ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。

195.厥陰病 370・371条 白頭翁湯

【三七〇条】

下利清穀、裏寒外熱、汗出而厥者、通脉四逆湯主之。方十一。

下利清穀、裏寒外熱し、汗出で厥する者は、通脉四逆湯(つうみゃくしぎゃくとう)之を主る。方十一。

 通脈四逆湯に関しては、すでに317条で詳しく解説していますので、ここでは省略いたします。

180.少陰病 316・317条 真武湯・通脈四逆湯

 

三七一条】

熱利下重者、白頭翁湯主之。方十二。

熱利(ねつり)して下重(げじゅう)する者は、白頭翁湯(はくとうおうとう)之を主る。方十二。

 冒頭にいきなり熱痢と記されています。<中国漢方医語辞典>では熱瀉で記載がありますのでそのまま記します。

 「熱迫大腸(熱が大腸に迫る)によって引き起こされる❝火瀉❞ともいう。

 主要な症状は、粥(かゆ)のような黄と白のまざったものを下す、あるいは粘り気を帯び悪臭を放つ、腸がゴロゴロ鳴り腹が痛み、ひとしきり痛むとひとしきり下し、下した後には後重感がある。

 肛門は灼(やけ)るように熱く、小便は短くて赤い、口は渇き、舌苔は黄色、脈象は数などである。」

 下利には軽重バリエーションがありますので、熱の性質を考慮して下痢の状態を想像できると、日常の臨床で遭遇する単純な下利も、寒熱・虚実の鑑別が容易になります。

 熱ですから、便臭はきつく感じるでしょうし、肛門も熱く感じます。

 また下した後に気が抜けたようになるのは虚、すっきりとするのは実です。

 ここは、生体の正気の状態によってあいまいなグレーゾーンもありますので、その場合は他の証候と参伍して決定します。

 さて、白頭翁湯の下利ですね。

 例によって方剤をみてみます。

白頭翁 気味 苦寒
中薬学:清熱解毒・涼血止痢
薬徴:熱痢下重を主治するなり。若し熱痢、渇して心悸すれば、則ち白頭翁湯を用ふるなり。
新古方薬嚢:味苦温熱性の下利を治す。熱ありて腹しぶる者、腹脹る者、或は便血する者等を治す。本薬には解熱収斂性あるものの如し。

秦皮 気味 苦渋寒
中薬学:清熱燥湿 渋腸止痢 清肝明目
本草綱目:秦皮味苦微寒、風寒濕痺洗洗として寒気するを主り熱と目中の青翳白膜を除く、久服すれば頭白からず身を軽くす。
新古方薬嚢:微寒は熱を冷やし、苦は充血を去る。故に白頭翁に入りて諸薬に合して熱利下重を治す。

黄檗 気味 苦寒
中薬学:清熱燥湿 清熱瀉火 清熱解毒
新古方薬嚢:血熱を去り、下痢を止め、腹痛を治す。又黄疸を治す。何れも熱を除くが本薬の主る所なり。金匱要略にては黄蘗を自死せる六畜の肉を喰らひ其の毒に中りたる者を治するに用ゆ。

 黄連 気味 苦寒 燥湿清熱

薬徴:心中煩悸を主るなり。

 白頭翁をみると、血便とありますので営分や血分の深い熱を清する働きがあるように思えます。

 また黄蘗は、腸内の糞便の腐敗が進んだ湿熱を清する働きとも考えられます。

 意外なのは心熱を清する黄連が配されているので、熱痢下重に心中煩悸の症状があってもおかしくないですね。

 そして今ひとつはっきりと分からないのが秦皮です。

 どうも目・白髪など、上焦の症状が記されていますので、黄連とペアとも考えられます。

 <類聚方広義>をみますと、「熱利下重して心悸する者を治す」とあります。

 やはり、心悸症状を伴っているのですね。

 そしてその傍注に「貉丘岑(みなかくきゅう)先生曰く、かつて甲斐に在りし時、痢疾流行す。患いに嬰(ふれ)ざらぬ者無し。

 その症、大便毎に肛門灼熱すること火の如し。この方を用いて多く効有り。」

 「眼目鬱熱を治す。赤く腫れ陣痛風にて涙止まらざる者、また洗蒸剤を為すもまた効有り」と記されています。

 これらから、白頭翁湯の熱痢は、かなり熱の厳しい下利で、その熱は心神にまで影響していることが分かります。

 また白頭翁湯を外用剤として用いて効を取っているのも、発想としてすばらしいものを感じます。

 湿熱タイプの皮膚炎などに、黄連解毒湯などを外用剤にしてみたら・八味地黄丸を命門や神厥・関元に貼り付ければどうだろうという発想にもつながりますね。

 面白いですね。

 それはそうとして、白頭翁湯がなぜ厥陰病に入れられているのか・・・謎です。

 

〔白頭翁湯方〕

白頭翁(二兩) 黄檗(三兩) 黄連(三兩) 秦皮(三兩)

右四味、以水七升、煮取二升、去滓、温服一升。不愈、更服一升。

白頭翁(はくとうおう)(二兩) 黄檗(三兩) 黄連(三兩) 秦皮(しんぴ)(三兩)

右四味、水七升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。愈えざれば、更に一升を服す。