ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

7.太陽病(上)12条 桂枝湯

 ここからは、太陽中風証=桂枝湯証から始まり、誤治の対処や虚実のバリエーションとその対処法などが後に続く条文で順次述べられています。

 ではみなさま、ご一緒に参りましょう。

 

【一二条】

太陽中風、陽浮而陰弱、陽浮者、熱自發。陰弱者、汗自出。

嗇嗇惡寒、淅淅惡風、翕翕發熱、鼻鳴乾嘔者、桂枝湯主之。方一。

太陽の中風、陽浮にして陰弱、陽浮なる者は、熱自ずと發す。陰弱なる者は、汗自ずと出ず。

嗇嗇(しょくしょく)として惡寒し、淅淅(せきせき)として惡風し、翕翕(きゅうきゅう)として發熱し、鼻鳴(びめい)乾嘔(かんおう)する者は、桂枝湯之(これ)を主る。方一。

 【解説】

 冒頭に「太陽中風」とありますので、1条と2条を合わせた証となります。

 1条は太陽病の綱領で、脈が浮いて、頭や項が強ばって悪寒がするという内容でした。

 腹証奇覧翼から、桂枝湯証、頭項強痛の図を引用しました。

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 太陽病であれば、図のように強ばりが現れてくるのですね。

 冬季、風寒の邪に侵されたかのようでも、内傷病の場合が臨床的には結構存在します。

 その際、この「頭項強痛」も鑑別点のひとつになります。

 

 この条文で、解釈する上で悩ましいのは、「陽浮にして陰弱」と「悪寒」です。

 「陽浮にして陰弱」とは、脈診のことですが、この場合の陰陽は何を軸にして言ってるのかです。

 一般的解釈では、陽は浮位、陰は按じてと解釈されているようです。

 陽が寸口、陰が尺位との説もあります。

 筆者は、これはどちらもの正しいのだと思います。

 どこかに程度の差はあれ、虚があるということだと思います。

 

 次に「悪寒」です。

 2条太陽中風証、3条太陽傷寒証で、その鑑別は悪風と悪寒、有汗・無汗でした。

 12条に至っては、悪風もあるし悪寒もあると述べられていて、その鑑別があいまいとなっていますね。

 自汗はあるものの、悪風もあるし悪寒もあるのですから。

 しかも淅淅(せきせき)として悪寒するとありますので、両手で肩を抱えるように縮こまって震えるような感じなのでしょうか、結構厳しい悪寒ですよね。

 悪風の淅淅(せきせき)は水をかぶったかのようであるということですので、ゾッとした感じです。

 これらから、2条の太陽中風証より重症だと思いませんでしょうか。

 ですが、13条では悪寒は記されてません。

 このことにより、太陽中風証と言えども、かなり虚実のバリエーションがあるのだということが分かりますね。

 邪気が強いのか、正気が弱いのか。

 この兼ね合いを判断することこそが、臨床です。

 まとめます。

 中風証を診断する場合、有汗・無汗と悪風と悪寒は、一般的鑑別要点ではあるものの、絶対的ではないということですね。

 この後に登場します、太陽傷寒証が明確になれば、それと比べて中風証と診断がしやすくなるかもしれません。

 

 次回はこの条文の後の「桂枝湯方」の解説をします。

 あらかじめ予習していただくと、今述べているとこの意味が見えてくると思います。

 「傷寒論」はまさに、臨床の書ですね。

 次回も12条、以下の条文「桂枝湯方」も含めて、臨床像が見えて来るように詳しく解説いたします。

 今回はこれまで。

 

〔桂枝湯方〕

桂枝(三兩去皮)芍藥(三兩)甘草(二兩炙)生薑(三兩切)大棗(十二枚擘)

右五味、㕮咀三味、以水七升、微火煮取三升、去滓、適寒温、服一升。服已須臾、歠熱稀粥一升餘、以助藥力、温覆令一時許、遍身漐漐微似有汗者益佳。不可令如水流離、病必不除、若一服汗出病差、停後服、不必盡劑。若不汗、更服、依前法。

又不汗、後服小促其間、半日許令三服盡。若病重者、一日一夜服、周時觀之、服一劑盡、病證猶在者、更作服。若汗不出、乃服至二三劑。禁生冷、粘滑、肉麺、五辛、酒酪、臭惡等物。

 

桂枝(三兩、皮を去る)

芍藥(三兩)

甘草(二兩、炙(あぶる))

生薑(しょうきょう)(三兩、切る)

大棗(たいそう)(十二枚、擘(つんざ)く)

右の五味、三味を※1㕮咀(ふそ)し、水七升を以て、微火(びか)にて煮て三升を取り、滓(かす)を去り、寒温に適(かな)えて、一升を服す。服し已(おわ)り※2須臾(しゅゆ)にして、熱稀粥(ねっきかゆ)一升餘(あまり)を歠(すす)り、以て藥力を助け、※3温覆(おんぷく)すること※4一時許(ばか)りならしめ、遍身(へんしん)※5漐漐(ちゅうちゅう)として微(すこ)しく汗有るに似たる者は益々佳(よ)し。水の流離(りゅうり)するが如くならしむべからず。病必ず除かれず。若し一服し汗出で病差(い)ゆれば、後服(ごふく)を停め、必ずしも劑(ざい)を盡(つ)くさず。若し汗せざれば、更に服すること、前法(ぜんぽう)に依(よ)る。

又、汗せざれば、後服は小(すこ)しく其の間を促し、半日許(ばか)りにして三服を盡(つ)くさしむ。若し病重き者は、一日一夜服し、※6周時(しゅうじ)之を觀る、一劑を服し盡(つ)くし、病證猶(な)お在る者は、更に作りて服す。若し汗出でざれば、乃ち服すること二、三劑に至る。生冷(せいれい)、粘滑(ねんかつ)、肉麺(にくめん)、※7五辛(ごしん)、酒酪(しゅらく)、臭惡(しゅうあく)等の物を禁ず。

 ※ 

1.㕮咀(ふそ):きざむこと

2.須臾(しゅゆ):しばらくの間

3.温覆(おんぷく):衣服を着たり布団に包まるなど、温かくしていること

4.一時許(ばか):約2時間

5.漐漐(ちゅうちゅう):にじみでる様子

6.周時(しゅうじ):一昼夜

7.五辛(ごしん):ニンニク、ニラの類の類であろうか