ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

35.太陽病(中)31~32条 葛根湯証 自下利

 いよいよ<辨太陽病脉證并治中>に入って参りました。

 冒頭の葛根湯、一般に良く知られた方剤です。

 過去ブログ<14.太陽病(上)13~14条>で、すでに葛根湯と桂枝加葛根湯の違いについて述べていますので、もう一度復習して頂けたらと思います。

 

三一】太陽病、項背強几几、無汗、惡風、葛根湯主之。方一。

太陽病、項背(こうはい)強ばること几几(きき)として、汗無く、惡風するは、葛根湯之を主る。方一。

〔葛根湯方〕

葛根(四兩) 麻黄(三兩去節) 桂枝(二兩去皮) 生薑(三兩切) 甘草(二兩炙) 芍藥(二兩) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗、先煮麻黄、葛根、減二升、去白沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、覆取微似汗。餘如桂枝法將息及禁忌、諸湯皆倣此。

葛根(四兩) 麻黄(三兩節を去る) 桂枝(二兩皮を去る) 生薑(三兩切る) 甘草(二兩炙る) 芍藥(二兩) 大棗(十二枚擘く)

右七味、水一斗を以て、先ず麻黄、葛根を煮て、二升を減じ、白沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、覆(おお)いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。

餘は桂枝の法の如く將息(しょうそく)及び禁忌す、諸湯(しょとう)皆此れに倣(なら)え。

 

三二】太陽與陽明合病者、必自下利、葛根湯主之。方二(用前第一方一云用後第四方)。

太陽と陽明の合病なるは、必ず自から下利す、葛根湯之を主る。方二

【解説】

 一般的には、胃腸風邪と称されている状態です。

 太陽と陽明の合病ですから、邪気が一気に太陽から陽明にまで侵入し、しかも太陽にまだ邪が存在している状態ですね。 

 葛根湯証に加えて、陽明病の症候が現れているのですがその症状が述べられていません。

 問題のカギは「自下痢」になるので、これだけを記載したのでしょう。

 一般的に陽明病は、濈然(しゅうぜん)として汗が出る、不大便、悪熱、譫語、口渇、潮熱などの症候が現れます。

 ところが体表は風寒の邪に侵され肌表が閉じているので無汗です。

 そして中焦で蒸し上がった水湿が肌表で阻まれ、腑に下り流れ込んだ状態が「自下痢」と理解することが出来ます。

 おそらく「自下利」後は腑気が幾分通じるので、口渇や悪熱などの陽明病証が少し軽くなり、悪寒などの表証がはっきりと自覚されるようになるかもしれません。

 当然、「自下利」は、熱痢となります。

 したがって葛根湯を用いて汗として水湿と熱を肌表から排泄できれば、「自下利」は自ずと治まり表証も解けるという機序で治癒します。

 もし解表後、陽明経証が残れば白虎湯。

 陽明腑実証が残れば承気湯類ということになります。

 おおよそ、表寒証で下痢を起こすものは、素体として普段から水湿の邪を下焦に内包している人に起きやすいと考えられます。

 要は、水の出口が表寒によって塞がれてしまったがために、「自下利」となってしまったという訳です。

 このように水の出口という視点で見れば、大量の鼻水が出てもおかしくないですね。

 後々出てきますが、内熱が厳しい場合は、鼻血という形で自然瀉血が現れます。

 太陽と陽明の合病ともなれば、表証と裏証の症候が錯綜するのでしっかりと病態を認識する必要があります。

 

 

 

 

 

 

34.太陽病(上)30条 攙入の条文

 いよいよ<辨太陽病脉證并治上>の最後の条文になりました。

 ところがこの条文、どうも意味が通じません。

 一般には、錯簡があるだろうと言われていますがどうなのでしょう。

 著者、張仲景の筆法が簡略なものとすると、この30条は後人の書いたものが紛れ込んでしまったのでしょう。

 意味が通じるように並べ替えて、意味付けされた解説もあります。

 しかし今回は、意味が通じないまでもそのままの意訳にとどめます。

 文中の陽旦とは、桂枝のことです。

 桂枝湯の別名は、陽旦湯です。

 さらりと、目を通して頂けたらと思います。

 

【三〇条】

問曰、證象陽旦、按法治之而増劇、厥逆、咽中乾、兩脛拘急而讝語。

師曰、言夜半手足當温、兩脚當伸。後如師言、何以知此。

答曰、寸口脉浮而大、浮為風、大為虛。風則生微熱、虛則兩脛攣。

病形象桂枝、因加附子參其間、増桂令汗出、附子温經、亡陽故也。

厥逆、咽中乾、煩躁、陽明内結、讝語煩亂、更飲甘草乾薑湯、夜半陽氣還、兩足當熱、脛尚微拘急、重與芍藥甘草湯、爾乃脛伸。

以承氣湯微溏、則止其讝語。故知病可愈。

問いて曰く、證(しょう)は陽旦(ようたん)に象(かたど)り、法を按じて之を治す。而(しか)れども増して劇しく、厥逆(げつぎゃく)し、咽中乾き、兩脛(りょうけい)拘急して讝語(せんご)す、と。

師曰く、夜半に手足當(まさ)に温まるべし、兩脚(りょうきゃく) 當に伸ぶべし、と。後(のち)師の言の如し。何を以てか此れを知らん。

答えて曰く、寸口脉浮にして大、浮は風と為し、大は虚と為す。風は則ち微熱を生じ、虚は則ち兩脛(りょうけい)攣(れん)す。

病形桂枝に象(かたど)り、因りて附子を加え其の間に參(まじ)え、桂を増して汗を出さしむ、附子は經を温む、亡陽(ぼうよう)するが故(ゆえ)なり。

厥逆し、咽中乾き、煩躁す、陽明内結(ないけつ)し、讝語(せんご)し煩亂(はんらん)す、更に甘草乾薑湯(かんぞうかんきょうとう)を飲む、夜半陽氣還(めぐ)り、兩足當に熱すべし、脛尚(な)お微(すこ)しく拘急し、重ねて芍藥甘草湯を與う、爾(しか)らば乃(すなわ)ち脛伸ぶ。

承氣湯を以て微しく溏すれば、則ち其の讝語(せんご)止む。故に病愈ゆべきを知る、と。

【意訳】

(質問)

 患者が現している症候を、法をもって桂枝湯証だと判断して治療を行った。

 ところが反って症状が悪化し、しかも厥逆、咽中乾、兩脛拘急、譫語などの症候が現れてきた。

 すると師は、このように言われた。

 夜半になれば手足は温かくなり、兩脛の拘急も治まり伸ばすことが出来るであろうと。

 果たして師の言われたようになったが、何を以てこのようなことをあらかじめ知ることが出来たのでしょう。

(回答)

 寸口は浮・大である。浮は風であり大は虚である。風は微熱を生じ、虚は兩脛の攣を引き起こす。

 病型は桂枝に似ているが、桂枝湯に附子を加えてさらに桂枝を増量して発汗させた。 附子は経を温めるので、亡陽している場合に用いるからである。

 ところが厥逆、咽中乾、煩躁、陽明内結、讝語、煩乱が現れた。

 そこでさらに甘草乾姜湯を服用させれば、夜半になって陽気がめぐり始め、両脚も温かくなる。

 それにもかかわらず脛が少し拘急するようであれば、芍薬甘草湯を与える。そうすれば脛は伸ばすことが出来るようになる。

 その後、承気湯で少し下痢をさせれば、譫語も止む。

 このように治療を進めれば、病が癒えると知ることができるのである。

 

