ブログ『鍼道 一の会』

『鍼道 一の会』は、「福祉への貢献」を目的に、「伝統医学」を規範に、「鍼灸」を手段に、「大阪市」を本拠地に据え、活動を続けている団体です。当ブログ内の一切の著作権は一の会に在ります。流用される方はご一報ください。

2019年度の東洋医学講座を振り返って

こちらではどうもお久しぶりです、『鍼道一の会・東洋医学講座』の座長・稻垣です。

 

先日、今年度の予定分が、無事に終了しました。

そこで、今年度の内容をボンヤリと振り返っていたのですが、先ほど急に、今年度から講師の一人を務めてくださっている尾関先生のある言葉が思い出されました。

それは、「ある勉強会で偉い先生が『“経筋”の異常は“脈”には出ない』とおっしゃったんですけど、稻垣先生は『脈には全てが出る』と言わはった。それを聞いて、僕は、『一の会を続けよう』と思えました」というようなものでした。

本当にありがたいお言葉です。

尾関先生の経験・信念・感覚などと、僕の主張が、幸いにも合致したということなんでしょうねぇ。

 

さて、「経筋の異常は本当に脈に出るのか?」という話ですけど……これ、単純に、実際に試してみたら良いと思うんですよね。
古典をひも解いて、その解釈を巡って議論せずとも、実在する人間の体を使って実験してみたら、正解はすぐに分かることであるはずなんですよね~。

 

今、この投稿を読んでくださっているあなたさまが、『鍼道 一の会』で説明している“脈診”の要点をマスターしている前提で話を続けますと、全身を一度リラックスさせてもらってから、足関節の伸展を続けながら脈を診る、足関節の屈曲を続けながら脈を診る、ということをしてもらったら、どこの何がどう変わっているかの説明は勉強会へ譲るとして、変化していること自体は感じてもらえると思うんですよね。
たったこれだけの差でも影響は出るんですから、「経筋の異常も必ず脈には表現される」と言って良いのではないかと考える次第です。

 

『鍼道 一の会』では今後もこのように、実証主義的な姿勢を大切にして、“鍼灸のための東洋医学”の構築に励んでいきたいと思います。

 

膝陽関穴 考(4)完結 沢田流「鍼灸治療基礎学」から

 資料画像は、昭和の時代を席巻しました澤田流、「鍼灸治療基礎学」(医道の日本社)からです。

 順番に見て行きましょうか。

 先ず紫線のところです。

<甲乙経に「禁じて灸すべからず」>

<医学入門に「鍼を禁ず」>

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<甲乙経に「禁じて灸すべからず」> <医学入門に「鍼を禁ず」>

 ここは、古人がこの穴所を用いて、大きな失敗をした経験から書いたものであると認識するのが良いと考えてます。

 おおよそ禁鍼・禁灸穴とされてるのは、用いて失敗した経験からそのように記されているのであって、経穴として存在している以上、用い方さえしっかりと認識しておれば、恐れずに足りずだと思ってます。

 これは、湯液の世界でも同じだと思います。

 鍼も経穴も方薬も、すべて兵であって、それを率いる将軍が兵を恐れて用いないのであれば、戦いの結果は自ずと知れるというものです。

 ただね、兵の性格や状態をよくわからずに、これを安易に用いることは厳禁ですよね。

 兵の性格をよ~く知り抜いて、時宜(じぎ)を心得て用いるのが名将ですよね。

 

 赤線のところに参ります。

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赤線部分 膝陽関と腰陽関の関係性

 膝陽関と腰陽関の関係性が記されてますよね。

 経絡学的には、仙骨周囲は足の三陽経すべてが流注してます。

 その中心である督脈は、左右の枢ですから左右の気機は足少陽がこれを主ります。

 また腰陽関の両傍は、大腸兪ですね。

 肺気がここまで下り及んでくるところですね。

 つまり天地相交、肺腎が相交するところです。

 

 次に青線です。

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寒府・足陽関と、熱府・風門との時空間的な関係

 寒府・足陽関と、熱府・風門との時空間的な関係が説かれてますよね。

 大序穴と足陽明下合穴も時空間的な相関性があります。

 これはまた、いずれ稿を改めて書きたいと思います。

 

