ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

28.太陽病(上)28条 桂枝去桂加茯苓白朮湯

【二八条】

服桂枝湯、或下之、仍頭項強痛、翕翕發熱、無汗、心下滿微痛、小便不利者、桂枝去桂加茯苓白朮湯主之。方十五。

桂枝湯を服し、或は之を下し、仍(な)お頭項強痛し、翕翕(きゅきゅう)として發熱し、汗無く、心下滿微痛(まんびつう)し、小便利せざる者は、桂枝去桂加茯苓白朮湯(けいしきょけいかぶくりょうびゃくじゅつとう)之を主る。方十五。

 まず条文を意訳してみます。

 桂枝湯を服用して汗を取り、或いはその後、下すべき証に随って下法を用いた。

 しかしながらなお、頭や項が強ばり痛み、発熱して汗が無く、心下が満となり少しく痛みがあり、小便が不利であるのは、桂枝去桂加茯苓白朮湯の証である。

 

 この病態を精しく把握するには、方剤構成を吟味する必要があります。

 太陽病位と同じ頭項強痛、発熱がありますが、方剤の中身を見ると、桂枝湯から桂枝を去っているので、表証は解けていることが分かります。

 そうするとすでに悪寒などの表証も存在していないことが分かります。

 ではなぜ頭項強痛、発熱の症候があるのでしょうか。

 注目は小便不利です。

 小便があまり出ていないことから、心下の満は津液の停滞によって起きていることが分かります。

 このようなケースの場合、臨床的には心下満を確認したら、問診で小便の様子を聞き出すことが大切です。

 小便の様子を問うても明確に分からないのであれば、大便の状態を問えば良いと、次々と思考を繋げていきます。

 つまり、小便があまり出ていないのであれば、大便は軟便とはならないまでも、ゆるいはずだと思考を進めます。

 他にも舌診では、胖大かも知れないし歯痕舌かもしれない。

 舌苔は、白~やや黄色で粘性を帯びているはずだ・・・などなどです。

 

 また心下と頭項、肩背部との相関は、これまで繰り返し述べて来たとおりです。

 夢分流腹診術では、心下、両脾募と頭、首、肩は相関しています。

 この場合、心下には水だけでなく熱も存在し、軽度もしくは虚証の水熱互結証=結胸証と認識しても良いと思います。

 そうならば、条文には書かれていませんが、軽度ではあるかもしれませんが胸満や心煩もあるかもしれません。

 とにかく、思考を繋げてどんどん推測、イメージを膨らませる習慣が大切です。

 実証で重度の結胸証は、131条大陥胸丸や134条の大陥胸湯が相当します。

 131条と134条は、比較的分かりやすいと思いますので、あらかじめ一読をお勧めいたします。

 大陥胸丸条文中の「柔痙の如し」とあるのが比較的重い頭項強痛に相当します。

 

 この桂枝去桂加茯苓白朮湯の熱は、気虚発熱と認識することもできると思います。

 (気虚→水湿の邪産生→陽気を阻む→気滞→発熱と水湿の邪の結び)

 心下の水湿の邪を、麻黄・生姜などを使って肌表から発汗させるという手もありますが、しかしこの場合は気虚傾向なので、瀉法である発汗法は用いていません。

 ですから、桂枝湯中から発散軽浮の桂枝を去ることで湯薬を中焦に集中させ、茯苓・白朮で脾気の水湿転輸の気を補い、水湿の邪を小便として下から排泄させるのですね。

 よ~く考えられていると感じます。

 陽気を阻んでいた津液が排泄されると、陽気が行り始めるので発熱も治まり、心下の満微痛も治まり、結果として頭項強痛も治まってくるという治癒機序です。

 発熱に対する清熱は、必要ないですね。

 この病理は、肩凝り、寝違い、頭痛などにも応用ができますので、覚えておかれると良いと思います。

 鍼だと、心下満微痛で津液=陰気ですので、足太陰・足陽明などの経穴を使って、下に引いて補法を用いるというのはどうでしょう。

 必要ならば生体の虚実を考慮しながら、陰陵泉などに瀉法を加味するのも良いと思います。

 補を先にするか、瀉を先にするかは、その時々の生体の虚実によります。

 基本的に、陽邪は上に、陰邪は下に導くようにします。

 しかし、越婢湯で学んだように、陰邪である水湿が上焦でしかも肌表にあり、正気が充実しておれば、瀉法である発汗法を用います。

 このように基本は基本として、その時々の状態に適うように自由自在に補写を用いることが出来るようになるのが臨床への道です。

 ここでは一穴だけ経穴名を挙げていますが、絶対的に捉えずに自分なりに条理を立て、それに従って取穴・補瀉して下さればと思います。

 

桂枝去桂加茯苓白朮湯方〕

芍藥(三兩)甘草(二兩炙)生薑(切)白朮茯苓(各三兩)大棗(十二枚擘)

右六味、以水八升、煮取三升、去滓、温服一升、小便利則愈。本云桂枝湯、今去桂枝、加茯苓、白朮。

芍藥(三兩)甘草(二兩、炙る)生薑(切る)白朮茯苓(各三兩)大棗(十二枚、擘く)

右六味、水八升を以て、煮て三升を取る、滓を去り、一升を温服す、小便利すれば則ち愈ゆ。本(もと)云う桂枝湯より、今、桂枝を去り、茯苓、白朮を加うと。