ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

9.太陽病(上)12条~14条と中医の八綱について

 前回の桂枝湯方、いかがでしたでしょうか。

 2条太陽中風証は、中医学では表寒虚。

 3条太陽傷寒証は、表寒実と規定されています。

   筆者が初学の頃、太陽中風証は、中医学では「調和衛営」と習いました。

 表は病位を、寒は邪気の種類・病の性質を、それに虚実の区別をつけています。

 ところが表寒虚であるはずの中風証に、発汗法=瀉法を用いています。

 前回の桂枝湯方では、発汗がみられるまで湯を服すると述べられていましたよね。

 この点を稻垣先生が、虚証に発汗法を用いるのは矛盾していると主張しているのです。

 さらに、そもそも表寒虚という八綱の使い方・考え方そのものが間違っているとも言っています。

 なるほど・・・! と思いませんでしょうか。

 稻垣先生、中医学と照らし合わせながら非常に精緻に、マニアックに読み込んでおられます。

 

 12条、13条、14条に目を通してください。

 14条は桂枝湯の変方です。

 悪寒の存在を示しているのは、12条だけです。

 悪寒の無い13条・14条の条文の後には、<前の第一方を用う>とありますので、悪寒の有無にかかわらず、やはり中風証には発汗法=瀉法を用いるのだということが分かります。

 ただし、桂枝湯方の条文中に発汗させ過ぎの禁忌があります。

 ここまでを整理すると、太陽病位は、邪を汗と共に体表に追いやって駆逐するのだと理解されます。

 もう少し突っ込んで話しますと、六経全体の中では、太陽病は実証であるということです。

 さらに細かくみて、太陽病位(実証)の中に虚実のバリエーションがあると考えるとすっきりしませんでしょうか。

 表寒虚・表寒実の虚実は、全身の虚実を言ってるのではなく、太陽病の中に虚実があるということで、中医学のこの表現をまともに受け取ると、「誤るよ」と稻垣先生は主張しているのだと思います。

 次回は、方剤の中身、薬剤の気味について述べます。

 具体的に、薬剤の気味で、人体の気がどう動くのかというところです。

 これこそが、筆者にとって最も知りたい点です。

 では、また次回に! 

【一二条】

太陽中風、陽浮而陰弱、陽浮者、熱自發。陰弱者、汗自出。嗇嗇惡寒、淅淅惡風、翕翕發熱、鼻鳴乾嘔者、桂枝湯主之。方一。

太陽の中風、陽浮にして陰弱(いんじゃく)、陽浮なる者は、熱自ずと發す。陰弱なる者は、汗自ずと出ず。嗇嗇(しょくしょく)として惡寒し、淅淅(せきせき)として惡風し、翕翕(きゅうきゅう)として發熱し、鼻鳴(びめい)乾嘔(かんおう)する者は、桂枝湯之(これ)を主る。方一。

〔桂枝湯方〕

桂枝(三兩去皮)芍藥(三兩)甘草(二兩炙)生薑(三兩切)大棗(十二枚擘)

右五味、㕮咀三味、以水七升、微火煮取三升、去滓、適寒温、服一升。服已須臾、歠熱稀粥一升餘、以助藥力、温覆令一時許、遍身漐漐微似有汗者益佳。不可令如水流離、病必不除、若一服汗出病差、停後服、不必盡劑。若不汗、更服、依前法。

又不汗、後服小促其間、半日許令三服盡。若病重者、一日一夜服、周時觀之、服一劑盡、病證猶在者、更作服。若汗不出、乃服至二三劑。禁生冷、粘滑、肉麺、五辛、酒酪、臭惡等物。

 

桂枝(三兩、皮を去る)芍藥(三兩)甘草(二兩、炙(あぶる))生薑(しょうきょう)(三兩、切る)大棗(たいそう)(十二枚、擘(つんざ)く)

右の五味、三味を※1㕮咀(ふそ)し、水七升を以て、微火(びか)にて煮て三升を取り、滓(かす)を去り、寒温に適(かな)えて、一升を服す。服し已(おわ)り※2須臾(しゅゆ)にして、熱稀粥(ねっきかゆ)一升餘(あまり)を歠(すす)り、以て藥力を助け、※3温覆(おんぷく)すること※4一時許(ばか)りならしめ、遍身(へんしん)※5漐漐(ちゅうちゅう)として微(すこ)しく汗有るに似たる者は益々佳(よ)し。水の流離(りゅうり)するが如くならしむべからず。病必ず除かれず。若し一服し汗出で病差(い)ゆれば、後服(ごふく)を停め、必ずしも劑(ざい)を盡(つ)くさず。若し汗せざれば、更に服すること、前法(ぜんぽう)に依(よ)る。

又、汗せざれば、後服は小(すこ)しく其の間を促し、半日許(ばか)りにして三服を盡(つ)くさしむ。若し病重き者は、一日一夜服し、※6周時(しゅうじ)之を觀る、一劑を服し盡(つ)くし、病證猶(な)お在る者は、更に作りて服す。若し汗出でざれば、乃ち服すること二、三劑に至る。生冷(せいれい)、粘滑(ねんかつ)、肉麺(にくめん)、※7五辛(ごしん)、酒酪(しゅらく)、臭惡(しゅうあく)等の物を禁ず。

 ※ 

1.㕮咀(ふそ):きざむこと

2.須臾(しゅゆ):しばらくの間

3.温覆(おんぷく):衣服を着たり布団に包まるなど、温かくしていること

4.一時許(ばか):約2時間

5.漐漐(ちゅうちゅう):にじみでる様子

6.周時(しゅうじ):一昼夜

7.五辛(ごしん):ニンニク、ニラの類の類であろう

【一三条】

太陽病、頭痛、發熱、汗出、惡風、桂枝湯主之。方二(用前第一方)。

太陽病、頭痛、發熱、汗出で、惡風するは、桂枝湯之を主る。方二(前の第一方を用う)。

【一四条】

太陽病、項背強几几、反汗出惡風者、桂枝加葛根湯主之。方三。

太陽病、項背強(こわ)ばること几几(しゅしゅ)とし、反って汗出で惡風する者は、桂枝加葛根湯之を主る。方三。