ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

16.陽病(上)20条 桂枝加附子湯

 【二〇条】

太陽病、發汗、遂漏不止、其人惡風、小便難、四肢微急、難以屈伸者、桂枝加附子湯主之。方七。

太陽病、發汗し、遂に漏れ止まず、其の人惡風し、小便難、四肢微急(びきゅう)し、屈伸以て難き者は、桂枝加附子湯(けいしかぶしとう)之を主る。方七。

 条文を意訳してみます。

 太陽病証であったので、発汗法を用いました。

 ところが発汗が過ぎてしまい、遂には漏れが止まらなくなってしまった。

 今現在の証は、悪風がして小便が出難く、手足が少しひきつるようで曲げ伸ばしがし難い状態である。

 この証は、桂枝加附子湯である。

 

 桂枝湯証に麻黄湯を服用させたのか、もしくは桂枝湯を過度に服用させた結果なのか、とにかく太陽病で発汗法を用いた後、引き続き汗が出て止まらないことが分かります。

 もしそうであれば、16条の壊病です。

 いわゆる誤治の結果ですね。

 そうでなければ、太陽と少陰の併病であると考えられます。

 

 まだ自汗と悪風があるのでさらに桂枝湯を服用させたいところです。

 しかし、小便難と四肢微急、屈伸難が現れているので、これは単なる桂枝湯証の自汗ではなく、気が漏れて止まない姿であることを「遂に漏れ止まず」と表現しています。

 そしてわざわざ小便難と記しているのは、暗に腎陽の気化作用の低下を示している訳です。

 そうしたら、手足のひきつりと屈伸難は、陽気不足によって起きているわけですから、足に触れるとすでに厥冷が始まっているだろうと推測することが出来ますね。

 臨床では、実際に触れてみればすぐに分かることです。

 さらに推測を重ねて行けば、おそらく脈は浮大緩無力で、締まりが無く頼りなく感じる脈のはずです。 

 以上のことから壊病でなくても、太陽病と少陰病の併病もしくは合病としても理解出来ます。

  四肢微急、屈伸難に関して、29条に出てきます芍薬甘草湯証の脚攣急との鑑別が大切です。

 芍薬甘草湯の脚攣急は、いわゆるこむら返りのような状態で、はっきりと引きつります。

 それに反して桂枝加附子湯証の場合、何となく強ばったようで曲げ伸ばしがし難いといった感じです。

 また術者が少陰病位であることを察知して、問診で聞き出さないと分からない軽度な現れ方をすることがあります。

 仲景先生に、どんどん尋ねて参りましょうね。

 

 附子について解説します。

 附子の気味 大辛温大熱 有毒 (中医学)

 薬徴:水を逐うを主る。故に悪寒、身体四肢骨節疼痛或いは沈重、或いは不仁、厥冷を治す。傍ら腹痛、失精、下痢を治す。

 附子は、生をそのまま用いる場合、「生附子」として大辛温大熱の威力を発揮し、四逆湯類などの回陽救逆に働きます。

 また水でさらして毒を緩めるなどして炮製されたものは、「炮附子」として補陽益火、散寒止痛などの効能があります。

 以上は、中医薬学的な解釈になりますが、後に「薬能」として附子について別に論じたいと思います。

 附子は、少陰病の陽虚のバリエーションによって生附子と炮附子と使い分けられます。

 薬徴にありますように、附子は水を大きく動かす薬剤ですが、主に下焦の陽気を鼓舞します。

 温薬中では、

 上焦の水は麻黄

 中焦の水は白朮・茯苓ペア

 下焦の水は附子 といったイメージを筆者は持っていますので、参考になさってください。

 

 さて、桂枝加附子湯を鍼で行うのでしたらどのように考えますでしょうか。

 桂枝湯証は、上焦部位の陽経の経穴を用います。

 筆者は、附子を意識するなら、空間的に下に取りたいと考えます。

 手の親指側=任脈

 手の小指側=督脈

 ざっくりとこのように捉えますと、

 足の親指側=任脈 ・・・足少陰・足太陰

 足の小指側=督脈 ・・・足太陽

 と捉えることが出来ます。

 このように考えると、桂枝加附子湯証は、足太陽の申脈穴、京骨穴(ともに補法)などを候補に挙げることが出来ます。

 空間的に下に取穴することで、下焦に気を集めて陽気の回復狙うことが出来ます。

 陽気が回復すると、発汗の漏れは自ずと止まります。

 すると肌表のすぐ下に正気が充実しますので、自ずと駆邪に働いて回復すると考えますが、どうでしょう。

 ある程度の原理さえとらえれば、鍼は非常に便利で即効性があります。

 

〔桂枝加附子湯方〕

桂枝(三兩去皮)芍藥(三兩)甘草(三兩炙)生薑(三兩切)大棗(十二枚擘)附子(一枚炮去皮破八片)

右六味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升。本云桂枝湯、今加附子、將息如前法。

桂枝(三兩、皮を去る)芍藥(三兩)甘草(三兩、炙(あぶ)る)生薑(三兩、切る)大棗(十二枚、擘(つんざ)く)附子(一枚、炮(ほう)じて皮を去り八片に破る)

右六味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓(かす)を去り、一升を温服す。本(もと)云う桂枝湯に、今附子を加うと。將息(しょうそく)は前法の如くす。