 ここまで来ると、おおよそ身体全体を捉えた上での膝陽関が見えてこないでしょうか。

 たとえば湿熱が下焦で内蘊した腰痛症などで、腰陽関に顕著な圧痛と熱感があったとします。

 これ取穴を上に取るか下に取るかですよね。

 ここは病理機序に依りますよね。

 実証を前提とした例をあげてみます。

 湿熱内蘊が、氣逆・気滞によって相対的に上実下虚となり、下焦に湿熱が下って起きているのなら、まず上に取って気を下してから腰陽関・大膓兪の変化を見ればいいですよね。

 その上で、いくらか腰陽関・大膓兪が動いたのだけれども、今ひとつすっきりとしないのであれば、陰邪である湿熱を下に引いて降ろせば良いわけです。

 その際、陰陵泉に取るのか、足の下合穴に取るのか、

 それとも帯脉そのものを動かすために足臨泣に取るのか、

 それはその時々の患者の状態によって適時選穴すれば良いわけです。

 そしてこの寒府・膝陽関です。

 腰は内因としての湿熱、下は外因としての寒湿。

 仮にこの両者が、ここ寒府・膝陽関でせめぎ合ってるとすれば、ここに補瀉を加えて腰痛を治すことも可能ですよね、理屈上は。

 後はこれらを想定して、実際に用いて確認すれば、針箱の中に寒府・膝陽関が納まることになります。

 

 最後の青線の「壊症」というのは、傷寒論的な壊病のことでしょう。

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青線「壊症」

 誤治によって正証を離れてしまったものです。

 たとえば太陽表証で、桂枝湯を用いるべきところに麻黄湯を用いて、汗が止まらなくなって少陰病にまで落ちたとか、下すべき証ではないのに下したことによって訳が分からなくなってしまった状態です。

 傷寒論では、何の逆(誤治)を行ったのかをまず知り、もう一度証を立て直してこれを治しなさいと記されています。

 辨太陽病脉證并治上 16条

 太陽病三日、已發汗、若吐、若下、若温鍼、仍不解者、此為壞病、桂枝不中與之也。

 觀其脉證、知犯何逆、隨證治之。

 <太陽病三日、已に發汗し、若しくは吐し、若しくは下し、若しくは温鍼し、仍(な)お解せざる者は、此れ壞病(えびょう)と為す、桂枝之を與(あた)うるに中(あた)らざるなり。

 其の脉證を觀て、何の逆を犯すかを知り、證に隨いて之を治す。>

 

 何の逆をやってしまったのかを知るためには、意図的な鍼をする必要がありますね。

 瀉して悪化したのなら、補えば良い訳ですし、

 補して悪化したのなら、瀉せば良いですよね。

 鍼の妙味は、補瀉にあり。

 

 寒府・膝陽関シリーズはこれまでです。

 針箱に、うまく納まりましたでしょうか。

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鍼灸治療基礎学 医道の日本社 P250・251

 

膝陽関穴 考(3) 中国鍼灸穴位通鑑 論考 P1462

 再度<中国鍼灸穴位通鑑>の「帰経と穴性」のところを抜粋して再掲します。

 

帰経と穴性

① 鼠瘻の寒熱は、還りて寒府を刺す。 <素問・骨空論>

② 膝の外廉痛み、屈伸すべからざす、經痺れ不仁するは、陽関これを主る。<鍼灸甲乙経><備急千金要方><医心方><普済方>等

③ 梁丘、曲泉、陽関は、筋攣し、膝屈伸を得ず以て行くべからざるを主る。

④ 膝の外廉痛み、屈伸すべからず、脛痺れて不仁す。<外台秘要>

⑤ 風痹不仁、膝痛みて屈伸すべからずを主る。<古今医統大全><鍼灸大成><鍼灸指南><中華鍼灸学>

⑥ 膝頭紅腫し、屈伸すべからず、鶴膝風の毒等の証<循経考穴編>

⑦ 風痹不仁し、股膝冷痛し、屈伸すべからず。<類経図翼><勉学堂鍼灸集成>

 

