ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

80.太陽病(中)107条 柴胡加竜骨牡蠣湯 方意

 小柴胡湯をベースに見て行きます。

 小柴胡湯は、柴胡 黄芩 人参 半夏 生姜 大棗 炙甘草 の七味です。

 ここから炙甘草を除いて、竜骨 牡蛎 鉛丹 桂枝 茯苓 大黄を加えたものが柴胡加竜骨牡蠣湯です。

 ですので、先ずは少陽枢機を意識した方剤であることが分かります。

 今回、新たに登場しました竜骨 牡蛎 鉛丹について解説します。

 竜 骨

 竜骨は、古代の主に大型哺乳動物や種々の動物の化石だそうで、とんでもないものまで薬として使うのですね。

 気味甘渋平、薬徴では「臍下の動を主冶するなり。傍ら煩驚・失精を治す」とあります。

 新古方薬嚢では、「内を補い縮まりを緩め血気を調え和す、故に頭を休め気を落ち着かせ疲労を治する能あり」とあります。

 牡 蛎

 牡蛎は、カキの貝殻です。

 気味鹹渋微寒、薬徴では「胸腹の動を主冶するなり。傍ら驚狂・煩躁を治す」です。

 新古方薬嚢では、「乾きを潤ほし、血気の行を調え和す。故に胸脇下の痞へを柔らげ或いは寒瘧を治し或いは水気を除き又は驚きを鎮むる等の能をなす」とあります。

 鉛 丹

 鉛丹は、酸化鉛で朱色をしています。

 現代では、鉛丹は有毒であることが知られていますので、鉛丹を除いた方剤が用いられています。

 気味 辛微寒 有毒  

 薬徴には記載なく、新古方薬嚢では、「逆気を下し驚きを鎮む。故に内熱ありて吐逆し又は胃反し又は驚煩するを治す」とあります。

 

 これら竜骨・牡蛎・鉛丹の共通は、重量感のある薬剤である点です。

 気を下に降ろして鎮める、といったイメージでしょうか。

 牡蛎は「胸腹の動」竜骨は「臍下の動」ですから上焦・下焦の気を引き下ろすのでしょう。

 「臍下の動」といえば、奔豚を思わせますね。

 加えて茯苓が配されているので、動には水も関係していることが分かります。

 小柴胡去炙甘草で少陽枢機を開いておき、そして鉛丹と桂枝で上衝を治し、大黄で内熱を腑に導いて排泄するといった感じでしょうか。

 また茯苓、牡蛎、竜骨で気と熱の結びを解いて下に鎮める。

 少陽枢機が開くと、身体が重くて寝返りもできない状態は改善されます。

 茯苓・牡蛎で心の熱が清せられると、煩驚・讝語などの精神症状も治まり、茯苓・竜骨で結びが解ければ小便も通じて治癒に向かう訳ですね。

 このように想像してみましたが、みなさま、どうでしょうか。

  108条から111条までは、後人の攙入と思われますので、原文と読み下し文のみ記載しています。

 今回は、これまで。

【一〇七条】

傷寒八九日、下之、胸滿、煩驚、小便不利、語、一身盡重、不可轉側者、柴胡加龍骨牡蠣湯主之。方五十七。

傷寒八、九日、之を下し、胸滿、煩驚、小便不利、讝語(せんご)し、一身盡(ことごと)く重く、轉側(てんそく)す可からざる者は、

柴胡加龍骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)之を主る。方五十七

〔柴胡加龍骨牡蠣湯方〕

柴胡(四兩) 龍骨 黄 生薑(切) 鉛丹 人參 桂枝(去皮) 茯苓(各一兩半) 半夏(二合半洗) 大黄(二兩) 牡蠣(一兩半熬) 大棗(六枚擘)

右十二味、以水八升、煮取四升、内大黄、切如碁子、更煮一兩沸、去滓、温服一升。本云柴胡湯、今加龍骨等。

柴胡(四兩) 龍骨 黄芩 生薑(切る) 鉛丹(えんたん) 人參 桂枝(皮を去る) 茯苓(各一兩半) 半夏(二合半洗る) 大黄(二兩) 牡蠣(ぼれい)(一兩半熬る) 大棗(六枚擘く)

