ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

171.少陰病 304条・305条 附子湯と真武湯

【三〇四条】

少陰病、得之一二日、口中和、其背惡寒者、當灸之、附子湯主之。方四。

少陰病、之を得て一、二日、口中和し、其の背惡寒する者は、當に之を灸すべし。附子湯之を主る。方四。

 少陰病となって1・2日経過したところ、背中が悪寒するのだが、口内は乾燥や口渇も無く食べ物の味もよく分かり、胃気も和しているという病態です。

 これだけでは、今ひとつ病態がよく見えません。お灸しなさいとありますが、どこに、何を目標に施灸すれば良いのか、皆目見当がつきませんね。

 大塚敬節は、条文中に「口中和」とわざわざ書いているのは、白虎加人参湯の「其背悪寒者」との鑑別を促すためだと述べています。

 白虎加人参湯は、陽明経証ですから口渇や身熱など、熱証が明確ですよね。

 ちょっと振り返りをして下さいね。

 23.太陽病(上)26条 白虎加人参湯 煩渇

121.太陽病(下)169条 白虎加人参湯ー背微悪寒

 

 では、附子湯の配剤をみてみましょう。

 主薬は、やはり何といっても附子でしょう。 

 附子は気味辛大熱ですから、下焦の水を弾き飛ばすと言ったイメージです。

 腎陽が、水で阻まれて条達できない状態です。

 そして「悸及び肉瞤筋愓を主冶」の茯苓。

 白朮は「水を利するを主る。故に能く小便の自利・不利を治す」

 人参は「心下痞堅 痞寇 支結を主治」

 芍薬は「結実して拘攣するを主治」

 上記はすべて薬徴の記載そのままです。

 人参で全身の水を中焦に集め、茯苓・白朮で水と気の結びを解き、炮附子で下焦の水を気化する。

 芍薬は、何を目的に配されているのでしょう。

 真武湯証をみてください。

 67.太陽病(中)82条 真武湯 83~90条

 図を再掲します。

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 腹部に「拘攣」とありますよね。

 82条の解説で、悸は茯苓が行くところ、拘攣は芍薬の行くところで、両薬で結びを解くと考えています。

 ちなみに、真武湯と附子湯は生姜と人参の違いですので比較してみます。

真武湯

茯苓3 芍薬3 白朮2 炮附子1枚 生姜3

附子湯

茯苓3 芍薬3 白朮4 炮附子2枚 人参2

 このように比べてみると、分かりやすいですね。

 附子湯は炮附子2枚、白朮倍量、そして人参です。

 真武湯証に比べて、痰飲が非常に厳しく、背の微悪寒も心下で水が結んで痞鞕しているためだとわかりますね。

 浮腫や目眩、動悸・息切れなどがあってもおかしくはありません。

 そうしますと、以下の305条も見えてくると思います。

【三〇五条】

少陰病、身體痛、手足寒、骨節痛、脉沈者、附子湯主之。五(用前第四方)。

少陰病、身體(しんたい)痛み、手足寒(ひ)え、骨節(こっせつ)痛み、脉沈の者は、附子湯之を主る。五(前の第四方を用う)。

 手足が厥冷して体中が痛み、関節痛もある訳ですね。

 もし、施灸するのでしたら、どこを目標に致しましょう。

 まずは下焦を温めて、心下痞鞕が変化するようだとそれでよいと思います。

 今ひとつ動きが悪いようでしたら、その後に中焦を温めてますかね。

 これだけで病理機序や病の深浅が分かります。

 附子湯証に陥る病理機序を考えてください。

 冷飲水が長期に渡って過ぎた場合、寒水は中焦から下焦に及びますよね。

 その上寒冷地であるとか、コンクリートの上で長時間作業する ー 例えば板前さんなどの場合は、下焦の冷えから中焦に及んで、このような病態に陥るのではと想定できますね。

〔附子湯方〕

附子(二枚炮去皮破八片) 茯苓(三兩) 人參(二兩) 白朮(四兩) 芍藥(三兩)

右五味、以水八升、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。

附子(二枚、炮じて皮を去り、八片に破る) 茯苓(三兩) 人參(二兩) 白朮(四兩) 芍藥(三兩)

右五味、水八升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、日に三服す。