ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

70.太陽病(中)96条 小柴胡湯

【九六条】

傷寒五六日中風、往来寒熱、胸脇苦滿、嘿嘿不欲飲食、心煩喜嘔、或胸中煩而不嘔、或、或腹中痛、或脇下痞、或心下悸、小便不利、或不、身有微熱、或者、小柴胡湯主之。方四十八。

傷寒五六日中風、往来寒熱、胸脇苦滿、嘿嘿(もくもく)として飲食欲せず、心煩喜嘔(きおう)し、或いは胸中煩して嘔せず、或いは渇っし、或いは腹中痛み、或いは脇下(きょうか)痞鞕し、或いは心下悸し、小便利せず、或いは渇せず、身に微熱有り、或いは欬(がい)する者は、小柴胡湯之を主る。方四十八。

 少し意訳します。 

 太陽病の傷寒証もしくは中風証に罹って5・6日が経過したところ、表証が解けずに往来寒熱、胸脇苦満、話すのが億劫で食欲がなくなり、心煩がして吐き気が現れて来た。

 「或」以下の症状は兼証なので、素体によって現れたり現れなかったりします。

 その兼証は、胸中の煩、吐き気が無い、口渇、腹痛、脇下痞鞕、心下の動悸、小便不利、口渇が無い、微熱、咳などである。

 これらは小柴胡湯証である。

 96条は、少陽病の正証ですので、病理をよく理解しておかれると良いと思います。

 上焦の背部から侵入した風寒の邪が、表から裏に入ろうとする狭間の病態ですので、病位としては半表半裏と称されています。

 まず、往来寒熱です。

 邪が内向しようとする範囲は、背、胸、脇と範囲が広く、正気と邪気がせめぎあう姿として往来寒熱すると理解できます。

 臨床的には、寒熱がはっきりと交代して現れる場合や、悪寒は少なく悪熱がはっきり現れる場合などがあります。

 この場合、23条の桂麻各半湯証、25条の桂枝二麻黄一湯証、27条の桂枝二越婢一湯証などの瘧の状との鑑別が必要です。

 小柴胡湯証と判断するには、この往来寒熱と他の症候を問診で得て総合的に判断します。

 そして背、胸、脇と広い範囲で正邪がせめぎあう、最後の砦が膈であり、前は季肋部が膈に相当するので、胸、季肋部、脇に緊張が現れます。場合によっては、脇下痞鞕することもあると兼証に記されています。

 これがいわゆる胸脇苦満と称される腹証です。

 背部では、7椎下至陽穴ー膈兪を中心とした付近に何らかの反応が現れます。

 腹証奇覧の図を見てください。

 

        f:id:ichinokai-kanazawa:20180106144847j:plain

      

 上図は、一般的な胸脇苦満ですね。

 ところが、腹証奇覧翼の下図になりますと、この96条の証とかなり近似しています。

 お顔の表情が、なんか困ったかの様ですね。

 

       f:id:ichinokai-kanazawa:20180106145105j:plain

 膈で正邪が拮抗して強い気滞を起こしているので、胃気もまた失調して食欲がなくなり、心煩や場合によっては吐き気まで現れます。

 臨床的には、気分の悪さ、心下付近がムカムカする、何となく気持ちが悪いといった所見を得ることが多いです。

 膈を超えて陽明に邪熱が影響すると口渇が現れますし、気機に影響すると小便不利等が現れます。

 この小柴胡湯、下図腹証奇覧のように応用範囲の広い方剤ですので、しっかりと記憶しておかれると良いと思います。

  荒木性次は、小児などが突然嘔吐して発熱し、うつらうつらと眠るもの、耳の中が痛んだり耳の下が腫れて痛み、気分が甚だすぐれない者に小柴胡湯が行くとしてます。

 その際、発熱する場合と悪寒を伴う場合があると。

 また葛根湯証と桂枝湯証と似ている場合もあるので、気分がすぐれず食欲が無いのを鑑別点にするとよいとも行っています。

 

      f:id:ichinokai-kanazawa:20180106150158j:plain

 次回は方剤を吟味致します。

 

〔小柴胡湯方〕

柴胡(半斤) 黄(三兩) 人參(三兩) 半夏(半升洗) 甘草(炙) 生薑(各三兩切) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。若胸中煩而不嘔者、去半夏人參、加樓實一枚。若、去半夏、加人參合前成四兩半、樓根四兩。若腹中痛者、去黄、加芍藥三兩。若脇下痞、去大棗、加牡蠣四兩。若心下悸、小便不利者、去黄、加茯苓四兩。若不、外有微熱者、去人參、加桂枝三兩、温覆微汗愈。若者、去人參大棗生薑、加五味子半升、乾薑二兩。

柴胡(半斤) 黄芩(三兩) 人參(三兩) 半夏(半升洗う) 甘草(炙る) 生薑(各三兩切る) 大棗(十二枚擘く)

右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り、一升を温服し、日に三服す。若し胸中煩して嘔せざる者は、半夏人參を去り、栝樓實(かろじつ)一枚を加う。若し渇するは、半夏を去り、人參を前に合わせて四兩半と成し、栝樓根(かろこん)四兩を加う。若し腹中痛む者は、黄芩を去り、芍藥三兩を加う。若し脇下痞鞕するは、大棗を去り、牡蠣(ぼれい)四兩を加う。若し心下悸し、小便利せざる者は、黄芩を去り、茯苓四兩を加う。若し渇せず、外に微熱有る者は、人參を去り、桂枝三兩を加え、温覆(おんぷく)して微(すこ)しく汗すれば愈ゆ。若し欬する者は、人參、大棗、生薑を去り、五味子半升、乾薑二兩を加う。