33.太陽病(上)29条 疑似桂枝湯証と壊病(5)

 いよいよ最後の四逆湯証のところに参りました。 

「若し重ねて汗を發し、復た燒鍼(しょうしん)を加うる者は、四逆湯之を主る」

 これは最初の「傷寒の脉浮、自ずと汗出で、小便數(さく)、心煩、微惡寒し、脚(きゃく)攣急(れんきゅう)」に桂枝湯で一度発汗させ、甘草乾姜湯証にまで病位を落としてしまった壊病でした。

 すると「厥(けつ)し、咽中乾き、煩躁吐逆」という症候が現れています。

 厥は手足の冷えですから、陽虚です。

 咽中が乾くのは、清陽が虚してしまって津液を蒸騰できないからです。

 煩躁は、陽虚となり残りの陽気が内に結んで動かなくなるので、もだえ苦しむようになります。

 煩躁は、陽明腑実証でも起きますが、この場合は発熱しますので鑑別を誤ることはないと思います。

 そして吐逆は、胃の気が虚して不和が起きているからと理解されます。

 この陽虚証に対して、さらに桂枝湯を服用させるか、さらに焼鍼を用いるなどしてさらに発汗させると、亡陽に至ってしまうことを言っているのだと思います。

 そうなるといよいよ甘草乾姜湯に生の附子を加えた、四逆湯の適応となってしまいます。

 四逆湯症は、一般的には重篤な陽虚証とされていますが、配剤を吟味すると乾姜・附子はともに気味辛温です。

 乾姜・附子は回陽薬ですが、温めて水を散らす・排泄させる方剤と理解するのが良いでしょう。

 ですから四逆湯を服用すると、手足が温まるだけでなく小便利となるはずです。

 つまり、陰気である水を排泄することで、相対的に身体全体を陽に持って行き、正気の回復を計るのだと理解されます。

 ここで、現在の温補という考え方そのものを根底から考え直す必要が出てくる訳です。

 言葉を換えれば、補瀉論にもつながってくる訳です。

 鍼を用いるとすれば、三焦のくくりである臍=神闕などの外、下焦に気が集まるような経穴の中から選穴し、脈や気色を診ながらの温補で良いと思います。

 この辺りは、病位と病理をつかんでさえいれば、それぞれの流派や患者の状態によって、自由な選穴・治療が可能だと思います。

 

【二九条】

傷寒脉浮、自汗出、小便數、心煩、微惡寒、脚攣急、反與桂枝、欲攻其表、此誤也。得之便厥、咽中乾、煩躁吐逆者、作甘草乾薑湯與之、以復其陽。若厥愈足温者、更作芍藥甘草湯與之、其脚即伸。若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯。若重發汗、復加燒鍼者、四逆湯主之。方十六。

傷寒の脉浮、自ずと汗出で、小便數(さく)、心煩、微惡寒し、脚(きゃく)攣急(れんきゅう)するに、反って桂枝を與(あた)え、其の表を攻めんと欲するは、此れ誤りなり。之を得れば便(すなわ)ち厥(けつ)し、咽中乾き、煩躁吐逆する者は、甘草乾薑湯(かんぞうかんきょうとう)を作り之に與え、以て其の陽を復す。若し厥愈え足温かなる者は、更に芍藥甘草湯を作り之を與うれば、其の脚即ち伸びる。若し胃氣和せず讝語(せんご)する者は、少しく調胃承氣湯(ちょうきじょういとう)を與う。若し重ねて汗を發し、復た燒鍼(しょうしん)を加うる者は、四逆湯之を主る。方十六。

 

〔甘草乾薑湯方〕

甘草(四兩炙)乾薑(二兩)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

甘草(四兩、炙る)乾薑(二兩)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔芍藥甘草湯方〕

白芍藥甘草(各四兩炙)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

白芍藥甘草(各四兩、炙る)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔調胃承氣湯方〕

大黄(四兩去皮清酒洗)甘草(二兩炙)芒消(半升)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒消、更上火微煮令沸、少少温服之。

大黄(四兩、皮を去り清酒で洗う)甘草(二兩、炙る)芒消(ぼうしょう)(半升)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取る、滓を去り、芒消を内(い)れ、更に火に上(の)せて微(すこ)しく煮て沸(わか)せしめ、少少之を温服す。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙)乾薑(一兩半)附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。強人可大附子一枚、乾薑三兩。

甘草(二兩、炙る)乾薑(一兩半)附子(一枚、生を用い皮を去り八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かちて温め再服す。強人は大附子一枚、乾薑三兩とすべし。

32.太陽病(上)29条 疑似桂枝湯証と壊病(4)

  さて、「若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯」は、どこからの続きとして考えればいいのかを考察して参ります。

 さて、このテーマでここまで来たわけですが、そもそも「傷寒の脉浮、自ずと汗出で、小便數(さく)、心煩、微惡寒し、脚(きゃく)攣急(れんきゅう)する」病態をどのように推測するかで、大きく変わってきます。

1.太陽と少陰の合病であった者。

  一般的には、桂枝加附子湯証であるとして理解されているようです。

  しかしこの場合、太陰病位の甘草乾姜湯で陽気を回復させています。

  おそらく小便利となり完治するでしょう。

  しかし反って陽気過剰となれば、内熱を生じることも考えられます。

2.気血両虚であった者。

  甘草乾姜湯で陽気を回復させ、後に芍薬甘草湯で陰気の回復を計っています。

3.気虚裏寒水であった者。

  甘草乾姜湯で、小便利となり回復する。

  この証は、後に出て来る小青竜湯証(表寒実裏寒水)に類似した証です。

4.気虚裏熱水であった者。

  甘草乾姜湯で、ある程度小便利は得られるものの、内熱・湿熱が盛んとなる。

  この証は、後に出て来る大青龍湯証(表寒実裏熱水)に類似した証です。

 

 以上、素体を4種類に分けてみました。

 調胃承気湯は、陽明腑実証の軽い場合に用いられます。

 上記の4種類の素体の内、胃気の不和を起こし、讝語するようになるのは1.4.の場合と想定できませんでしょうか。

 まだまだ、議論と推敲が必要ですが、一応これで落ちをつけておきます。

 あと残るのは、「若し重ねて汗を發し、復た燒鍼(しょうしん)を加うる者は、四逆湯之を主る」のところとなります。

 

【二九条】

傷寒脉浮、自汗出、小便數、心煩、微惡寒、脚攣急、反與桂枝、欲攻其表、此誤也。得之便厥、咽中乾、煩躁吐逆者、作甘草乾薑湯與之、以復其陽。若厥愈足温者、更作芍藥甘草湯與之、其脚即伸。若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯。若重發汗、復加燒鍼者、四逆湯主之。方十六。

傷寒の脉浮、自ずと汗出で、小便數(さく)、心煩、微惡寒し、脚(きゃく)攣急(れんきゅう)するに、反って桂枝を與(あた)え、其の表を攻めんと欲するは、此れ誤りなり。之を得れば便(すなわ)ち厥(けつ)し、咽中乾き、煩躁吐逆する者は、甘草乾薑湯(かんぞうかんきょうとう)を作り之に與え、以て其の陽を復す。若し厥愈え足温かなる者は、更に芍藥甘草湯を作り之を與うれば、其の脚即ち伸びる。若し胃氣和せず讝語(せんご)する者は、少しく調胃承氣湯(ちょうきじょういとう)を與う。若し重ねて汗を發し、復た燒鍼(しょうしん)を加うる者は、四逆湯之を主る。方十六。

 