 ①の鼠瘻(そろう)というのは、鼠径部の瘰疬(るいれき)なので、ここはちょっと病理が浮かんできますね。

 寒痰か熱痰のどちらかが鼠径部で阻塞してるのですから、これを寒府・膝陽関に引いて補瀉すればいいですね。

 それなら、なにも膝陽関で無ければならないという訳でもないですよね。

 ⑤の風痹というのは、外邪によるの関節炎ですね。不仁とありますから、知覚麻痺を起こしてるのですね。

 外邪としては、風・寒・湿が混じり合って下焦から入ってきたのでしょうね。

 ⑥の膝頭紅腫は、赤く腫れているのですから熱証ですね。

 熱痺などが想定できますね。

 そして鶴膝風(かくしつふう)というのは、文字通り膝関節の上下の肉が削げて膝関節がまるで鶴の足のようになっているものを形容したものです。

 おおよそ、肝腎陰虚の熱証の素地に、やはり風・寒・湿の外邪が侵襲して生じたものでしょう。

 まっ、おおよその病理が想定できるものもありますが、身体全体をとらえた上での治療ではないですね。

 やはり、局所治療の域を出ないと言いますか。

 たとえば、寒府・膝陽関で頭痛とか顔面神経痛とかの治効なんかが記載されておれば、おぉ~、全体を見据えてるなぁ。どういった視点で見ていたんだろうって、あれこれ想像が膨らんで学びになりますよね。

 病に相対して、我々が先ず以て知りたいのは、少なくとも八綱です。

 これが定まらないと、鍼の妙味、補瀉が定まらないからです。

 ただ、これらの記載でもわかるように、局所治療でも一定の治効をあげてることがわかります。

 これだと民間療法として使えるだろうし、貧しい庶民にも貢献したのでしょう。

 現に筆者が郷里で開業したての頃、ほとんどの年寄りの肩や背中には、灸痕がありましたから。

 熱いだけなら、誰もやりませんよね。やはり、楽になったのだと思います。

 これはこれで良いと思います。

 ですがちょっと深い病ともなりますと、そうは参りません。

 さて、膝陽関と全体性を関連付けるもの、想定できるものを探してみました。

 

                     続きます。

膝陽関穴 考(2) 中国鍼灸穴位通鑑 P1642より

 前回は、<素問・厥論45>に目が留まったことがきっかけで、膝陽関の穴性と言いますか、どのような病態の時に、どのように使えばいいのか、興味が起きてきたことを書きました。

 そこでまずは経穴そのものを調べてみることにしました。

 参考書は、中国鍼灸穴位通鑑 青島出版社 です。

 初版が1994年ですので、もうずいぶんと古いものですね。

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 当時世界最強と言われた書物で、中国に現存する古今東西の文献をすべて網羅したものです。
 中国って、すごいですよねぇ~、国家規模でこういうことやるのですから。

 新型コロナウイルスの中医薬による治療にしても、このような文献に関しても中国には太刀打ちできませんよね。

 まあ、それは何と言っても、中国と日本の医療制度が大きく異なるので、仕方ないとも言えばそれまでなのですが。

 さあさて、その中身を抜粋して翻訳して記してみます。

 

 中国鍼灸穴位通鑑 P1642

   膝陽関

出処
陽関、在陽之陵泉上三寸、犢鼻外陥者中 <鍼灸甲乙経>


別名
1.寒府 <黄帝内経素問・骨空論>
2.関陽、関陵 <備急千金要方>
3.一名陽陵<鍼灸聚英><古今医統大全><鍼灸大成><鍼灸逢源><鍼灸指南>

穴名釈義


1.陽関は、膝関節の外側で陽に偏重する。ゆえに陽関と名づけられた。
 また陽陵は陽経に在って陰精に通じ、膏沢を化して関節の中に注ぐところである。陵は関節の深いところの骨が高く隆起して外に現れることに象る。ゆえにまた陽陵の名づけられた。


