。脉不還者死。

下利の後、脉絶(ぜつ)し、手足厥冷するも、晬時(さいじ)にして脉還(かえ)り、手足温なる者は生く。脉還らざる者は死す。

 

【三六九条】

傷寒下利日十餘行、脉反實者、死。

傷寒、下利すること日に十餘行(こう)、脉反って實する者は死す。

193.厥陰病 356条 茯苓甘草湯

【三五六条】

傷寒厥而心下悸、宜先治水、當服茯苓甘草湯、却治其厥、不爾、水漬入胃、必作利也。茯苓甘草湯。方八。

傷寒厥して心下悸するは、宜しく先ず水を治すべし。當に茯苓甘草湯(ぶくりょうかんぞうとう)を服すべし。却って其の厥を治す。爾(しか)らざれば、水漬(すいし)胃に入り、必ず利を作(な)すなり。茯苓甘草湯。方八。

  茯苓甘草湯は、73条で五苓散証と口渇の有無で鑑別することがすでに述べられています。

 共通点は、小便不利ですので、356条も小便不利があると考えるべきでしょう。

61.太陽病(中)71~75条 五苓散 茯苓甘草湯

 さて、厥は気が逆流、もしくは上逆して四肢が冷たくなったり、重ければ人事不詳になります。

 心下が悸しているのですから、気が上逆して心竅である心下に何か詰まってしまっていることが分かります。

 心竅が、塞がってしまったからこそ、厥証が現れたのですね。

 その心下に何が塞がっているのかは、方剤の中身をみると茯苓・生姜が配されていますので、水邪だとすぐに分かりますね。

 そして桂枝で上衝・上逆を治して水邪を小便利に持って行くのですね。

 そして利水した後、まだ四肢厥冷が残るようであれば、四肢厥冷を目標に治療を施すべきであり、そうしなければ胃が水浸しとなるので必ず下痢をするようになると述べています。

 357・358条は、原文と読み下し文のみの記載です。 

〔茯苓甘草湯方〕

茯苓(二兩) 甘草(一兩炙) 生薑(三兩切) 桂枝(二兩去皮)

右四味、以水四升、煮取二升、去滓、分温三服。

茯苓(二兩) 甘草(一兩、炙る) 生薑(三兩、切る) 桂枝(二兩、皮を去る)

右四味、水四升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。

 

【三五七条】

傷寒六七日、大下後、寸脉沈而遲、手足厥逆、下部脉不至、喉咽不利、唾膿血、泄利不止者、為難治。麻黄升麻湯主之。方九。

傷寒六、七日、大いに下したる後、寸脉沈にして遲、手足厥逆し、下部の脉至らず、喉咽(こういん)利せず、膿血を唾(だ)し、泄利(せつり)止まざる者は、治ち難しと為(な)す。麻黄升麻湯(まおうしょうまとう)之を主る。方九。

 

〔麻黄升麻湯方〕

麻黄(二兩半去節) 升麻(一兩一分) 當歸(一兩一分) 知母(十八銖) 黄芩(十八銖) 萎蕤(十八銖一作菖蒲) 芍藥(六銖) 天門冬(六銖去心) 桂枝(六銖去皮) 茯苓(六銖) 甘草(六銖炙) 石膏(六銖碎綿裹) 白朮(六銖) 乾薑(六銖)

右十四味、以水一斗、先煮麻黄一兩沸、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、分温三服。相去如炊三斗米頃、令盡、汗出愈。

麻黄(二兩半、節を去る) 升麻(しょうま)(一兩一分) 當歸(一兩一分) 知母(ちも)(十八銖) 黄芩(十八銖) 萎蕤(いずい)(十八銖、一に菖蒲(しょうぶ)と作(な)す) 芍藥(六銖) 天門冬(てんもんどう)(六銖、心を去る) 桂枝(六銖、皮を去る)

茯苓(六銖) 甘草(六銖、炙る) 石膏(六銖、碎き、綿もて裹(つつ)む) 白朮(六銖) 乾薑(六銖)

右十四味、水一斗を以て、先ず麻黄を煮て一兩沸し、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。相い去ること三斗米を炊く頃の如くにして、盡(つく)せしむ。汗出でて愈ゆ。

 