〔甘草乾薑湯方〕

甘草(四兩炙)乾薑(二兩)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

甘草(四兩、炙る)乾薑(二兩)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔芍藥甘草湯方〕

白芍藥甘草(各四兩炙)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

白芍藥甘草(各四兩、炙る)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔調胃承氣湯方〕

大黄(四兩去皮清酒洗)甘草(二兩炙)芒消(半升)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒消、更上火微煮令沸、少少温服之。

大黄(四兩、皮を去り清酒で洗う)甘草(二兩、炙る)芒消(ぼうしょう)(半升)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取る、滓を去り、芒消を内(い)れ、更に火に上(の)せて微(すこ)しく煮て沸(わか)せしめ、少少之を温服す。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙)乾薑(一兩半)附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。強人可大附子一枚、乾薑三兩。

甘草(二兩、炙る)乾薑(一兩半)附子(一枚、生を用い皮を去り八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かちて温め再服す。強人は大附子一枚、乾薑三兩とすべし。

31.太陽病(上)29条 疑似桂枝湯証と壊病(3)

 前回、甘草乾姜湯で陽気が回復したにもかかわらず、脚の引きつりが治まらない場合は、芍薬甘草湯を用いて陰気が回復すると脚の攣急も治まるということでした。

  もう一度条文を見て下さい。

 この後に続く条文「若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯」は、どこからの続きとして解釈すれば良いのでしょうか。

 甘草乾姜湯を服した後なのか、芍薬甘草湯を服した後なのでしょうか。

 それとも、疑似桂枝湯証の症候が、調胃承気湯証の場合もあるのかということも考えることが出来ます。

 このなぞを解くために、調胃承気湯の方剤構成を見てみましょう。

 まず、調胃承気湯は、陽明腑実証の方剤であることを押さえておいて下さい。

 

 大黄 気味 苦寒

 薬徴:結毒を通利することを主る。

 芒消 気味 鹹苦寒

 薬徴:堅をやはらぐることを主る。故に心下痞堅、心下石硬、少腹急結、結胸、燥屎、大便鞕、を治す。傍ら宿食、腹満、少腹腫痞、などの諸般難解の毒を治す。

 

 大黄と芒消は共に、寒薬です。

 大黄は内熱を下に導いて大便を通じて排泄し、芒硝は、堅いものを潤しやわらげる気の作用があります。

 新古方薬嚢では調胃承気湯証について、

 「熱ありて下痢する者、熱ありて便通なき者、風のこぢらかしなどにて幾日も便通なく熱のとれざる者、但しこの場合悪寒の無き者に限る。

 本証の熱の様子は、むしむしとして熱苦しく口中燥く者多し、しんに熱ありて便通なく腹大いに脹って口中燥く者」とあります。

 条文には、「胃気の和せざるもの」とありますので、食欲不振や吐き気などの症状があってもおかしくありません。

 総じて、腹部は少し緊張があり、しかも胃の腑を中心とした内熱の症状があることが分かります。

  さて、「若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯」は、どこからの続きとして考えればいいのでしょうか。

 続きは、次回に。 

【二九条】

傷寒脉浮、自汗出、小便數、心煩、微惡寒、脚攣急、反與桂枝、欲攻其表、此誤也。得之便厥、咽中乾、煩躁吐逆者、作甘草乾薑湯與之、以復其陽。若厥愈足温者、更作芍藥甘草湯與之、其脚即伸。若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯。若重發汗、復加燒鍼者、四逆湯主之。方十六。

傷寒の脉浮、自ずと汗出で、小便數(さく)、心煩、微惡寒し、脚(きゃく)攣急(れんきゅう)するに、反って桂枝を與(あた)え、其の表を攻めんと欲するは、此れ誤りなり。之を得れば便(すなわ)ち厥(けつ)し、咽中乾き、煩躁吐逆する者は、甘草乾薑湯(かんぞうかんきょうとう)を作り之に與え、以て其の陽を復す。若し厥愈え足温かなる者は、更に芍藥甘草湯を作り之を與うれば、其の脚即ち伸びる。若し胃氣和せず讝語(せんご)する者は、少しく調胃承氣湯(ちょうきじょういとう)を與う。若し重ねて汗を發し、復た燒鍼(しょうしん)を加うる者は、四逆湯之を主る。方十六。

 

〔甘草乾薑湯方〕

甘草(四兩炙)乾薑(二兩)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

甘草(四兩、炙る)乾薑(二兩)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔芍藥甘草湯方〕

白芍藥甘草(各四兩炙)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

白芍藥甘草(各四兩、炙る)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔調胃承氣湯方〕

大黄(四兩去皮清酒洗)甘草(二兩炙)芒消(半升)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒消、更上火微煮令沸、少少温服之。

大黄(四兩、皮を去り清酒で洗う)甘草(二兩、炙る)芒消(ぼうしょう)(半升)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取る、滓を去り、芒消を内(い)れ、更に火に上(の)せて微(すこ)しく煮て沸(わか)せしめ、少少之を温服す。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙)乾薑(一兩半)附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。強人可大附子一枚、乾薑三兩。

甘草(二兩、炙る)乾薑(一兩半)附子(一枚、生を用い皮を去り八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かちて温め再服す。強人は大附子一枚、乾薑三兩とすべし。

活動報告ー1月臨床講座

 1月28日(日)、小雪が舞う中、今年度第9回目の臨床医学講座を行いました。

 今回はすべて治療実技を行う予定でしたが、少し遅れる受講生さんを待つ間、座長・稻垣先生に何か今ホットな話題をしてください!とお願いし、お話しくださいました内容をシェアいたします。

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「実は今日の講座終了後、とある大学の試験を受けに行くんです・・・」とのことで、それに関連した話題を。

 

 まずは1991年以降、医師と患者との関係性が大きく変化した経緯について。

 それ以前の医師と患者の関係においては、ある程度 医師の主観的な感性および患者との情緒的なかかわりがあったと。(平たく言えば「俺についてこい!助けてやるぞ」そして患者さんは身を任せてついていく...といった感じでしょうか。)

 1991年以降に統計学が医療現場に応用されるようになり、医師はそれに基づいた「標準治療」を患者に提供する立場となった。

 そのことにより、標準治療におけるメリットとデメリット(リスク)を提示し、患者の意思で選択できるように変化してきた。

 さらにそれによってまた患者側にも変化が起こり、何故自分がこの病気になったのか、その意味などを考え始めるようになってきたそうです。

 そのような変化の流れの中にあると解説して頂きました。

 

 加えてエビデンス(EBMという言葉を多くの方々は耳にしたことがあると思います)を取る際の統計学的基準について。そこに潜む問題点を、大変わかりやすく講義してくださいました。

 

 東洋医学領域においても、昨今、エビデンスという言葉が盛んに使われるようになってきています。

 

 西洋医学のような診断機器を駆使せず、脉診や腹診・背部兪穴診など、診断根拠や効果判定において大いに術者の主観が入る東洋医学において、果たしてエビデンスを取ることが出来るのでしょうか?

