ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

181.少陰病 318条 四逆散

【三一八条】

少陰病、四逆、其人或欬、或悸、或小便不利、或腹中痛、或泄利下重者、四逆散主之。方十七。

少陰病、四逆し、其の人或は欬(がい)し、或は悸(き)し、或は小便不利し、或は腹中痛み、或は泄利(せつり)下重(げじゅう)する者は、四逆散之を主る。方十七。

 この四逆散証が、なぜ少陰病篇に入っているのか、しかも劇症の少陰病・通脈四逆湯証の後に記載されているのでしょうか。

 諸説あります。

 まずは、配剤をみてみましょう。

甘草 気味 甘微温
:急迫を主冶するなり。故に裏急、急痛、攣急するを治する。傍ら厥冷、煩躁、衝逆等の諸般の急迫の毒を治す。

枳実 気味 苦寒
薬徴:結実の毒を主冶するなり。傍ら胸満・胸痹・腹満・腹痛を治す。
新古方薬嚢:熱をさまし、しこりを消すの効あり。又痛みをゆるめ腫を去る、故に諸の熱実病、又は癰腫等を治するにもちひらる。

柴胡 気味苦平
薬徴:胸脇苦満を主冶するなり。傍ら寒熱往来、腹中痛、脇下痞鞕を治す。
新古方薬嚢:半表半裏の熱を去る。
中薬学:半表半裏の邪を疏散して透表泄熱し、清陽の気を昇挙し、肝気を疏泄して欝結を解除する。

芍薬 気味酸微寒
薬徴:結実して拘攣するを主治し、傍ら腹痛、頭痛、身体不仁、疼痛、腹満、咳逆、下痢、腫膿を治すと。
新古方薬嚢:結実とは凝りのことなり。拘攣とは引かれ引きつらるるを謂うなり。芍薬はよくたるみたるを引きしめ痛みを除くの効あり。結実も拘攣も弛みよりくるものと見るべし。

 ざっくり見ると、季肋部を中心として緊張のある腹部がイメージできませんでしょうか。

 条文中の「四逆」四肢の冷えは、心下・季肋部で陽気が阻まれて動けなくなって生じていることが分かります。

 これを枳実で破り、甘草で緩め、柴胡で開き、芍薬で集めた陰気と共に四肢全身に行らそうとする方剤であることが見えてくると思います。

 そうしますと、咳、悸は熱が上衝して起き、泄利下重は熱痢、小便不利や腹中痛は、心下・季肋部の気滞によって危機が失調して生じたものであることが見えてきます。

 どちらかというと実証で、少陽病に近いように思えますがどうなのでしょう。

 この四逆散証、急激な緊張状態で生じることがあります。

 ところが、同じ緊張をしても四逆散の証候が現れる人とそうでない人がいます。

 そのように考えますと、やはり陰陽の幅が狭い人に生じる証とも考えられます。

 ここでは、脉証について触れられていませんが、四逆しているのですから脈は沈んでいるはずです。

 そして枳実・柴胡で気を破って通じさせるわけですから、脈は沈んでいても有力に感じるはずです。

 臨床的には、結構多くみられる脉証で、こころに思うところがあって解けず、思い煩って葛藤している時などによく現れます。

 条文に、先ほど挙げました兼症がありますが、裏に熱結して四肢に陽気が達しないのですから、素体によって冷え性であるのにのぼせやすいとか、頭痛や四肢の痛み、月経痛など、どんな症状が出てもおかしくは無いですね。

 応用範囲の広い方剤です。

 色々と想像してみてください。

 例えば月経前になると冷えを感じるが、食欲は更新してイライラとし、初日から出血が多く、生理が終わると良くなるなどです。

 虚が無ければ、百会もしくは合谷瀉法などは、筆者の常套手法です。

 一気に脈が浮いて症状が緩解して参ります。

 血虚の程度がひどくなければ、色あせたような淡白っぽい舌色も、一気に鮮やかな淡紅舌に変化します。

〔四逆散方〕

甘草(炙) 枳實(破水漬炙乾) 柴胡 芍藥

右四味、各十分、擣篩、白飲和服方寸匕、日三服。欬者、加五味子、乾薑各五分、并主下利。悸者、加桂枝五分。小便不利者、加茯苓五分。腹中痛者、加附子一枚、炮令坼。泄利下重者、先以水五升、煮薤白三升、煮取三升、去滓、以散三方寸匕、内湯中、煮取一升半、分温再服。

甘草(炙る) 枳實(破りて水に漬(ひ)たし、炙り乾かす) 柴胡 芍藥

右四味、各々十分を擣(つ)き篩(ふる)い、白飲もて和し、方寸匕(ひ)を服し、日に三服す。欬する者は、五味子、乾薑各々五分を加え、并(なら)びに下利を主る。悸する者は、桂枝五分を加う。

小便不利の者は、茯苓五分を加う。腹中痛む者は、附子一枚を加え、炮じて坼(き)かしむ。泄利下重の者は、先ず水五升を以て、薤白(がいはく)三升を煮、煮て三升を取り、滓を去り、

散三方寸匕を以て、湯中に内れ、煮て一升半を取り、分かち温め再服す。