2.穴は胆経に属し、位置は陽陵泉の上三寸、膝関節の外側陥中に相当する。外は陽と為す。よって陽関と名づけられた。


3.本穴はまさに膝関節の外側である。よって「陽関」と名づけられる。陽側の膝関であることの意味を指示したものである。


4.本穴は、<甲乙経>に最も早く見られ、称して「陽関」と爲しているが、督脈の腰陽関とは別のところであり、最近では「膝陽関」と称せられ、足少陽胆経に属している。
 <甲乙経>第三巻では、「陽陵泉の上三寸、犢鼻の外、陷なる中に在りと言う。
 以下、省略

部位 省略


帰経と穴性
1.鼠瘻の寒熱は、還りて寒府を刺す。 <素問・骨空論>


2.膝の外廉痛み、屈伸すべからざす、經痺れ不仁するは、陽関これを主る。    <鍼灸甲乙経><備急千金要方><医心方><普済方>等


3.梁丘、曲泉、陽関は、筋攣し、膝屈伸を得ず以て行くべからざるを主る。


4.膝の外廉痛み、屈伸すべからず、脛痺れて不仁す。 <外台秘要>


5.風痹不仁、膝痛みて屈伸すべからずを主る。   <古今医統大全><鍼灸大成><鍼灸指南><中華鍼灸学>


6.膝頭紅腫し、屈伸すべからず、鶴膝風の毒等の証 <循経考穴編>


7.風痹不仁し、股膝冷痛し、屈伸すべからず。 <類経図翼><勉学堂鍼灸集成>


8.以下省略

 

 読者諸氏、さっと目を通して頂いてどのようにお感じになられましたでしょうか。

 「一の会」では、身体を時空間と捉えますので、このままではこの経穴の位置的意味がもう一つ明確になりません。

 次回、もう少しこの<中国鍼灸穴位通鑑>の中身を吟味してみましょうか。

 

                          続きます。

膝陽関穴 考(1) 素問・厥論より

 世界は今、新型コロナウイルスで騒然とした世相を呈してますね。

 そんな中、アフリカではバッタが大量発生してるとのニュースを目にしました。
natgeo.nikkeibp.co.jp

 地球規模でいったい、なにが起きてるのでしょうねぇ。

 

 さて先日、江見木綿子先生と<素問・厥論45>を一緒に読んでいたのですが、ふと以下のところに目が止まりました。

 <素問・厥論45>
 帝曰く。
 寒厥の寒たるや、必ず五指從(より)りして、膝に上る者は、何なるや。
 岐伯曰く。
 陰氣五指の裏に起こり、膝下に集まりて、膝上に聚る。
 故に陰氣勝てば、則ち五指より膝上に至りて寒す。
 其の寒するや、外從りならず、皆内從りなり。

 目に止まったのは、岐伯の返答の紫色の文字のところ「膝下に集まりて、膝上に聚る」というところです。

 集まる、聚ると表現の異なる所はさておいて、冷えが膝下から膝上に集まると目にして、ピンと来るのもがありません?


 そうです、足少陽胆経の足の陽関穴ですね。

 別名、寒府と称されるところです。


 「傷寒論」では、陽気の存亡の程度を知る方法として、手足の指先から四関(肘・膝関節)にかけての範囲で、どこまで冷えが上がって来てるのかを診ますよね。


 冷えが四関を超えて体幹部にまで及べば、いよいよ命の危機的状況となります。


 でね、なんで膝上、足陽関なのかってことです。


 おおよそ足陽関の横の並びには、足陽明の梁丘、足太陰の血海が並んでいますよね。


 体幹部からこの横のラインまでは、気血が大河のように流れていて、このあたりから支流のように気血が分岐してるイメージが湧いてきませんでしょうか。


 血海穴は、営血分の深い邪熱を清するのに非常に著効ある穴所です。


 もちろん、用瀉法です。


 では足陽関は、どうなんでしょうねぇ。

 

               続きます。

龍砂開合六気鍼法 by 永松周二先生

 本稿は、「一の会」年会員専用サイトで、永松周二先生が投稿してくださっていたものを転写したものです。

 公開いたしまして、みなさまのお役に立つことを願っております。

 