 【西洋医学と東洋医学の疾病観の違い】

 たとえば、西洋医学では「膀胱炎」という病名が付けられる病態に対して、薬剤などを用いて治療を行い、その結果を統計学的に評価します。

 

 ところが、東洋医学においてはそもそも「膀胱炎」という病名が存在しません。

 仮に「膀胱炎」の様相を呈する病に対して治療を行うとすれば、八綱・臓腑辨証など、東洋医学独自の物差しで病理を解いて治療を行いますので、まずもって八綱・臓腑辨証を標準化する必要があると。

 

 加えて、術者の主観的感覚による診察行為(四診)をどのように基準づけるかという問題点も存在します。

 

 さらに東洋医学の場合、「同病異治、異病同治」という言葉があるように、同じ症状を呈する病でも全く違う治法を用いることが多々あるため、標準化する上で多くの困難が伴う、とのことでした。

 

 稻垣先生は、教員養成科時代に統計学をかなり専門的に学ばれたようです。

 説明も非常にこなれて分かりやすく、ど素人の筆者でも理解し受け入れることが出来ました。

 

 その他、現代医学が「QOL(生活の質)」を評価基準として取り入れている現状について述べ、QOLが向上したならば医学的評価が得られると。

 鍼灸治療であれば、施術を受ける前と後のQOLについてアンケート等で調査を行い、有意に差が出た場合、鍼灸は医学的に効果があると認められるとのことです。

 

 なかなか気の遠くなるような話でしたが。

 先ずは皆さん、東洋医学で病を治療できる鍼灸師になることが先決ということで、ともに向上して参りましょう!

 

 ということで、グループに分かれての臨床治療実技です!

 

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 お互いに問診を取り合い、現在どのような体の状態かを予測します。

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 問診要点はすでに解説していますが、実際の情報の引き出し方などを講師からアドバイス。

 

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 腹部への手の持って行き方、触れ方など、かなり上達しておられます!

 

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 入会して間もない先生も、体当たりで取り組んでおられました!

 

 筆者金澤は全体を見渡しながら流れを見ておりましたが、学生さん達も臨床に入る準備が整ったと感じられました。

 

 そして、昨年12月の投稿で告知いたしました、稻垣先生の以下の提案。

 ↓↓

 東洋医学的な鍼灸のゴールとは。

 我々は、どれだけの認識を内包したら、東洋医学的な鍼灸を極めたと言えるのか。

 そこを明らかにする。

 立春を迎える、次回2月4日(日)の基礎講座で、参加者の皆様と一緒にディスカッション形式で導き出そうということになりました。

 合言葉は、「みんなで鍼の達人になろう!!」です。

 

 ご参加くださいましたみなさま、お疲れさまでした!

 

 そして、毎回 設備の整った実技室を提供してくださいます大阪医療技術学園専門学校の、関係者の方々に厚く御礼申し上げます。

 

  次回『鍼道 一の会』東洋基礎医学講座は2018年2月4日、臨床医学講座は2月18日です。

 

 「鍼道 一の会」東洋医学講座は、2018年4月より新年度講座を開始いたします。(募集サイトは現在準備中です)

 東洋医学的な理論の上に立って、鍼治療を行いたいとお考えの方は、是非ご参加ください。

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30.太陽病(上)29条 疑桂枝湯証と壊病(2)

 さて、元々の病態に、桂枝湯を与えてさらに発汗させると、下肢が冷え上がり(厥)、清陽も上らないので口中に唾が出なくなり(咽中乾)、手足を動かしもだえ苦しむ煩躁が現れ、吐き気や嘔吐するようになると書かれています。

 煩燥も、虚実は別にして熱ですよね。

 以前に、桂枝湯をペットボトルロケットに例えたことがありましたが、今回まさに桂枝湯が瀉法となり、陽気が虚してしまったことが分かると思います。

 このようになってしまった状態には、甘草乾姜湯を用いて陽気を回復させなさいとあります。

 甘草と乾姜、わずか二味の方剤なので即効性があります。

 しかし附子が配剤されていないので、主に中焦の陽気回復を目標にしていることが分かります。

 病位は、太陰病と理解して良いと思います。

 では附子が必要なほど陽気が虚してしまった状態と、どこで鑑別すればよいのでしょうか。

 これは後の四逆湯のところで解説します。

 この甘草乾姜湯で陽気が回復すれば、万事丸く治まる訳です。

 ところが脚が温まって陽気が回復したにもかかわらず、脚の引きつりが治まらない場合は、芍薬甘草湯を与えなさいと書かれています。

 ですから、傷陰がなければ、これで治まるのですが治まらない。

 そこで今度は、芍薬で陰気を回復させると脚の引きつりが治まるということですね。

 ここで重要なのは重篤になった場合は、まず先に陽気の回復を優先させなさいということだと思います。

【二九条】

傷寒脉浮、自汗出、小便數、心煩、微惡寒、脚攣急、反與桂枝、欲攻其表、此誤也。得之便厥、咽中乾、煩躁吐逆者、作甘草乾薑湯與之、以復其陽。若厥愈足温者、更作芍藥甘草湯與之、其脚即伸。若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯。若重發汗、復加燒鍼者、四逆湯主之。方十六。

傷寒の脉浮、自ずと汗出で、小便數(さく)、心煩、微惡寒し、脚(きゃく)攣急(れんきゅう)するに、反って桂枝を與(あた)え、其の表を攻めんと欲するは、此れ誤りなり。之を得れば便(すなわ)ち厥(けつ)し、咽中乾き、煩躁吐逆する者は、甘草乾薑湯(かんぞうかんきょうとう)を作り之に與え、以て其の陽を復す。若し厥愈え足温かなる者は、更に芍藥甘草湯を作り之を與うれば、其の脚即ち伸びる。若し胃氣和せず讝語(せんご)する者は、少しく調胃承氣湯(ちょうきじょういとう)を與う。若し重ねて汗を發し、復た燒鍼(しょうしん)を加うる者は、四逆湯之を主る。方十六。

 

〔甘草乾薑湯方〕

甘草(四兩炙)乾薑(二兩)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

甘草(四兩、炙る)乾薑(二兩)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔芍藥甘草湯方〕

白芍藥甘草(各四兩炙)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

白芍藥甘草(各四兩、炙る)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔調胃承氣湯方〕

大黄(四兩去皮清酒洗)甘草(二兩炙)芒消(半升)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒消、更上火微煮令沸、少少温服之。

大黄(四兩、皮を去り清酒で洗う)甘草(二兩、炙る)芒消(ぼうしょう)(半升)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取る、滓を去り、芒消を内(い)れ、更に火に上(の)せて微(すこ)しく煮て沸(わか)せしめ、少少之を温服す。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙)乾薑(一兩半)附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。強人可大附子一枚、乾薑三兩。

甘草(二兩、炙る)乾薑(一兩半)附子(一枚、生を用い皮を去り八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かちて温め再服す。強人は大附子一枚、乾薑三兩とすべし。

29.太陽病(上)29条 擬似桂枝湯証と壊病(1)脚攣急

 この条文は、桂枝湯証によく似た証を誤治し、壊病となってしまった証とその対処法について書かれています。

 文章が長い上に、対処法の四方剤が挙げられていますので、何部かに分けて解説していきます。

【二九条】

傷寒脉浮、自汗出、小便數、心煩、微惡寒、脚攣急、反與桂枝、欲攻其表、此誤也。

得之便厥、咽中乾、煩躁吐逆者、作甘草乾薑湯與之、以復其陽。

若厥愈足温者、更作芍藥甘草湯與之、其脚即伸。

若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯。

若重發汗、復加燒鍼者、四逆湯主之。方十六。

傷寒の脉浮、自ずと汗出で、小便數(さく)、心煩、微惡寒し、脚(きゃく)攣急(れんきゅう)するに、反って桂枝を與(あた)え、其の表を攻めんと欲するは、此れ誤りなり。

之を得れば便(すなわ)ち厥(けつ)し、咽中乾き、煩躁吐逆する者は、甘草乾薑湯(かんぞうかんきょうとう)を作り之に與え、以て其の陽を復す。

若し厥愈え足温かなる者は、更に芍藥甘草湯を作り之を與うれば、其の脚即ち伸びる。若し胃氣和せず讝語(せんご)する者は、少しく調胃承氣湯(ちょうきじょういとう)を與う。