【三五八条】

傷寒四五日、腹中痛、若轉氣下趣少腹者、此欲自利也。

傷寒四、五日、腹中痛み、若し轉氣(てんき)下り少腹に趣(おもむ)く者は、此れ自利せんと欲するなり。

192.厥陰病 353条~355条 四逆湯 瓜蒂散

【三五三条】

大汗出、熱不去、内拘急、四肢疼、又下利厥逆而惡寒者、四逆湯主之。方五。

大いに汗出で、熱去さらず、内拘急(こうきゅう)し、四肢疼(いた)み、又下利厥逆し惡寒する者は、四逆湯之を主る。方五。

 自ずと大いに汗がでたのか、発汗させたのかは不明です。

 それにもかかわらず熱が下がらない。

 内拘急とは、腹部の緊張でしかも四肢が疼いている。

 もしくは下痢をして厥冷して悪寒する場合もあるのは、四逆湯証であるというとでしょう。 

 

【三五四条】

大汗、若大下利而厥冷者、四逆湯主之。六(用前第五方)。

大いに汗し、若しくは大いに下利して厥冷する者は、四逆湯之を主る。六(前の第五方を用う)。

  同じように大いに発汗した後、場合によっては陽明だったのでしょうか、大いに下したところ四肢が厥冷するようになった。

 これは四逆湯証である、ということですね。

 

 この353条と354条が、なぜ厥陰病篇に記載されているのか、もう一つ判然としません。

【三五五条】

病人手足厥冷、脉乍緊者、邪結在胸中、心下滿而煩、飢不能食者、病在胸中、當須吐之、宜瓜蔕散。方七。

病人手足厥冷し、脉乍(たちま)ち緊の者は、邪結んで胸中に在り、心下滿して煩し、飢(う)ゆれども食すること能わざる者は、病胸中に在り。當に須(すべから)く之を吐すべし。瓜蔕散(かていさん)宜。方七。

 瓜蒂散証にも四肢厥冷が現れるのですね。おそらく、心下に熱痰が塞がったのだろうとすぐに気が付くと思います。

 四肢の厥冷とほぼ同時に脈も緊となるのでしょう。

 邪が胸中に結ぶとありますが、心下満とありますので、ここが邪実の本体が存在しているところですね。

 胃中が空っぽであっても、胃口で熱鍛が塞がっていれば、お腹は空いていても食べることが出来ないのも当然ですね。

 瓜蒂散証については、すでに述べていますので省略いたします。

 今回は、これまで。

 119.太陽病(下)166条 瓜蒂散

 

191.厥陰病 352条 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 内有久寒

【三五二条】

若其人内有久寒者、宜當歸四逆加呉茱萸生薑湯。方四。

若し其の人内(うち)に久寒有る者は、當歸四逆加呉茱萸生薑湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)に宜し。方四。

 352条は、前の351条を引き継いだ加減法です。

 非常に長い方剤名ですが、嘔を治す生姜を加えているので、一旦桂枝湯にして、さらに当帰、木通、細辛を加えた上に、さらに気味苦辛熱、嘔して胸満するを主冶する呉茱萸を足したものですね。

 そうすると方剤の意図がはっきりとしてくると思います。

 内に久寒があるとのことですので、素体としてすでに中焦に冷えと水が結んでいいることが分かります。

 脈も中焦で水と冷えが結ばれていることにより、細で絶えんと欲しており、四肢厥寒の他に、頭項項痛、悪寒、頭痛、胸満、嘔吐、腹痛など、気の衝逆症状があってもおかしくない症候が見えてきます。

 四逆湯と当帰四逆加呉茱萸生姜湯を比較すると、四逆湯は生附子が用いられているので、下焦で水が陽気を厳しく阻んでいるのに対して、当帰四逆加生姜湯は、水が中焦で留まり、陽気が上焦に昇らないとも考えることが出来ます。

 相対的に前者が虚、後者が実と診ることもできます。

 逆に言えば、当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、中焦の水を散らしながら陽気を一旦上焦に持って行き、全身の気をめぐらそうとする方剤とも言えます。

 大塚敬節は、いわゆる「疝」と称される下腹部痛、足厥陰肝経の証候である生殖器・泌尿器方面の障害に用いて多数著効を得たと述べています。

 鍼を用いるのなら、どうしますでしょう。

 筆者でしたら、中焦の水は下に下ろし、陽気は上に持って行きます。

 目付処は、やはり中焦から心下でしょうか。

 補瀉は、その時々で加減するので一概に言えませんが、上記を参考に選穴・補瀉すれば良いのではないかと考えます。

〔當歸四逆加呉茱萸生薑湯方〕

當歸(三兩) 芍藥(三兩) 甘草(二兩炙) 通草(二兩) 桂枝(三兩去皮) 細辛(三兩) 生薑(半斤切) 呉茱萸(二升) 大棗(二十五枚擘)