龍砂開合六気鍼法について

 五運六氣という思考モデルを用いた、龍砂医学流派が新しい鍼刺療法を創設した。

 開闔六気鍼法は刮目するような効果で広い関心を集めている。

 国家中医薬打点局龍砂医学龍派の代表伝承人である顧植山が伝授したこの方法は五運六氣開闔樞理論を鍼灸で運用し成功したものである。

 論を進修する過程において、国家中医薬打点局の龍砂医学龍派代表伝承人である顧植山氏が伝授、開発した三陰三陽開合樞理論を元に、全身に開闔樞の太極図を描いて三陰三陽の病機に基づいて相応部位に施鍼し、理想的な療効を得ている。その為、この方法を龍砂開闔六気鍼法と呼んでいる。

 

 当該療法は五運六氣六経の思考モデルを実用化し、できるだけ簡単にしながら、易学を用いて療効を測る事、そして効果の速さに着目しながら、臨床応用範囲を広げていった為、内科、外科、婦人科、小児科などの各科の疾患に用いる事ができ、臨床による反復検証を経て再現性を高めている。

 

 理論的根拠としては、顧植山が<黃帝内経>の「陰陽離合理論」に基づき、“顧氏三陰三陽開合樞図”及び“顧氏三陰三陽太極時相図”を書き出して、人体の三陰三陽六気の盛衰に関する運行リズムを明確に示した事である。

 

鍼刺の要点、詳細な定位

 人の身体はどこにでも太極があり、我々は人体の任意の一点を中心にして三陰三陽開合変化の円をつくって、頭頂部が最も有効で簡便で実用的だとした。

 この外、常用されるのは腹部や仙骨部(火鍼多用)、病巣部等にも応用している。

 

医師患者の体位

 “聖人南面而立”であり、医師、患者はどちらも南方に面して天人相応の理想状態を取る。

 但し太極は円運動である。

 医師を主体として見ると、左昇右降となる。陰陽開合樞はこれに対して相対的に捉えて、太陽と太陰はどちらも開であり通じている。

 少陽と少陰はどちらも樞で通じている。

 陽明と厥陰はどちらも闔で通じている。

 従って正反に向かうと全ての効果が高い。

 相対的な原則としては腹が陰であり、背中は陽に取る。

 

医師鍼刺手法

 患者に向かった状態で見ると、鍼刺区域は常にクロックワイズ(時計に準じて)、皮に沿って施鍼し、特段の補泻の技術はない。

 最近顧植山氏は鍼を指で代用する押圧手法を採用しているが同様の療効が得られている。

 

鍼刺中心点の意義と方法

 中心点は病機が向かう部位となり、引経鍼と呼ばれる。

 六経によって鍼刺の時を理解する。

 顧氏開闔枢理論によると、六経欲解時は病気の判断に重要な根拠となる。

 

取経

 一般的には医師は主要象態と次要象態によって2〜3部位に施鍼する。その他の注意事項は一般的な鍼灸と同様である。

 

臨床例

主訴:頻尿

名前:毛○ 女性 48歳

2019年7月10日バイクに乗車時転倒して腰背部を打撲し、左股関節部の可動域が制限される。

頻尿を訴え、昼夜共に30分に1回、酷い場合は睡眠に影響が出る。

頭鍼治療1回(太陰、太陽)、施術後の夜小便で起きる事無く、4回の治療後全快する。

ソース

360doc個人図書館

求本中医

品略

山東泰山療養院

 

永松先生 総 括

 総括すると、どの部位であっても図を用いて施鍼すれば相応の効果があるという論だと思います。

 この論拠を黃帝内経にとっていますが、そうであれば、経穴も準拠すべきですが、恐らく近年の頭皮鍼と合わせて流行らせようという意図の方を大きく感じます。

 周易の観点と黃帝内経の観点を合わせて考えると、脈診の記載が簡便すぎ(中医は基本全体の脈状のみ)、症状の緩解メインで現代中医の範囲を超えるものではないと考えます。

 簡便と簡易をはき違えている所が惜しい限りです。

 方薬に関しては一定の納得度はありますので、ここから経穴を考える方が有効に感じます。

 

 