若し重ねて汗を發し、復た燒鍼(しょうしん)を加うる者は、四逆湯之を主る。方十六。

【意訳】

 傷寒の病に罹り、脈が浮いている。

 自汗が有り、小便の回数が多くて心煩し、少し悪寒があり、脚が厳しく引きつっている。

 このような状態に、桂枝湯を投与して表を攻めるのは誤りである。

 もし桂枝湯を投与すれば、脚は冷え、咽が乾き、煩躁して厳しく吐き気がするようになった者には、乾姜甘草湯を与え、陽気を回復させなさい。

 そして冷えが治まり足が温まって来たら、さらに芍薬甘草湯を作って与えれば、その引きつった脚は伸びるであろう。

 もし胃気が和せず、譫語するようであれば少し調胃承気湯を与える。

 もし誤って桂枝湯を与えて表を攻めた後に、さらに発汗させたり、また焼き鍼を加えて発汗さたのなら、四逆湯の証になる。

 

【解説】

 傷寒の病で、脈浮、自汗、微悪寒の症候が現れると、桂枝湯証と判断することが出来ます。

 ところが頻回の小便、心煩、脚攣急などの症候も同時に現れています。

 疑似桂枝湯証になった素体について考察してみます。

 脚攣急と四肢微急の病理の違いを確認するため、テキストP47 20条をご覧ください。

【二〇条】

太陽病、發汗、遂漏不止、其人惡風、小便難、四肢微急、難以屈伸者、桂枝加附子湯主之。方七。

太陽病、發汗し、遂に漏れ止まず、其の人惡風し、小便難、四肢微急(びきゅう)し、屈伸以て難き者は、桂枝加附子湯(けいしかぶしとう)之を主る。

 20条では、小便難であまり出ない。しかし四肢微急しています。

 桂枝加附子湯は、太陽と少陰の併病もしくは合病でした。

 本条29条には「脚攣急」とありますので、さらに少陰病位に近い太陽と少陰の合病であると推測できます。

 ところがです、陽虚傾向にさらに桂枝湯で発汗させ、陽虚となった証に乾姜甘草湯です。

 方剤の中に附子が配されていませんよね。

 では元々の病態は、少陰病レベルの陽虚ではなかったということになります。

 それでは、元々の病態をどのように考えるかです。

 その手がかりとしてもう一度、「脚攣急」の病理を考えてみます。

 自汗で陽気がもれているにもかかわらず、心煩が現れています。

 どこかに存在している熱が胸に迫っているのですね。

 小便は数なので下焦とは考えにくいです。

 

 まずは乾姜と甘草のみで、単純に中焦の陽気の回復を計っています。

 そうすると、自汗で陽気が洩れつつも、気虚気滞で内熱も盛んになり、加えて小便数ですから陰気も出て行ってる。

 ここまでくると、陰陽が次第に小さくなって悪化の一途をたどっているのではないかと推測できます。

 ちなみに虚証の水熱互結証、28条の桂枝去桂加茯苓白朮湯は、小便不利でした。

 だからあまり傷陰していないので攣急は起きない、むしろ重だるいはずです。

 内熱と小便数で、陽気だけでなく陰気が損なわれつつあるから「脚微急」ではなく、さらに厳しい「脚攣急」となっているのだと考えられませんでしょうか。

〔甘草乾薑湯方〕

甘草(四兩炙)乾薑(二兩)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

甘草(四兩、炙る)乾薑(二兩)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔芍藥甘草湯方〕

白芍藥甘草(各四兩炙)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

白芍藥甘草(各四兩、炙る)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔調胃承氣湯方〕

大黄(四兩去皮清酒洗)甘草(二兩炙)芒消(半升)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒消、更上火微煮令沸、少少温服之。

大黄(四兩、皮を去り清酒で洗う)甘草(二兩、炙る)芒消(ぼうしょう)(半升)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取る、滓を去り、芒消を内(い)れ、更に火に上(の)せて微(すこ)しく煮て沸(わか)せしめ、少少之を温服す。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙)乾薑(一兩半)附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。強人可大附子一枚、乾薑三兩。

甘草(二兩、炙る)乾薑(一兩半)附子(一枚、生を用い皮を去り八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かちて温め再服す。強人は大附子一枚、乾薑三兩とすべし。

 

 

28.太陽病(上)28条 桂枝去桂加茯苓白朮湯

【二八条】

服桂枝湯、或下之、仍頭項強痛、翕翕發熱、無汗、心下滿微痛、小便不利者、桂枝去桂加茯苓白朮湯主之。方十五。

桂枝湯を服し、或は之を下し、仍(な)お頭項強痛し、翕翕(きゅきゅう)として發熱し、汗無く、心下滿微痛(まんびつう)し、小便利せざる者は、桂枝去桂加茯苓白朮湯(けいしきょけいかぶくりょうびゃくじゅつとう)之を主る。方十五。

 まず条文を意訳してみます。

 桂枝湯を服用して汗を取り、或いはその後、下すべき証に随って下法を用いた。

 しかしながらなお、頭や項が強ばり痛み、発熱して汗が無く、心下が満となり少しく痛みがあり、小便が不利であるのは、桂枝去桂加茯苓白朮湯の証である。

 

 この病態を精しく把握するには、方剤構成を吟味する必要があります。

 太陽病位と同じ頭項強痛、発熱がありますが、方剤の中身を見ると、桂枝湯から桂枝を去っているので、表証は解けていることが分かります。

 そうするとすでに悪寒などの表証も存在していないことが分かります。

 ではなぜ頭項強痛、発熱の症候があるのでしょうか。

 注目は小便不利です。

 小便があまり出ていないことから、心下の満は津液の停滞によって起きていることが分かります。

 このようなケースの場合、臨床的には心下満を確認したら、問診で小便の様子を聞き出すことが大切です。

 小便の様子を問うても明確に分からないのであれば、大便の状態を問えば良いと、次々と思考を繋げていきます。

 つまり、小便があまり出ていないのであれば、大便は軟便とはならないまでも、ゆるいはずだと思考を進めます。

 他にも舌診では、胖大かも知れないし歯痕舌かもしれない。

 舌苔は、白~やや黄色で粘性を帯びているはずだ・・・などなどです。

 

 また心下と頭項、肩背部との相関は、これまで繰り返し述べて来たとおりです。

 夢分流腹診術では、心下、両脾募と頭、首、肩は相関しています。

 この場合、心下には水だけでなく熱も存在し、軽度もしくは虚証の水熱互結証=結胸証と認識しても良いと思います。

 そうならば、条文には書かれていませんが、軽度ではあるかもしれませんが胸満や心煩もあるかもしれません。

 とにかく、思考を繋げてどんどん推測、イメージを膨らませる習慣が大切です。

 実証で重度の結胸証は、131条大陥胸丸や134条の大陥胸湯が相当します。

 131条と134条は、比較的分かりやすいと思いますので、あらかじめ一読をお勧めいたします。

 大陥胸丸条文中の「柔痙の如し」とあるのが比較的重い頭項強痛に相当します。

 

 この桂枝去桂加茯苓白朮湯の熱は、気虚発熱と認識することもできると思います。

 (気虚→水湿の邪産生→陽気を阻む→気滞→発熱と水湿の邪の結び)