右十二味、水八升を以て、煮て四升を取り、大黄を切りて碁子の如きを内れ、更に煮て一兩沸し、滓を去り、一升を温服す。本云う、柴胡湯に今龍骨等を加うと。

 

【一〇八条】

傷寒、腹滿、語、寸口脉浮而緊、此肝乘脾也、名曰縱、刺期門。五十八。

傷寒、腹滿(ふくまん)、讝語(せんご)し、寸口脉浮にして緊なるは、此れ肝脾に乘(じょう)ずる也、名づけて縱(じゅう)と曰う、期門を刺す。五十八。

 

【一〇九条】

傷寒發熱、嗇嗇惡寒、大欲飲水、其腹必滿、自汗出、小便利、其病欲解、此肝乘肺也、名曰横、刺期門。五十九。

傷寒發熱、嗇嗇(しょくしょく)として惡寒し、大いに渴して水を飲まんと欲す、其の腹必ず滿す、自汗出で、小便利するは、其病解せんと欲す、此れ肝肺に乘ずるなり、名づけて横と曰う、期門を刺す。五十九。

 

【一一〇条】

太陽病二日、反躁、凡熨其背而大汗出、大熱入胃(一作二日内燒瓦熨背大汗出火氣入胃)、胃中水竭、躁煩必發語。十餘日振慄自下利者、此為欲解也。故其汗從腰以下不得汗、欲小便不得、反嘔、欲失溲、足下惡風、大便、小便當數、而反不數及不多。大便已、頭卓然而痛、其人足心必熱、穀氣下流故也。

太陽病二日、反って躁す、凡(およ)そ其の背を熨(い)すに、大いに汗出で、大熱胃に入る(一作二日内燒瓦熨背大汗出火氣入胃)、胃中の水竭(つ)き、躁煩し、必ず讝語を發す。十餘日にして振慄(しんりつ)し自下利(じげり)する者は、此れ解せんと欲すと為すなり。故に其の汗腰從(よ)り以下汗するを得ず、小便せんと欲するも得ず、反って嘔(おう)し、失溲(しっそう)せんと欲す、足下(そっか)惡風し、大便鞕(かた)く、小便當(まさ)に數(さく)なるべくして、反って數ならず、及び多からず。大便已(おわ)り、頭卓然(たくぜん)として痛み、其の人足心(そくしん)必ず熱す。穀氣(こっき)下流(かりゅう)するが故(ゆえ)なり。

 

【一一一条】

太陽病中風、以火劫發汗。邪風被火熱、血氣流溢、失其常度、兩陽相熏灼、其身發黄。陽盛則欲衄、陰小便難。陰陽倶竭、身體則枯燥、但頭汗出、劑頸而還。腹滿、微喘、口乾、咽爛、或不大便、久則語、甚者至、手足躁擾、捻衣摸牀。小便利者、其人可治。

太陽病中風、火を以て劫(おびや)かして汗を發す。邪風火熱を被(こうむ)り、血氣流溢(りゅういつ)し、其の常度(じょうど)を失す、兩陽(りょうよう)相(あ)い熏灼(くんしゃく)し、其の身黄(おう)を發すれば。陽盛んなれば則ち衄(じく)せんと欲し、陰虛すれば小便難(がた)し。陰陽倶(とも)に虛竭(きょけつ)すれば、身體則ち枯燥(こそう)し、但(た)だ頭汗(づかん)出でて、頸(けい)を劑(かぎ)りて還(かえ)る。腹滿し、微(かす)かに喘(ぜい)し、口乾き、咽(のど)爛(ただ)れ、或は大便せず、久しければ則ち讝語し、甚しき者は噦するに至り、手足躁擾(そうじょう)し、捻衣摸牀(ねんいもしょう)す。小便利する者は、其の人治すべし。