ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

19.太陽病(上)23条(1)桂枝麻黄各半湯 痒みと小発汗

【二三条】

太陽病、得之八九日、如瘧狀、發熱惡寒、熱多寒少、其人不嘔、清便欲自可、一日二三度發。脉微緩者、為欲愈也。脉微而惡寒者、此陰陽倶虛、不可更發汗、更下、更吐也。面色反有熱色者、未欲解也、以其不能得小汗出、身必痒、宜桂枝麻黄各半湯。方十。

太陽病、之を得て八、九日、瘧狀(ぎゃくじょう)の如く、發熱惡寒するも、熱多く寒少なく、其の人嘔せず、清便自可せんと欲し、一日二、三度發す。脉微緩なる者は、愈えんと欲すと為すなり。脉微にして惡寒する者は、此れ陰陽倶(とも)に虚す、更に發汗し、更に下し、更に吐(と)すべからざるなり。面色反って熱色有る者は、未だ解せんと欲さざるなり、其の小(すこ)しく汗出づるを得ること能わざるを以て、身必ず痒し。桂枝麻黄各半湯(けいしまおうかくはんとう)に宜し。方十。

  条文を意訳してみます。

 太陽表証となって8・9日が経過した現在、瘧(おこり)の状態のようになって発熱と悪寒が交互に現れる状態となった。その際、悪寒よりも発熱の期間が長い。

 この状態で、吐き気が無く、大便も通じている。

 だが瘧のような発作が、一日に二・三度起きる。

 脈が微緩であれば、もうすぐ治癒するであろう。

 脈が微で悪寒がする場合は、これは陰陽がともに虚している状態であるので、さらに発汗法、下法、吐法を用いるべきではない。

 しかしこれに反して面色に熱色がある場合は、まだ解けようとしている状態ではない。

 これはもう少しだけ発汗することが出来ないからで、この場合、正邪が肌表でうっ滞しているので身体が痒くなる。

 このような状態には、桂枝麻黄各半湯を考慮して少し発汗させるのがよい。

 

 意訳の部分を、いくつかに分けて詳しく見て参ります。

 この条文中に、おそらく後人の注釈が紛れ込んだのではないか、もしくは他の条文の錯簡があるのではないかと考えています。

 まずは、途中の文を削って単純にしてみます。

 

太陽病、得之八九日、如瘧狀、發熱惡寒、熱多寒少、其人不嘔、清便欲自可、一日二三度發。

以其不能得小汗出、身必痒、宜桂枝麻黄各半湯。

太陽病、之を得て八、九日、瘧狀(ぎゃくじょう)の如く、發熱惡寒するも、熱多く寒少なく、其の人嘔せず、清便自可せんと欲し、一日二、三度發す。

其の小(すこ)しく汗出づるを得ること能わざるを以て、身必ず痒し。桂枝麻黄各半湯に宜し。

 

 この文を分析してみます。

 太陽表証になって一週間以上も経過しているのですね。

 その間おそらく発熱発汗して大方解肌・解熱していて、治癒の手前にある段階だと思います。

 桂枝麻黄各半湯(以下、桂麻各半湯)の脈は浮で緊とまでは言えない、手当たりは落ち葉を按じるような枯れたような脈で、少し按じると緩脈だろうと思います。

 

 ここで問題となっているのは、瘧(おこり)の状の如しというところですね。

 いわゆるひとつ病位が落ちた、少陽病の往来寒熱に似た状態です。

 そこで吐き気がしないということで少陽病は否定されます。

 

 もうひとつは、瘧の状でのようで、熱が多くて寒が少ないことです。

 これは少陽病よりもう一段病位が落ちた、陽明病の潮熱の兆候かもしれないと思いますよね。

 そこで、大便が通じていることを述べて、陽明病ではないと言っています。

 「清便自可せんと欲し」とは、普通便がちゃんと通じていますよ、ということです。

 

 そして最後に、桂枝湯と麻黄湯の各半量を足して一剤として服用させ、少しだけ汗を取れば治癒すると言っています。

 方剤名は桂麻各半湯なので、桂枝湯と麻黄湯の各半量を合わせたものと思いがちですが、林億は方剤の量から桂枝湯1/3、麻黄湯1/3を併せて一剤としたものと解説しています。

 いわば、小剤なわけです。

 そしてこの桂麻各半湯の目標とすべき症状は、、身体が痒い症状だと言ってます。

 この痒みは、肌表での軽い気滞と捉えれば良いと思います。

 ここまで来ると、治療せずとも自ずと回復するのではないかと思うのですがどうでしょう。

 鍼を用いるのでしたら、補うことによって自然瀉法になるように持って行くか、軽く接触鍼程度で瀉法を施す程度で良いのではないでしょうか。

 桂麻各半湯方は、目を通して頂くだけで良いと思います。

 次回、今回読み飛ばした文との整合性を考えてみます。

〔桂枝麻黄各半湯方〕

桂枝(一兩十六銖去皮)芍藥生薑(切)甘草(炙)麻黄(各一兩去節)大棗(四枚擘)杏仁(二十四枚湯浸去皮尖及兩仁者)

右七味、以水五升、先煮麻黄一二沸、去上沫、内諸藥、煮取一升八合、去滓、温服六合。本云桂枝湯三合、麻黄湯三合、併為六合、頓服、將息如上法。

(臣億等謹按桂枝湯方、桂枝芍藥生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。麻黄湯方、麻黄三兩、桂枝二兩、甘草一兩、杏仁七十箇。今以算法約之、二湯各取三分之一、即得桂枝一兩十六銖、芍藥生薑甘草各一兩、大棗四枚、杏仁二十三箇零三分枚之一、收之得二十四箇、合方。詳此方乃三分之一、非各半也、宜云合半湯。)

桂枝(一兩十六銖(しゅ)、皮を去る)芍藥生薑(切る)甘草(炙る)麻黄(各一兩、節を去る)大棗(四枚、擘く)杏仁(二十四枚、湯に浸け皮尖(ひせん)及び兩仁(りょうにん)の者を去る)

右七味、水五升を以て、先ず麻黄を煮ること一、二沸、上沫(じょうまつ)を去り、諸藥を内(い)れ、煮て一升八合を取り、滓を去り、六合を温服す。本(もと)云う桂枝湯三合、麻黄湯三合、併せて六合と為し、頓服(とんぷく)すと。將息(しょうそく)は上法の如くす。

(臣億等謹んで桂枝湯方を按ずるに、桂枝、芍藥、生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。麻黄湯方は、麻黄三兩、桂枝二兩、甘草一兩、杏仁七十箇。今算法を以て之を約するに、二湯各三分の一を取り、即ち桂枝一兩十六銖、芍藥、生薑、甘草各一兩、大棗四枚を得、杏仁二十三箇零三分枚の一、之を收めて二十四箇を得、合方とす。此の方を詳らかにすれば乃ち三分の一、各半に非ざるなり、合半湯と云うに宜し。)