 心下の水湿の邪を、麻黄・生姜などを使って肌表から発汗させるという手もありますが、しかしこの場合は気虚傾向なので、瀉法である発汗法は用いていません。

 ですから、桂枝湯中から発散軽浮の桂枝を去ることで湯薬を中焦に集中させ、茯苓・白朮で脾気の水湿転輸の気を補い、水湿の邪を小便として下から排泄させるのですね。

 よ~く考えられていると感じます。

 陽気を阻んでいた津液が排泄されると、陽気が行り始めるので発熱も治まり、心下の満微痛も治まり、結果として頭項強痛も治まってくるという治癒機序です。

 発熱に対する清熱は、必要ないですね。

 この病理は、肩凝り、寝違い、頭痛などにも応用ができますので、覚えておかれると良いと思います。

 鍼だと、心下満微痛で津液=陰気ですので、足太陰・足陽明などの経穴を使って、下に引いて補法を用いるというのはどうでしょう。

 必要ならば生体の虚実を考慮しながら、陰陵泉などに瀉法を加味するのも良いと思います。

 補を先にするか、瀉を先にするかは、その時々の生体の虚実によります。

 基本的に、陽邪は上に、陰邪は下に導くようにします。

 しかし、越婢湯で学んだように、陰邪である水湿が上焦でしかも肌表にあり、正気が充実しておれば、瀉法である発汗法を用います。

 このように基本は基本として、その時々の状態に適うように自由自在に補写を用いることが出来るようになるのが臨床への道です。

 ここでは一穴だけ経穴名を挙げていますが、絶対的に捉えずに自分なりに条理を立て、それに従って取穴・補瀉して下さればと思います。

 

桂枝去桂加茯苓白朮湯方〕

芍藥(三兩)甘草(二兩炙)生薑(切)白朮茯苓(各三兩)大棗(十二枚擘)

右六味、以水八升、煮取三升、去滓、温服一升、小便利則愈。本云桂枝湯、今去桂枝、加茯苓、白朮。

芍藥(三兩)甘草(二兩、炙る)生薑(切る)白朮茯苓(各三兩)大棗(十二枚、擘く)

右六味、水八升を以て、煮て三升を取る、滓を去り、一升を温服す、小便利すれば則ち愈ゆ。本(もと)云う桂枝湯より、今、桂枝を去り、茯苓、白朮を加うと。

 

 

27.太陽病(上)桂枝二越婢一湯(3)再考

 前回の投稿で、越婢湯は、内熱傾向の人が風湿の外邪に侵され、上半身を中心に浮腫が現れた病態に用いられると考えられることを述べて参りました。

 そこで元に戻って、27条の桂枝二越婢一湯を再考することにします。

 25条の桂枝二麻黄一湯、26条の白虎加人参湯は、大いに汗が出た後の証でした。

 27条も、大いに発汗が見られた後の証として考えます。

 もう一度条文を掲げます

【二七条】

太陽病、發熱惡寒、熱多寒少、脉微弱者、此無陽也。不可發汗、宜桂枝二越婢一湯。方十四。

太陽病、發熱惡寒し、熱多く寒少なく、脉微弱なる者は、此れ陽無きなり。發汗すべからず、桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいっとう)に宜し。方十四。

 

 脉微弱なので、これ以上発汗させてはいけないとされています。

 ところがこの場合、風寒の邪が解け切っていない上に、湿邪にも侵されていることが推測されます。

 ひょっとすれば、ごく軽い浮腫も見られるかもしれませんね。

 もしまた実際、脉が微弱で陽気が無いとするならば、湿邪が陽気を阻んでいるとも理解することも出来ます。

 条文には、脈が微弱、陽気が虚しているのでこれ以上発汗させてはいけないとされていますが、方剤構成をみると桂枝・麻黄が配されていますので、やはり少し発汗させると考えられます。

 さらに石膏が配されているので、ある程度の内熱も存在しているはずですので、脈微弱とするのには、少々疑問が残るところでもあります。

 筆者は、内湿が盛んで下肢に冷えが存在し、脉弱であっても、除湿瀉法を加えることで陽気が行りだし、脈も反って有力となって下肢の冷えが回復した例があります。

 このあたりの事は、実際の臨床で確認する必要があると思います。

 諸氏のご意見を賜りたいところであります。  

〔桂枝二越婢一湯〕

桂枝(去皮)芍藥麻黄甘草(各十八銖炙)大棗(四枚擘)生薑(一兩二銖切)石膏(二十四銖碎綿裹)

右七味、以水五升、煮麻黄一二沸、去上沫、内諸藥、煮取二升、去滓、温服一升。

本云、當裁為越婢湯、桂枝湯、合之飲一升。今合為一方、桂枝湯二分、越婢湯一分。

(臣億等謹按桂枝湯方、桂枝芍藥生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。越婢湯方、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五枚。今以算法約之、桂枝湯取四分之一、即得桂枝芍藥生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚。越婢湯取八分之一、即得麻黄十八銖、生薑九銖、甘草六銖、石膏二十四銖、大棗一枚八分之七、棄之、二湯所取相合、即共得桂枝芍藥甘草麻黄各十八銖、生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四枚、合方。舊云桂枝三、今取四分之一、即當云桂枝二也。越婢湯方見仲景雜方中、外臺秘要一云起脾湯。)

桂枝(皮を去る)芍藥麻黄甘草(各十八銖、炙る)大棗(四枚、擘く)生薑(一兩二銖、切る)石膏(二十四銖、碎き綿もて裹(つつ)む)

右七味、水五升を以て、麻黄を煮ること一、二沸、上沫を去り、諸藥を内(い)れ、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。

本(もと)云う、當(まさ)に裁(た)ちて越婢湯(えっぴとう)、桂枝湯と為るべくして、之を合して一升を飲む。今、合して一方と為す、桂枝湯二分、越婢湯一分とす。

(臣億等謹んで桂枝湯方を按ずるに、桂枝、芍藥、生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。越婢湯方、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五枚。今算法を以て之を約するに、桂枝湯四分の一を取り、即ち桂枝、芍藥、生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚を得。越婢湯八分の一を取り、即ち麻黄十八銖、生薑九銖、甘草六銖、石膏二十四銖、大棗一枚八分の七を得、之を棄て、二湯取る所は相合して、即ち共に桂枝、芍藥、甘草、麻黄各十八銖、生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四枚を得、合方とす。舊(ふる)くは桂枝三と云い、今は四分の一を取る、即ち當に桂枝二と云うべきなり。越婢湯方は仲景雜方中に見え、外臺秘要は一つに起脾湯と云う。)

 

 

26.太陽病(上)桂枝二越婢一湯(2)越婢湯 風水

 桂枝二越婢一湯を理解するために、今回は越婢湯証をみてみます。

<金匱要略・水気病脉証并治 23条>

 風水、悪風、一身悉腫、脉浮、不渇、続自汗出、無大熱、越婢湯主之。

 風水、悪風し、一身ことごとく腫れ、渇せず、続いて自ずと汗出で、大熱無きは、越婢湯之を主る。

越婢湯方

麻黃六兩,石膏半斤,生姜三兩,大棗十五枚,甘草二兩

右五味,以水六升,先煮麻黃,去上沫,內諸藥,煮取三升,分溫三服。惡風者,加附子一枚,炮;風水,加朮四兩

 まず、水気病について。

 いわゆる津液代謝異常によって起きる浮腫のことです。

 津液の代謝異常ですから、肺の宣発粛降脾の水湿運化転輸腎の開闔調節(腎陽)がその病理として脳裏に浮かびます。

 

 次いで、風水について。

 風邪によって主に顔面や上肢に、突発的に発症する浮腫のことです。

 

