ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

8.太陽病(上)桂枝湯方の意訳

 桂枝湯方は長いので、今回は薬剤の意訳に留めます。

 12条と併せて、この桂枝湯方をしっかり読み込まれると、後々の湯液の作り方や服し方から見えてくるものがあります。

 エキス剤を服用する場合も、この桂枝湯方にならって服用するのがより効果的だと思います。

 一日三回服用と決まっているのではないのですよね、本来の服用の仕方は。

 一服で治まれば、もったいないと思わず服用は中止します。

 治らなければ、様子をみながら時間の間隔を詰めて次々と服用します。

 詳しくは意訳と条文をしっかりと読んでください。

 

 さて、薬剤の分量と水の分量についてなのですが、実はこれがなかなか厄介なのです。

 現代中国と日本では同じ1両でも3倍くらいの開きがあります。

 日本においてさえ、時代や流派によって様々なのです。

 現代日本では、何を基準にしているのかは不明です。

 ご存知の方がいらっしゃいましたら、コメントお願いいたします。

 現代日本では、薬剤1両約1g、水1升約100㏄が一般的な目安にされているようですので、筆者もこれに倣っています。

 まあ、薬量や煎じる水の量が異なっても、それぞれ効果を出しているのですから、不思議というか、標準化できない要素を含んでいる、これぞ東洋医学と言った感じですね。

 薬だけが効くのではないという、証左になると思うのですが、みなさまいかが思われますでしょうか。

 

 では、桂枝湯方を意訳します。

 【桂枝湯方

 桂枝は皮を去ったもの3両

 芍薬3両

 火であぶった甘草2両

 切った生姜3両

 つんざいた大棗12枚

 これら5味の内、桂枝・芍薬・炙甘草(しゃかんぞう=あぶった甘草)の3味をきざみ、5味を7升の水に入れて弱火で煮て1剤3升になるまで煎じる。

 カスを取り去って、飲み加減を計って1剤3升の内、1升を服用する。

 1服後、しばらくして熱くした薄い粥を1合程度すすって、薬力を助けるようにする。

 その後さらに布団に包(くる)まるなどして温かくしてしばらく様子を診る。

 全身にジワリと汗がにじみ出るようになると、ますます良い傾向である。

 汗が流れるようにしては良くない。発汗が過ぎると必ず病は治まらなくなる。

 もし1服して全身にジワリとした発汗があり、病が治まったのなら残りの2升の薬剤は服用を停止する。必ずしも、残った薬剤全てを服用する必要はない。

 もし、1升を服用して発汗が無い場合は、同じようにしてさらにもう1升を服用する。

 それでも発汗しない場合は、服用の間隔を縮めて、半日余りで3服全てを服用させる。

 それでも発汗が無く病が治まらない重病の場合は、1昼夜服用させて経過を見守る。

 1剤3升をすべて服用し、病証がなお存在する場合は、さらに薬剤を作る。

 それでも発汗しない場合は、2~3剤を服しても良い。

 この場合、

 生冷の物(果物・生もの・冷水)

 粘滑(ネバネバとしてひつこいもの)

 肉麺(肉や麺類)

 五辛(にら、にんにくなど)

 酒酪(酒や乳製品)

 臭悪(傷みかけたり腐敗しはじめの物)

などは、禁忌である。

 以上で桂枝湯方の意訳は終わりまして、次回は桂枝湯証と八綱に関して述べます。

  

〔桂枝湯方〕

桂枝(三兩去皮)芍藥(三兩)甘草(二兩炙)生薑(三兩切)大棗(十二枚擘)

右五味、㕮咀三味、以水七升、微火煮取三升、去滓、適寒温、服一升。服已須臾、歠熱稀粥一升餘、以助藥力、温覆令一時許、遍身漐漐微似有汗者益佳。不可令如水流離、病必不除、若一服汗出病差、停後服、不必盡劑。若不汗、更服、依前法。

又不汗、後服小促其間、半日許令三服盡。若病重者、一日一夜服、周時觀之、服一劑盡、病證猶在者、更作服。若汗不出、乃服至二三劑。禁生冷、粘滑、肉麺、五辛、酒酪、臭惡等物。

 

桂枝(三兩、皮を去る)芍藥(三兩)甘草(二兩、炙(あぶる))生薑(しょうきょう)(三兩、切る)大棗(たいそう)(十二枚、擘(つんざ)く)

右の五味、三味を※1㕮咀(ふそ)し、水七升を以て、微火(びか)にて煮て三升を取り、滓(かす)を去り、寒温に適(かな)えて、一升を服す。服し已(おわ)り※2須臾(しゅゆ)にして、熱稀粥(ねっきかゆ)一升餘(あまり)を歠(すす)り、以て藥力を助け、※3温覆(おんぷく)すること※4一時許(ばか)りならしめ、遍身(へんしん)※5漐漐(ちゅうちゅう)として微(すこ)しく汗有るに似たる者は益々佳(よ)し。水の流離(りゅうり)するが如くならしむべからず。病必ず除かれず。若し一服し汗出で病差(い)ゆれば、後服(ごふく)を停め、必ずしも劑(ざい)を盡(つ)くさず。若し汗せざれば、更に服すること、前法(ぜんぽう)に依(よ)る。

又、汗せざれば、後服は小(すこ)しく其の間を促し、半日許(ばか)りにして三服を盡(つ)くさしむ。若し病重き者は、一日一夜服し、※6周時(しゅうじ)之を觀る、一劑を服し盡(つ)くし、病證猶(な)お在る者は、更に作りて服す。若し汗出でざれば、乃ち服すること二、三劑に至る。生冷(せいれい)、粘滑(ねんかつ)、肉麺(にくめん)、※7五辛(ごしん)、酒酪(しゅらく)、臭惡(しゅうあく)等の物を禁ず。

 ※ 

1.㕮咀(ふそ):きざむこと

2.須臾(しゅゆ):しばらくの間

3.温覆(おんぷく):衣服を着たり布団に包まるなど、温かくしていること

4.一時許(ばか):約2時間

5.漐漐(ちゅうちゅう):にじみでる様子

6.周時(しゅうじ):一昼夜

7.五辛(ごしん):ニンニク、ニラの類の類であろう