附 記

 三因司天方は龍砂医学の処方
 龍砂医学とは、江陰龍山、砂山地区を源として、元代の著名な学者である陸文圭が基礎を作ったもの。

 明、清時代の医家の蓄積を経て、周辺地区で発展し、蘇州南部地区に大きな影響を与えた学術流派である。

 <黃帝内経>の運気学説を重視し、三陰三陽“開合枢”理論を運用して腎命理論による軟膏、養生、未病治などを行っているのがこの学派の共通特徴である。

 陸文圭 墙東という雅号で呼ばれていた。西漢末、北海人王君公が王莽の権力の乱世にいた時、牛の仲介業をして隠れていた。当時の人は“隔世の墙東王君公”と呼んだ。

 墙東とは<後漢・逢萌伝>に書かれている言葉で、後に市井の言葉で“墙東”とは隠居する地を指すことになった。百家に精通し、天文、地理、律歴、医薬、算術等の学問を知る知識人。代表作は<墙東類稿>

新型コロナウイルスと五運六気

 この稿の内容は、年会員専用サイトで永松周二先生が投稿してくださったものです。

 内容が素晴らしいですので、公開いたします。

 五運六気は、筆者の苦手とする所ですが、中国の懐の広さと深さをまざまざと見たような気持になってます。

 以下、永松先生の投稿です。

 

 神戸東洋医学研究会の投稿です。
【中医学の最前線:五運六気と王永炎先生】
2020年2月20日


「王永炎院士は、半年前に『瘟疫』が発生するのを予測していた」
王永炎院士半年前预测“瘟疫”要发生

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王永炎(wáng yǒng yán:1938-)先生は、『臨床中医内科学』の著者であり、中国科学院の『院士(博士より上のアカデミー会員で、飛行機や特急では特別扱いされる)』です。
以下、引用して翻訳。
「2019年の夏に、中国中医科学院での会議で、中国工程院の王永炎先生は、2020年春季に瘟疫が発生すると予測して警告していた」


2019年夏季,中国中医科学院会议上,中国工程院王永炎院士提出了2020年春季要有瘟疫发生的预测警示。
以上、引用終わり。


これは、2019年6月27日の「中国中医科学院组建多学科协作的中医药防治流感技术体系」という会議の席上です。

2019年7月5日「中国中医科学院」
中国中医科学院组建多学科协作的中医药防治流感技术体系


以下、引用して翻訳。
「(王永炎先生の発言)天地の象を観察し、萬物の生霊の象を観て、疾病健康の象を観る。そして、今年、長江以南で、大雨が災害を引き起こした。

 厥陰風木が司天であり、今年の前半は、比較的、おだやかであるが、今年の後半は特別であり、冬至前後から翌年の春(春節=旧正月)にかけて、瘟疫が発生する。

 これは中医薬の方老師(方薬中:方药中)の学説であり、方薬中老師は重視している。(『黄帝内経』の)陰陽大論や運気七篇学説は明確である。われわれは、五運六気の研究方面の第一人者である安徽省の顧植山先生を中国中医科学院に招聘しましょう。」


“要观天地之象,观万物生灵之象,观疾病健康之象。所以,今年大江以南,暴雨成灾。厥阴风木司天,已经描述了太虚元象。上半年,是比较和缓的。下半年,特别是在冬至前后,也就是连续到明年的春季,要有瘟疫发生。这也是方药中老师的学说,方老师很重视。阴阳大论,七篇运气学说,对于这个要清楚,目前我们院(指“中国中医科学院”)应该聘用顾植山先生,顾植山先生在安徽,他是在“五运六气”的研究方面很有造诣的一位。
以上、引用終わり。

2020年2月20日
『顧植山:五運六気による新型コロナウイルス肺炎の治療の解析』
顾植山:从五运六气解析新冠肺炎及其治疗https://www.medsci.cn/article/show_article.do?id=992218835569&fbclid=IwAR3rln5uMVG9nwNyVkxbKDnMHiWERuvtjRbcvRrzfA2t_62AynUrk2K5clA

 

以下、引用して翻訳。


『梅斯医学(MedSci)編集部の注釈:これは後付けではありません。2019年春に顧植山は、2019年冬至から2020年春節にかけて、瘟疫が発生すると予測していました』