 では条文を意訳してみます。

 風水は、悪風がして全身がことごとくむくむ。

 脈は浮、口渇はないが、突発的に生じたむくみに続いて発汗がみられ、体表に熱が無い。これは越婢湯の証である。

 

 そして方剤構成を見ますと、大量の麻黄が使われていることが分かります。

 これにより、外邪である風寒湿の三邪気に侵されたことが分かります。

 この三邪気のバリエーションを考察してみますと、桂枝が配剤されていないので、風邪>湿邪>寒邪であることが分かります。

 外邪に侵され、肺の宣発粛降が失調し、肌肉に津液が停滞してむくみを生じたのですね。

 しかも風邪を中心とした外邪であるため、突発的でしかも上焦部位を襲っているのですから、特に上半身に目立ってむくみが現れていることが分かります。

 次いで、外邪によって一旦肌表が閉じたのですが、石膏が配剤されていることから、内熱によって津液が蒸されて発汗していることが分かります。

 麻黄と生姜は共に辛温で肌表の水を発し、辛寒の石膏で胃熱を冷まして散じ、大棗、甘草の甘温で中焦の拘攣を緩め、石膏と協調して脾気を散じやすくしていると考えます。

 おそらくこの場合、風水を患った人は、元々胃熱のために口渇があり、冷飲水が過ぎていたところにたまたま外邪が侵襲したのだと推測されます。

 ですので、序文中にあります「不渇」は、あまり鑑別の要点としない方が良いのではないかと思います。

 つまり渇がある場合もあるし、無い場合もあるということです。

 しかし、石膏が配剤されているので、どちらかというとやはり渇に傾いているのでしょう。

 また脈は浮であっても、有力と推測することが出来ると思います。

 まさにこれからの冬季に、暖かい室内で冷たいビールなどを過飲し、たまたま寒雨などに遭遇して外感すると発症するという場面が想定されますね。

 越婢湯をまとめます。

 1.元々内熱傾向の人が多飲し

 2.たまたま風湿の外邪に侵され、

 3.肌表に津液がうっ滞して浮腫を起こした。

 4.辛温の麻黄・生姜で肌表の津液を動かし、

 5.同時に石膏で内熱も清する方剤である。

 ということですね。

 では次回もう一度、桂枝二越婢一湯に戻って条文との整合性を検討してみrることに致します。

 

25.太陽病(上)27条 桂枝二越婢一湯(1)熱多く寒少なし

【二七条】

太陽病、發熱惡寒、熱多寒少、脉微弱者、此無陽也。不可發汗、宜桂枝二越婢一湯

太陽病、發熱惡寒し、熱多く寒少なく、脉微弱なる者は、此れ陽無きなり。發汗すべからず、

桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいっとう)に宜し。

 23条の桂麻各半湯、25条の桂枝二麻黄一湯、そしてこの27条の桂枝二越婢一湯と連続して読むのが良いと思います。

 これらに共通しているのは、熱多く寒少なしの瘧のような症状で、共に脉洪大と推測することが出来ますね。

 桂麻各半湯と桂枝二麻黄一湯とは、虚の程度の違いで共に少し発汗させるための方剤でした。

 ところが27条では、脉微弱で陽気が不足しているので発汗させてはいけないとあります。

 そこで桂枝二越婢一湯方を見ると、桂枝湯に麻黄、石膏を加えています。

 そうなると、桂枝二越婢一湯はやはり発汗剤ではないかと思われます。

 しかも脉微弱で陽気がないとしながら附子を用いていないので、足腰の冷えはそんなに厳しくないことも推測されます。

 ここまで来ると、陽気が無いと言いつつ発汗させるのですから、条文そのものに誤りがあるのではないかという疑問も生じますね。

 そこで次回は、越婢湯の証をみて、この疑問を解いてみたいと思います。

 越婢湯は、テキストの最後、処方索引をみると、P325 <金匱要略・水気病> 23条に出ておりますので、次回は少し遠回りして考えてみたいと思います。

 

〔桂枝二越婢一湯〕

桂枝(去皮)芍藥麻黄甘草(各十八銖炙)大棗(四枚擘)生薑(一兩二銖切)石膏(二十四銖碎綿裹)

右七味、以水五升、煮麻黄一二沸、去上沫、内諸藥、煮取二升、去滓、温服一升。

本云、當裁為越婢湯、桂枝湯、合之飲一升。今合為一方、桂枝湯二分、越婢湯一分。

(臣億等謹按桂枝湯方、桂枝芍藥生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。越婢湯方、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五枚。今以算法約之、桂枝湯取四分之一、即得桂枝芍藥生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚。越婢湯取八分之一、即得麻黄十八銖、生薑九銖、甘草六銖、石膏二十四銖、大棗一枚八分之七、棄之、二湯所取相合、即共得桂枝芍藥甘草麻黄各十八銖、生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四枚、合方。舊云桂枝三、今取四分之一、即當云桂枝二也。越婢湯方見仲景雜方中、外臺秘要一云起脾湯。)

桂枝(皮を去る)芍藥麻黄甘草(各十八銖、炙る)大棗(四枚、擘く)生薑(一兩二銖、切る)石膏(二十四銖、碎き綿もて裹(つつ)む)

右七味、水五升を以て、麻黄を煮ること一、二沸、上沫を去り、諸藥を内(い)れ、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。

本(もと)云う、當(まさ)に裁(た)ちて越婢湯(えっぴとう)、桂枝湯と為るべくして、之を合して一升を飲む。今、合して一方と為す、桂枝湯二分、越婢湯一分とす。

(臣億等謹んで桂枝湯方を按ずるに、桂枝、芍藥、生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。越婢湯方、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五枚。今算法を以て之を約するに、桂枝湯四分の一を取り、即ち桂枝、芍藥、生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚を得。越婢湯八分の一を取り、即ち麻黄十八銖、生薑九銖、甘草六銖、石膏二十四銖、大棗一枚八分の七を得、之を棄て、二湯取る所は相合して、即ち共に桂枝、芍藥、甘草、麻黄各十八銖、生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四枚を得、合方とす。舊(ふる)くは桂枝三と云い、今は四分の一を取る、即ち當に桂枝二と云うべきなり。越婢湯方は仲景雜方中に見え、外臺秘要は一つに起脾湯と云う。)

24.太陽病(上)26条 白虎加人参湯方意

〔白虎加人參湯方〕

知母(六兩)石膏(一斤碎綿裹)甘草(炙二兩)粳米(六合)人參(三兩)

右五味、以水一斗、煮米熟、湯成去滓、温服一升、日三服。

知母(ちも)(六兩)石膏(一斤、碎(くだ)き綿もて裹(つつ)む)甘草(二兩を炙る)粳米(こうべい)(六合)人參(三兩)

右五味、水一斗を以て、煮て米を熟し、湯成りて滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 薬味を整理して総合的に見てみます。

 知母、石膏は寒薬で、下焦と中焦の清熱。

 人参で益気生津。

 粳米で穀気を養い、生津・陰気の源とする。

 ここでもう一度、白虎加人参湯証を見直してみます。

【二六条】

服桂枝湯、大汗出後、大煩渴不解、脉洪大者、白虎加人參湯主之。方十三。

桂枝湯を服し、大いに汗出でたる後、大いに煩渴して解せず、脉洪大なる者は、白虎加人參湯(びゃっこかにんじんとう)之を主る。

 桂枝湯を服用して、かなりの高熱があったのでしょう。

 大いに汗をかいて太陽病は解けたのですが、津液の不足と余熱が一緒になって煩渇を起こしてしまいました。

 実際、陽明経証の肌に触れると、なんとも熱く感じます。

 しかし舌苔は白のままです。(腑実があると、舌苔は黄となります)

