ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

32.太陽病(上)29条 疑似桂枝湯証と壊病(4)

  さて、「若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯」は、どこからの続きとして考えればいいのかを考察して参ります。

 さて、このテーマでここまで来たわけですが、そもそも「傷寒の脉浮、自ずと汗出で、小便數(さく)、心煩、微惡寒し、脚(きゃく)攣急(れんきゅう)する」病態をどのように推測するかで、大きく変わってきます。

1.太陽と少陰の合病であった者。

  一般的には、桂枝加附子湯証であるとして理解されているようです。

  しかしこの場合、太陰病位の甘草乾姜湯で陽気を回復させています。

  おそらく小便利となり完治するでしょう。

  しかし反って陽気過剰となれば、内熱を生じることも考えられます。

2.気血両虚であった者。

  甘草乾姜湯で陽気を回復させ、後に芍薬甘草湯で陰気の回復を計っています。

3.気虚裏寒水であった者。

  甘草乾姜湯で、小便利となり回復する。

  この証は、後に出て来る小青竜湯証(表寒実裏寒水)に類似した証です。

4.気虚裏熱水であった者。

  甘草乾姜湯で、ある程度小便利は得られるものの、内熱・湿熱が盛んとなる。

  この証は、後に出て来る大青龍湯証(表寒実裏熱水)に類似した証です。

 

 以上、素体を4種類に分けてみました。

 調胃承気湯は、陽明腑実証の軽い場合に用いられます。

 上記の4種類の素体の内、胃気の不和を起こし、讝語するようになるのは1.4.の場合と想定できませんでしょうか。

 まだまだ、議論と推敲が必要ですが、一応これで落ちをつけておきます。

 あと残るのは、「若し重ねて汗を發し、復た燒鍼(しょうしん)を加うる者は、四逆湯之を主る」のところとなります。

 

【二九条】

傷寒脉浮、自汗出、小便數、心煩、微惡寒、脚攣急、反與桂枝、欲攻其表、此誤也。得之便厥、咽中乾、煩躁吐逆者、作甘草乾薑湯與之、以復其陽。若厥愈足温者、更作芍藥甘草湯與之、其脚即伸。若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯。若重發汗、復加燒鍼者、四逆湯主之。方十六。

傷寒の脉浮、自ずと汗出で、小便數(さく)、心煩、微惡寒し、脚(きゃく)攣急(れんきゅう)するに、反って桂枝を與(あた)え、其の表を攻めんと欲するは、此れ誤りなり。之を得れば便(すなわ)ち厥(けつ)し、咽中乾き、煩躁吐逆する者は、甘草乾薑湯(かんぞうかんきょうとう)を作り之に與え、以て其の陽を復す。若し厥愈え足温かなる者は、更に芍藥甘草湯を作り之を與うれば、其の脚即ち伸びる。若し胃氣和せず讝語(せんご)する者は、少しく調胃承氣湯(ちょうきじょういとう)を與う。若し重ねて汗を發し、復た燒鍼(しょうしん)を加うる者は、四逆湯之を主る。方十六。

 

〔甘草乾薑湯方〕

甘草(四兩炙)乾薑(二兩)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

甘草(四兩、炙る)乾薑(二兩)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔芍藥甘草湯方〕

白芍藥甘草(各四兩炙)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

白芍藥甘草(各四兩、炙る)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔調胃承氣湯方〕

大黄(四兩去皮清酒洗)甘草(二兩炙)芒消(半升)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒消、更上火微煮令沸、少少温服之。

大黄(四兩、皮を去り清酒で洗う)甘草(二兩、炙る)芒消(ぼうしょう)(半升)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取る、滓を去り、芒消を内(い)れ、更に火に上(の)せて微(すこ)しく煮て沸(わか)せしめ、少少之を温服す。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙)乾薑(一兩半)附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。強人可大附子一枚、乾薑三兩。

甘草(二兩、炙る)乾薑(一兩半)附子(一枚、生を用い皮を去り八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かちて温め再服す。強人は大附子一枚、乾薑三兩とすべし。