ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

160.少陽病 263条~272条 少陽病の綱領から最終条まで。

【二六三条】

少陽之為病、口苦、咽乾、目眩也。

少陽の病為(た)る、口苦(にが)く、咽(のど)乾き、目眩(くるめ)くなり。

 いよいよ少陽病に入って参りました。

 この263条は、少陽病の綱領です。

 まずはこの条文、心下季肋部に鬱熱があるので口内が苦く感じて喉が乾燥し、左右差が生じるのでめまいを生じると述べられています。

 少陽病の方剤としては、小柴胡湯、大柴胡湯、柴胡加芒硝湯などのバリエーションがありますし、瀉心湯類や梔子豉湯類もある意味この少陽病位だと考えています。

 参考のため、ここまで記されている小柴胡湯に関する過去ブログを列記しました。

37.太陽病(中) 37条 太陽病、十日以去

70.太陽病(中)96条 小柴胡湯

101.太陽病(下)144条 熱入血室 小柴胡湯

143.陽明病 229条 小柴胡湯

 これらの事から、胸脇苦満、往来寒熱、黙々として飲食を欲せず、吐き気、心煩、耳聾、脈弦などを伴うことが分かります。

 方剤の中身を見てみます。

 柴胡、黄芩、人参、半夏、生姜、大棗、炙甘草です。

 柴胡・大棗で苦満を開き、人参で心下に水を集め、半夏で痰を解いて水にして生姜と黄芩で水湿熱を動かすという感じでしょうか。

 膈が開くので、腹部の邪がどこに移動して排出されるかは、その時々の素体の状態に依ることは、すでに述べた通りです。

 臨床的には、口苦や咽乾よりも、胸脇苦満、目眩、往来寒熱、心煩、ムカムカしてあ食欲が無いなどといった症候が現れることが多いように感じています。

 下記の264条にあります耳聾(じろう)に関しては、トンネルに入った時や水が耳に入った時のように耳に蓋をされたかのように、何となく聞こえにくいというものが多いように思います。

 また咽乾ですから、大抵は口が粘るとか飲水を欲するということも、ほとんど無いように思います。

【二六四条】

少陽中風、兩耳無所聞、目赤、胸中滿而煩者、不可吐下、吐下則悸而驚。

少陽の中風、兩耳聞く所無く、目赤く、胸中滿ちて煩する者は、吐下すべからず。吐下すれば則ち悸して驚す。

 往来寒熱に関しましては、はっきりと高熱と悪寒が往来するケースから、なんとなく身体がカーッと熱く感じたかと思うと、なんとなくうすら寒いといったケースまで、かなりバリエーションがあります。

 脈も同様です。

 浮いているかのようでも、少し按じると弦細となるものから、いきなり中位くらいで弦細に触れることもありますし、さらに按じると滑が現れる場合もあります。

 病理さえしっかりとつかんでいれば、いわゆる太陽と陽明にまたがるような症候ですので、このあたりを意識して判断してくださればと思います。

 265条の頭痛に関しては、側頭少陽部位に、やはり痛みが現れることが多いです。

 片側の時もありますし、両側の時もあります。

 また頭痛の範囲も、頭頂方向から面部、太陽後頭部まで大きく現れる場合がありますので、他の症候を参伍してしっかりと鑑別・治療して頂けたらと思います。

【二六五条】

傷寒、脉弦細、頭痛發熱者、屬少陽。少陽不可發汗、發汗則讝語。此屬胃、胃和則愈。胃不和、煩而悸(一云躁)。

傷寒、脉弦細(げんさい)、頭痛發熱する者は、少陽に屬(ぞく)す。少陽は汗を發すべからず。汗を發すれば則ち讝語す。此れ胃に屬す。胃和すれば則ち愈ゆ。胃和せざれば、煩して悸す(一云躁)。

 

 次いで266条ですが、太陽病から陽明に入る前に少陽に入る場合のことを述べたものです。

【二六六条】

本太陽病不解、轉入少陽者、脇下鞕滿、乾嘔不能食、往来寒熱、尚未吐下、脉沈緊者、與小柴胡湯。方一。

本(もと)太陽病解(げ)せず、轉じて少陽に入る者は、脇下(きょうか)鞕滿(こうまん)し、乾嘔(かんおう)して食すること能わず、往来寒熱す。尚お未だ吐下せず、脉沈緊の者は、小柴胡湯を與う。方一。

 もう、解説は必要ないと思います。

 そして267条ですが、誤治によって壊病となってしまった場合についての記述です。

【二六七条】

若已吐、下、發汗、温鍼、讝語、柴胡湯證罷、此為壞病、知犯何逆、以法治之。

若し已(すで)に吐し、下し、發汗し、温鍼し、讝語し、柴胡湯の證罷(や)むは、此れを壞病(えびょう)と為(な)す、何れの逆を犯すかを知り、法を以て之を治す。

 柴胡湯証が消えてしまって、それでも病が治らないのであれば、当初に戻って何を根拠に証を立てて治療したかを振り返って、何を間違えたのかを明らかにしなさいと言っています。

 そうすると、「今現在の病態」が浮かび上がってくるので、その上で再度治療を施しなさいと言う事だと思います。

 あってはならないことですが、時に判断を誤ることがあります。

 逆治の責任を取ることのできる治療をするべきですね。

 268条以下は、原文と読み下し文のみの記載です。

 これで一気に少陽病を駆け抜けまして、次回からは太陰病です。

 

〔小柴胡湯方〕

柴胡(八兩) 人參(三兩) 黄芩(三兩) 甘草(三兩炙) 半夏(半升洗) 生薑(三兩切) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。

柴胡(八兩) 人參(三兩) 黄芩(三兩) 甘草(三兩、炙る) 半夏(半升、洗う) 生薑(三兩、切る) 大棗(十二枚、擘く)

右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り、一升を温服し、日に三服す。

 

【二六八条】

三陽合病、脉浮大、上關上、但欲眠睡、目合則汗。

三陽の合病、脉浮大にして、關上に上り。但だ眠睡(みんすい)せんと欲し、目合(がっ)すれば則ち汗す。 

【二六九条】

傷寒六七日、無大熱、其人躁煩者、此為陽去入陰故也。

傷寒六、七日、大熱無く、其の人躁煩する者は、此れ陽去りて陰に入るを為(な)すが故なり。

【二七〇条】

傷寒三日、三陽為盡、三陰當受邪。其人反能食而不嘔、此為三陰不受邪也。

傷寒三日、三陽盡(つ)くると為す、三陰當に邪を受くべし。其の人反って能く食して嘔せざるは、此れ三陰邪を受けずと為すなり。

【二七一条】

傷寒三日、少陽脉小者、欲已也。

傷寒三日、少陽脉小なる者は、已(や)まんと欲するなり。

【二七二条】

少陽病欲解時、從寅至辰上。

少陽病解せんと欲する時は、寅(とら)從(よ)り辰(たつ)の上に至る。