右九味、以水六升、清酒六升和、煮取五升、去滓、温分五服(一方水酒各四升)。

當歸(三兩) 芍藥(三兩) 甘草(二兩、炙る) 通草(二兩) 桂枝(三兩、皮を去る) 細辛(三兩) 生薑(半斤、切る) 呉茱萸(二升) 大棗(二十五枚、擘く)

右九味、水六升を以て、清酒六升を以て和し、煮て五升を取り、滓を去り、温め分かち五服す(一方に、水酒各々四升とす)。

190.厥陰病 351条 当帰四逆湯 手足厥

【三五一条】

手足厥寒、脉細欲絶者、當歸四逆湯主之。方三。

手足厥寒し、脉細にして絶せんと欲する者は、當歸四逆湯(とうきしぎゃくとう)之を主る。方三。

 条文の冒頭に手足厥寒とあります。

 これまで出て来た厥逆とか厥冷とは表現が異なっています。

 また方剤名は当帰四逆湯ですから、四逆=手足が冷たいことを表現しているのですが、厥逆・厥冷と厥寒とはどう違うのかは、配剤を吟味すると見えてきます。

 「脉細にして絶えんと欲す」は、317条 通脈四逆湯の「手足厥逆、脉微にして絶せんと欲す」に類似しています。

 180.少陰病 316・317条 真武湯・通脈四逆湯

 通脈四逆湯の配剤は、甘草2両 附子1枚 乾姜3両ですので、水が溢れて陽気存亡の危機にあることが分かります。

 ところが当帰四逆湯を見ると、附子・乾姜・桂皮などが配されていませんので、陽気の存亡の危機とまでは言えません。

 ですから当帰四逆湯は脉細にして絶えんと欲してはいても、他覚的にはそんなに手足の冷えが上がって来ることはないだろうと推測できます。

 ですのでこの厥寒は、患者自身が自覚的に冷えを訴えても、術者が実際に触れるとそんなに冷えを感じないだろうとも考えられます。

 臨床的にも、患者が強く冷えを訴えている割に、触れてみるとそんなに冷えを感じない場合が多々あります。

 配剤をみてみましょう。

 通草は、現代中薬学では、木通に相当します。

当帰 気味 甘辛苦 温
中薬学:補血調経 活血行気・止痛 潤腸通便 (血中の気薬)
新古方薬嚢:味甘温 中を緩め外の寒を退け気血の行りをよくすることを主る。故に手足を温め、腹痛を治し、内を調え血を和し胎を安んず、之れ当帰の好んで婦人血の道の諸病、諸の冷え込み等に用ひらるる所以なるべし。

木通 気味 苦寒
中薬学:降火利水、宣通血脈
新古方薬嚢:気味辛平気を通じ血を循らし、よく手足を煖む。故に当帰四逆湯に配伍せられ、手足の厥寒を治するに用ひらる。

 ざっと当帰四逆湯の配剤をみると、桂枝湯に似ていませんでしょうか。

 桂枝湯・・・・・桂枝、芍薬、炙甘草、大棗、生姜、ですね。

 当帰四逆湯・・・桂枝、芍薬、炙甘草、大棗    ここまでは桂枝湯と同じです。

 そして桂枝湯から生姜を外しています。

 加えて、当帰、細辛、木通です。

 桂枝湯の解説は、もうよろしいですよね。

 細辛は、気味辛温、薬徴では「細辛主治、宿飲停水也」とあります。木通と一緒になって良く水を行らすのだと思います。

 そして今ひとつはっきりとしない当帰ですが、中薬学では「血中の気薬」と称され、婦人の血の道の諸症に好んで用いられていることから、補血の作用と利気の両面があるように思えます。

 このように考えますと、どちらかと言えば血虚傾向でしかも停水もあり、血に陽気を乗せて運ぶことが出来なくて脉細にして絶えんと欲し、手足厥寒する状態と理解することが出来るのではないでしょうか。

 

〔當歸四逆湯方〕

當歸(三兩) 桂枝(三兩去皮) 芍藥(三兩) 細辛(三兩) 甘草(二兩炙) 通草(二兩) 大棗(二十五枚擘一法十二枚)

右七味、以水八升、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。

當歸(とうき)(三兩) 桂枝(三兩、皮を去る) 芍藥(三兩) 細辛(三兩) 甘草(二兩、炙る) 通草(二兩) 大棗(二十五枚、擘く、一法に十二枚とす)

右七味、水八升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。