ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

67.太陽病(中)82条 真武湯 83~90条

【八二条】

太陽病發汗、汗出不解、其人仍發熱、心下悸、頭眩、身瞤動、振振欲擗(一作僻)地者、真武湯主之。方四十三。

太陽病、發汗し、汗出でて解けず、其の人仍(な)お發熱、心下悸、頭眩(ずげん)、身瞤動(みじゅんどう)し、振振として(一作僻)地に擗(たお)れんと欲する者は、真武湯之を主る。方四十三。

〔真武湯方〕

茯苓 芍藥 生薑(各三兩切) 白朮(二兩) 附子(一枚炮去皮破八片)

右五味、以水八升、煮取三升、去滓、温服七合、日三服。

茯苓 芍藥 生薑(各三兩切り) 白朮(二兩) 附子(一枚炮(ほう)じて皮を去り八片を破る)

右五味、水八升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、七合を温服す、日に三服す。

  太陽病で発汗させたのですが、汗が出たにもかかわらず解熱しない。

 そして心下に動悸があり頭がクラクラとし、身体がピクピクと痙攣し、しかも身体が揺れて倒れそうなものは、真武湯証であると述べられています。

 真武湯は、少陰病位の湯液とされていますが、茯苓四逆湯と同じように少陰病であっても熱症状があります。

 後に出てくる四逆湯で述べますが、熱症状があっても辛温の附子を用いてることに注目しておいてください。

 附子は、単に補陽剤ではないということです。

 また桂枝が配されていませんので、発汗によって表証はすでに解けた状態です。

 それにもかかわらず、発熱しているのはなぜでしょう。

 さて、この真武湯は、P140 316条 少陰病にも記載されています。

【三一六条】

少陰病、二三日不已、至四五日、腹痛、小便不利、四肢沈重疼痛、自下利者、此為有水氣。其人或欬、或小便利、或下利、或嘔者、真武湯主之。

 意訳してみます。

 少陰病になって2・3日が経過しても治らず、さらに4・5日に至って腹痛がして小便があまり出ない。四肢は重く疼くように痛み、下痢する者は水気のために起きている症候である。

 ここからの「或」のついている症状は、兼証なので必ずしも現れるとは限りません。

 ですから素体によって咳をしたり小便が通じていたり下痢したり吐き気がしたりするが、これらは水気の病であるから真武湯証である、といった意味ですね。

 「有水氣」とありますから、この病態には、大いに水が関係していることが分かりますね。

  配剤をみてみましょう。

 辛温の生姜、苦温の白朮、辛温の炮附子、甘淡平の茯苓、すべて水がらみの方剤です。

 酸微寒の芍薬は、薬徴では「結実して拘攣するを主治」とありますから、腹部には緊張があり、しかも心下で動悸を拍っている状態です。(下記、腹証奇覧の図とは異なりますが)

 腹証奇覧の図に登場してもらいます。

     f:id:ichinokai-kanazawa:20171229063508j:plain

 腹証奇覧の解説によりますと、腹部は軟満していますが、按ずると悸と拘攣が存在するとあります。

 この場合の悸は茯苓が行くところ、拘攣は芍薬の行くところで、両薬で結びを解くのでしょう。

 これらのことから、水が腎陽を阻み、しかも中焦でも水があふれて心下で結んでしまい、胸部と腹部の気が交流しない状態だと想像できます。

 するとこの発熱は、心下で気が詰まることによる鬱熱という考え方が出来ます。

 ですので中焦と下焦の水さえ利すれば、鬱熱は自ずと解けることを狙った方剤だと理解できます。

 服用後の変化は、小便利を得ると病は解けると予測できます。

 83条から90条は、後人の攙入と思われますので、読み下し文のみ記載しましたので、目を通して頂けたらと思います。

 

【八三条】

咽喉乾燥者、不可發汗。

咽喉乾燥する者、發汗すべからず。

【八四条】

淋家、不可發汗、發汗必便血。

淋家(りんか)、發汗すべからず、發汗すれば必ず便血す。

【八五条】

瘡家、雖身疼痛、不可發汗、汗出則痓。

瘡家(そうか)は、身疼痛すと雖(いえど)も、發汗すべからず、汗出づれば則ち痓(けい)す。

【八六条】

衄家、不可發汗、汗出必額上陷、脉急緊、直視不能眴(音喚又胡絹切下同一作瞬)不得眠。

衄家(じくか)、發汗すべからず、汗出づれば必ず額上(がくじょう)の陷脉(かんみゃく)急緊(きゅうきん)し、直視し眴(じゅん)ずること能わず眠ることを得ず(音喚又胡絹切下同一作瞬)。

【八七条】

亡血家、不可發汗、發汗則寒慄而振。

亡血家(ぼうけつか)、發汗すべからず、發汗則ち寒慄(かんりつ)して振う。

【八八条】

汗家、重發汗、必恍惚心亂、小便已陰疼、與禹餘粮丸。四十四。(方本闕)

汗家(かんか)、重ねて發汗すれば、必ず恍惚として心亂(みだ)れ、小便已(おわ)りて陰疼(いた)む、禹餘粮丸(うよりょうがん)を與う。四十四。(方は本(もと)闕(か)く)

【八九条】

病人有寒、復發汗、胃中冷、必吐蚘(一作逆)。

病人寒有り、復た發汗すれば、胃中冷え、必ず蚘(かい)を吐す(一作逆)

【九〇条】

本發汗、而復下之、此為逆也。若先發汗、治不為逆。本先下之、而反汗之、為逆。若先下之、治不為逆。

本(もと)發汗し、而(しこう)して復た之を下し、此れを逆と為すなり。若し先ず發汗するは、治は逆と為さず。本先ず之を下し、而して反って之を汗するは、逆と為す。若し先ず之を下すは、治逆と為さず。