ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

178.少陰病 314条 白通湯

【三一四条】

少陰病、下利、白通湯主之。方十三。

少陰病、下利(げり)するは、白通湯(はくつうとう)之を主る。方十三。

  この条文、あまりに短すぎて病態がよく分かりません。

 そこで後述しています方剤の中身を見てみますと、葱白、乾姜、生附子の三味です。

 葱白は、ネギの根に近い白い部分です。

 葱白 気味 辛温
中医学:散寒解表 通陽散寒
新古方薬嚢:葱白気味辛温、陽気を助け寒熱中風下利等を治す。

 竹のように節が無いためでしょうか、陰陽が交流しない陰寒内盛・格陽に用いられています。

 そしてともに辛温の乾姜と生附子は、水を動かす薬能があります。

 乾姜、生附子と言えば、乾姜附子湯がすでに登場していました。

 51.太陽病(中)61条 乾姜附子湯

 乾姜附子湯から、下痢に加えて小便不利が存在していることが分かります。

 また、寒水に阻まれて陰陽が交流できないのですから、昼日煩躁がありますので、上焦に鬱した熱が存在するかもしれません。

 また乾姜、生附子に炙甘草を加えると、急迫症状の現れる四逆湯になります。

 69.太陽病(中)91・92条 四逆湯(2)真寒水仮熱・裏水仮熱?

 この場合も、下痢症状がありますが、真寒仮熱の症状があります。

 乾姜附子湯と四逆湯の違いは、昼日煩躁と真寒仮熱でしょうか。

 そして乾姜、生附子に葱白を加えたものが、本条白通湯ですから、中医学で述べられているように、寒水に阻まれて陰陽が交流しない状態だと考えられます。

 このあたりに関しては、<類聚方広義>に、「下利し、腹痛し、厥し、頭痛するを治す」とありますので、この頭痛は、陽気が降りることが出来ずに鬱した熱によるものと理解されます。

 もう少し<類聚方広義>の注釈を見てみます。

 この白通湯には、「人尿五合」の四文字が脱しているとあります。

 次の315条の白通加猪胆汁湯方には、「人尿五合」とあるのでおそらく伝写の間違いであろうとしています。

 さらに四逆湯証の完穀下痢と比較して、白通湯の下利はやや緩慢で大汗、四肢拘急などの急迫した症状は無いとも述べられています。

 人尿に関しては、無病の童子でまだ穀を食する前のものを用いると記されています。

 <新古方薬嚢>では、「人の小便のことなれ共普通小児、男子のものを用ふべし。特に男児12歳以下のものが宜し。

 人尿は、よく体中を巡りたる経験者なればなり、故に津液の行り宜しからざる際に用ひらる。」 とあります。

 人尿を加えることの是非は分かりませんが、「人尿は、よく体中を巡りたる経験者」などという<新古方薬嚢>の考え方は、まさに方術家的な感覚ですね。

  

〔白通湯方〕

葱白(四莖) 乾薑(一兩) 附子(一枚生去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、分温再服。

葱白(そうはく)(四莖) 乾薑(一兩) 附子(一枚、生、皮を去り、八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、分かち温め再服す。