ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

35.太陽病(中)31~32条 葛根湯証 自下利

 いよいよ<辨太陽病脉證并治中>に入って参りました。

 冒頭の葛根湯、一般に良く知られた方剤です。

 過去ブログ<14.太陽病(上)13~14条>で、すでに葛根湯と桂枝加葛根湯の違いについて述べていますので、もう一度復習して頂けたらと思います。

 

三一】太陽病、項背強几几、無汗、惡風、葛根湯主之。方一。

太陽病、項背(こうはい)強ばること几几(きき)として、汗無く、惡風するは、葛根湯之を主る。方一。

〔葛根湯方〕

葛根(四兩) 麻黄(三兩去節) 桂枝(二兩去皮) 生薑(三兩切) 甘草(二兩炙) 芍藥(二兩) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗、先煮麻黄、葛根、減二升、去白沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、覆取微似汗。餘如桂枝法將息及禁忌、諸湯皆倣此。

葛根(四兩) 麻黄(三兩節を去る) 桂枝(二兩皮を去る) 生薑(三兩切る) 甘草(二兩炙る) 芍藥(二兩) 大棗(十二枚擘く)

右七味、水一斗を以て、先ず麻黄、葛根を煮て、二升を減じ、白沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、覆(おお)いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。

餘は桂枝の法の如く將息(しょうそく)及び禁忌す、諸湯(しょとう)皆此れに倣(なら)え。

 

三二】太陽與陽明合病者、必自下利、葛根湯主之。方二(用前第一方一云用後第四方)。

太陽と陽明の合病なるは、必ず自から下利す、葛根湯之を主る。方二

【解説】

 一般的には、胃腸風邪と称されている状態です。

 太陽と陽明の合病ですから、邪気が一気に太陽から陽明にまで侵入し、しかも太陽にまだ邪が存在している状態ですね。 

 葛根湯証に加えて、陽明病の症候が現れているのですがその症状が述べられていません。

 問題のカギは「自下痢」になるので、これだけを記載したのでしょう。

 一般的に陽明病は、濈然(しゅうぜん)として汗が出る、不大便、悪熱、譫語、口渇、潮熱などの症候が現れます。

 ところが体表は風寒の邪に侵され肌表が閉じているので無汗です。

 そして中焦で蒸し上がった水湿が肌表で阻まれ、腑に下り流れ込んだ状態が「自下痢」と理解することが出来ます。

 おそらく「自下利」後は腑気が幾分通じるので、口渇や悪熱などの陽明病証が少し軽くなり、悪寒などの表証がはっきりと自覚されるようになるかもしれません。

 当然、「自下利」は、熱痢となります。

 したがって葛根湯を用いて汗として水湿と熱を肌表から排泄できれば、「自下利」は自ずと治まり表証も解けるという機序で治癒します。

 もし解表後、陽明経証が残れば白虎湯。

 陽明腑実証が残れば承気湯類ということになります。

 おおよそ、表寒証で下痢を起こすものは、素体として普段から水湿の邪を下焦に内包している人に起きやすいと考えられます。

 要は、水の出口が表寒によって塞がれてしまったがために、「自下利」となってしまったという訳です。

 このように水の出口という視点で見れば、大量の鼻水が出てもおかしくないですね。

 後々出てきますが、内熱が厳しい場合は、鼻血という形で自然瀉血が現れます。

 太陽と陽明の合病ともなれば、表証と裏証の症候が錯綜するのでしっかりと病態を認識する必要があります。