ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

109.太陽病(下)153・154条 大黄黄連瀉心湯

一五三条

太陽病、醫發汗、遂發熱、惡寒。因復下之、心下痞。

表裏倶、陰陽氣並竭、無陽則陰獨。

復加燒鍼、因胸煩、面色青黄、膚者、難治。

今色微黄、手足温者、易愈。

太陽病、醫汗を發すれども、遂に發熱、惡寒す。因りて復た之を下し、心下痞す。

表裏倶(とも)に虛し、陰陽の氣並びに竭(つ)き、陽無ければ則ち陰獨(ひと)りなり。

復た燒鍼(しょうしん)を加え、因りて胸煩す。

面色青黄(せいおう)、膚(はだ)瞤(じゅん)する者は、治し難し。

今色微黄(びおう)、手足温なる者は、愈え易し。

一五四条

心下痞、按之濡。其脉關上浮者。大黄黄連瀉心湯主之。方十七。

心下痞し、之を按じて濡(なん)。其の脉關上浮の者は。大黄黄連瀉心湯之を主る。方十七。

 

 153条と154条を並べて書いたのは、153条に後人の覚書が紛れ込んで、意味を理解するのに煩雑になると思いますので、ひとつの条文にして解説するためです。

 153条 太陽病、醫發汗、遂發熱、惡寒。因復下之、心下痞。

 154条 按之濡。其脉關上浮者。大黄黄連瀉心湯主之。

 上記の条文を一つにして意訳してみます。

 太陽病に罹り、医師が汗法を用いたところ、解熱するどころかさらに発熱・悪寒するようになった。

 その後、陽明病を思わせる証があったので下法を用いたところ、発熱・悪寒は去ったものの、心下痞が現れた。

 その心下を按じてみると、意外と柔軟である。

 そして脈を按じると、関上に浮脈が現れている。

 これは、大黄黄連瀉心湯証である。

 

 以上、あまり解説は必要ないと思います。

 ただ、わざわざ関上が脈浮ということから、中焦に何らかの邪実が存在していると推測できます。

 下法で駆逐しきれなかった、余邪が残っているとも理解できます。

 方剤を見てみましょう。

 

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 方剤は、僅か大黄・黄連の二味ですが、最下部に記しています大黄黄連湯方のなかで林億が指摘しているように、実は黄芩が欠落しているとの説があります。

 腹証奇覧では、心下のみの腹証ですが、腹証奇覧翼では心下から胸の下あたりにまで腹証が及んでいます。

 浅田宗伯(1815-1894)も、林億が言うように、黄芩・黄連のペアでないと瀉心湯にはならないとしているようです。

 荒木性次は、大黄黄連湯と大黄黄連黄芩湯(以下、三黄瀉心湯)とを使い分けています。

 大黄黄連湯は、本条の証候を目安に用いており、三黄瀉心湯は、吐血・衄血する者を目安に用いています。

 また、過度の勉強・囲碁将棋などして精神を疲れた場合に、三黄瀉心湯証が現れることがあるとも記しています。

 このあたりのことは、実際の臨床において医師の加減の範疇に入ると思います。

 復習もかねて、薬能を記して終わりに致します。

 

黄連 気味 苦寒 燥湿清熱
 薬徴:心中煩悸を主るなり。傍ら心下痞、吐下、腹中痛を治す。
 増補薬能:心熱を去る。


黄芩 気味 苦寒 燥湿清熱
 薬徴:心下痞を主治す。兼ねて胸脇満、心煩、嘔吐、下痢を治するなり。
 新古方薬嚢:熱を和し熱より生ずる心下痞、下痢、腹痛、身熱等を治すること黄連の如し。心煩の証は著しからず、これ黄連と異なる所なり。黄連は上部にゆくこと多く、黄芩は下部にゆく事多きものなり。


大黄 気味 苦寒
 薬徴:結毒を通利することを主る。
 新古方薬嚢:裏に熱ありて大便出でず便秘し又は下利するを治す。又腹痛、腹満を治す。或いは内に熱あり、胃に仕えありて吐する者を治す。或いは頭痛する者を治す。大黄の行く所は内に熱あるが主なれば小便の色濃く口中燥き又は目の中赤き者等多し。

 

〔大黄黄連瀉心湯方〕

大黄(二兩) 黄連(一兩)

右二味、以麻沸湯二升漬之、須臾絞去滓。分温再服。(臣億等看詳大黄黄連瀉心湯、諸本皆二味、又後附子瀉心湯、用大黄黄連黄附子、恐是前方中亦有黄、後但加附子也、故後云附子瀉心湯、本云加附子也。

大黄(二兩) 黄連(一兩)

右二味、麻沸湯(まふつとう)二升を以て之を漬(ひた)し、須臾(しゅゆ)にして絞り滓を去り。分かち温め再服す。(臣億等看詳大黄黄連瀉心湯、諸本皆二味、又後附子瀉心湯、用大黄黄連黄芩附子、恐是前方中亦有黄芩、後但加附子也、故後云附子瀉心湯、本云加附子也。)