 表は解けているので、桂枝などは必要がありません。

 ですので裏の余熱を清し、穀気を入れて元気を養い、津液を増やせば、陰陽が平衡して癒えるという経過をたどる訳です。

 前回も触れましたが、条文に「心下痞鞕」と記されていませんので、人参を抜いた白虎湯でも良いかもしれません。

 では、鍼ではどのように考えて行えばよいでしょう。

 清熱の目標は中焦と下焦です。

 その際、足陽明にこだわらず、足の甲~膝に反応の出ているところに取っても良いと思います。

 上に取るのでしたら、子午の関係で手厥陰も良いと思います。

 熱源が中焦と下焦のどちらに傾いているかで判断すればよいと考えます。

 治療の効果判定は、まず脈洪大が落ち着いてくること。

 そして身体に触れて次第に熱感が取れ、口渇の自覚症状が治まってくる点ですね。

 益気生津は、熱さえ取れて飲食が可能であれば、自ずと回復すると考えて良いと思います。

活動報告ー1月基礎講座

 歳が明け、新たな気持ちで今年最初の基礎講座を行いました。

 学生の皆さんは試験中ということもあり、今回は欠席者が目立ちましたが、新しい内容が盛りだくさんとなりました。

 

 まずは斬り込み隊長を買って出てくださる、副代表の永松周二先生による易学講義から。

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 今回は十干十二支と支合・干合について非常に示唆的な内容でした。

 十干と十二支を用いて、空間と時間を認識し、併せて時空的に人体を認識しようという試みです。

 また、かねてより筆者金澤が疑問として持ち続けていました、難経六十四難を理解する手がかりも頂きました。

 「陰井木.陽井金.・・・」という下りです。

 なぜ陰経の井穴が木で陽経の井穴が金なのか?という疑問です。

 これは易占では干合として明確になっていることだと教示して頂きました。

 まだまだ学ぶことがたくさん感じられるのは、幸せなことです。

 

 続きましては同じ易学の話題として、今年度入会されました高橋佑輔先生に特別講義をしていただきました。

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 ご自身が興味を持って勉強されてきた易学と心理学を併せて、温めて来られたことを開示してくださいました。

 

 導入部分では先天八卦と後天八卦、「河図・洛書」の成り立ちからその内容に至るまでを。

 そしてメインとなります「易の中で生きた心理学者」

 心理学の三大巨匠とされるフロイト、ユング、アドラーについて、名前は聞いたことがあっても、この三名の関係性や考え方の焦点などについては、知らない方がほとんどだと思います。そこを非常にわかりやすく解説してくださいました。

 

 そしてその中のユング氏と「易経」とのかかわりについて、非常に興味深いお話を聞かせていただくことが出来ました。

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 詳細は割愛させていただきますが、心と体は「ひとつ」であり、身体症状と七情の関係性を重視する「一の会」にとって、弾みがつくような講義をしていただき、高橋先生ありがとうございました!

 

 そして午後からは「奇經八脉について」

 江見木綿子先生(大阪医専 東洋医学部・鍼灸学科教員)による講義。

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 今回は、陰陽蹻脉および帯脉についてさらりと解説して頂きました。

 漢文の一字一字を丁寧に読み下すスタイルは、初学の方々には大変好評です。

 途中、金澤も講義に参加させて頂き、みなさまと一緒に考察を進めました。

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 「一の会」では、すでに常識とされていることに対して、なぜそうなんだろうかと考え、明らかにしていくことを大切にしています。

 奇經八脉でしたら、八宗穴。

 なぜこのペア穴なのか?その意味は?・・・と深く追及することで観えてくる「気」の構造があります。

 同じ経穴を扱うにも、術者にその認識があるのと無いのとでは、はっきりと結果の違いに現れてくることをお伝えしました。

 来月はいよいよ奇經八脉を時空的概念で捉えれば、どうなるのか?総まとめの講義となる予定です!

 

 そして最後は「陰陽と五行で病を考える」

 稻垣座長による講義です。

 資料作成に相当な時間をかけたのだろうと感じていたのですが、当日は資料をほとんど使わずディスカッション形式で講義を進められました。

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 (この写真、ナイスショットでしょう?)

 講義そのものを楽しんでいる感じがお伝えできればと思います。

 

 今回の山場は、鍼を施す際に何を認識するのか

 さらに、鍼が作用するのは、術者の意図(意念)よりもむしろ鍼を受ける側の身体の状態・状況こそが大きいのではないかと言った、鍼治療の根幹部分に関わる話題でした。

 

 金澤自身は意念を多用しますが、稻垣先生はむしろその意念が鍼を受ける側にとって、回復を妨げることになる場合もある、との持論を展開。

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 そしてまた金澤・永松先生の意見も交え、講義は一時混沌と?・・・なりかけましたが、最後はやはり稻垣座長がきっちりと締めくくってくれました!

 

 参加者の方からは、三者三様の在り方、各先生方の価値観に触れることが出来て、大変よかったとの声を頂いております。

 

 当「鍼道 一の会」においては、すべては太極陰陽の道に法ってさえいれば良いのです。その上で、皆様それぞれの個性が十分に発揮されることが、当会理念の大きな柱のひとつです。

 

 次回、『鍼道 一の会』臨床医学講座は1月28日(日)。大阪・南森町の大阪医療技術学園専門学校実技室をお借りして、開催させていただきます。

 
 『鍼道 一の会』は、随時入会を受け付けております。

 興味が湧いた、面白そう、ピン!と来た方、どうぞお問い合わせください。

 お問い合わせは

 『鍼道 一の会』 事務局 大上(おおがみ)まで

  詳細はこちらへ↓

 

人参について(1)

 薬用人参について調べてみると、なかなかこれが厄介だと気が付いたのはここ最近のことです。

 一口に人参といっても、竹節人参、御種人参、田七人参と、筆者が知りうるだけでも三種類あります。

 しかも修治(加工)も様々あり、どのように区別して用いていたのか迷うところであります。

 しかし、もっとも興味があるのは「傷寒論」に記載されている人参がどの種類のもので、どのような薬能を想定して方剤を構成しているのかという点です。

 しかも古来、キキョウ科のヒカゲノツルニンジンである党参は、古くは人参と区別されていない時代もあったようです。

 このあたりを追及すると、ややこしくなってしまいますので、これらの点は、ひとまず置いておいて、先ずは中医薬学で扱っているところから見て行くとします。

 

 <中薬学>神戸中医研究会編著では、人参は補益・補気薬に分類されていまして、オタネニンジンの根として紹介されています。

 気味は甘微苦、微温です。

 効能を列記してみます。

 補気固脱

 補脾気

 益肺

 生津止渇

 安神益智

 その他、血虚に対して補血薬と用いて益気生血、陽虚に対して補陽薬と用いて益気壮陽すると記されています。

 いまいちピンときません。

 総じて、方剤中の人参は、主薬というより佐薬的な役割なのでしょうか。

 そんな中で、独参湯という人参一味を濃く煎じた方剤があります。

 <中薬学>によりますと、

 「大病・久病・大出血・激しい吐瀉などで元気が虚衰して生じるショック状態で脈が微を呈する時に、単味を大量に濃煎して服用する」とあります。

 いわば失神・虚脱状態の気つけ薬といった感じでしょうか。

 単味ですから、即効的、シャープにその効能が現れる訳ですから、人参によって人体の気がどのように動くのだろうと、考えてみたいと思います。

つづきます・・・