【梅斯医学小编注:这不是事后诸葛亮,在2019年春天,顾植山就预测2019年冬至至2020年春节会有瘟疫发生】
以上、引用終わり。

顧植山先生は、中国における五運六気の第一人者です。

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新型コロナウイルス肺炎と中医薬

 
 今や世界中が騒然としてます、コロナウイルスによる肺炎。
 私たちの周りにも、イベントの中止など、じんわりとその影響が及んできてますね。
 各国でその対応が報道される中、やはり中国での中医薬による対応に注目していました。
 そしてやっと昨日、ネットで以下のようなニュースを目にすることが出来ました。
 
 既存の薬と中国医学の伝統薬、新型肺炎に効果あり 専門家
 さすが、中国ですね。
 そのコロナに有効とされてる「清肺排毒湯」の方剤の内容です。
 中国語ですがありました。
 ネットって、すごいですねぇ。
 清肺排毒湯對新冠肺炎具有良好療效。
 病態や症状を想像するために、方剤の中身を見てみることにします。
 (以下、上記ニュースより)
麻黃9g 炙甘草6g 杏仁9g 生石膏15-30g(先煎)  桂枝9g 澤瀉9g 豬苓9g 白朮9g  茯苓15g 柴胡16g 黃芩6g 薑半夏9g  生薑9g 紫菀9g 冬花9g 射干9g  細辛6g 山藥12g 枳實6g 陳皮6g  藿香9g
傳統中藥飲片,水煎服。
 
 筆者にとって見慣れない方薬もあるのですが、ちょっと並び替えて抽出してみますね。
 麻黃 杏仁 生石膏 炙甘草
 これは麻杏甘石湯ですね。
 風熱の邪などの外感病に使いますよね。
 大量の石膏を使ってますので、気分の熱に重点を置いて、麻黄で表の水を動かして杏仁で降ろす。
 主に喘や咳を鎮める方剤ですね。
 
 そして
 桂枝 澤瀉 豬苓 白朮 茯苓 
 これは太陽病・蓄水証の五苓散ですよね。
 これは通陽化気・利水滲湿、つまり水をさばく作用ですね。
 口渇があって、水を飲んでも口渇が治まらず、小便も出ないといったイメージでしょうか。場合によっては、嘔吐もあるかもしれません。
 この麻杏甘石湯の麻黄と、五苓散の桂枝が合わさるので、発汗するでしょうね。麻黄湯になりますから。
 すると麻杏甘石湯と五苓散で、水と熱を汗と小便に持っていこうとしてることが窺えますね。
 水をさばいて気の通りをよくしておいて、麻黄・桂枝・石膏で風寒でも風熱でも、どっちでも来い!散らしてやるぞって感じでしょうか。(後述の細辛・麝香なんかもそうですね)
 
 そして 柴胡 黃芩 薑半夏 生薑 です。
 小柴胡湯の類が意識されますね。少陽枢機・膈を開こうとする意図でしょう。
 細辛は辛温で散じる力が強いので表は寒邪を裏は寒飲を散じますね。
 藿香はあまりなじみが無いのですが、やはり散じる力が強い薬物だと思います。
 そして 枳實 陳皮 でさらにこれを助けるのでしょう。唯一補薬がイメージされる山薬。
 そしてさらに筆者にとってなじみの薄い、紫菀(しおん) 冬花 射干(やかん)ですが、上焦病位の清熱に働くようです。
 ですから、よほど肺に熱を持つのでしょう、この病は。
 ここまでくると、コロナウイルスによる外感病の、おおよその病態と症状を想像することが出来ますよね。
 そしてその予防法・養生法もね。
 日本に住む我々だと、気候風土からして特に「水はけ」水利には普段から十分に気を付けておいた方がよさそうですよね。
 次いで内熱でしょうか。
 筆者はお酒が大好きなので、ここは摂生が必要なところです💦
 あと甘い物や肉・油物などは内熱を助長しますので、摂り過ぎには気を付けたいものです。
 
 こういうの見てると、やはり中国ってすごいな~って思います。
 本来、湯液って、個人対個人、方証相対じゃないですか。
 でもそんなことやってたら間に合わないから、数多くのコロナによる外感病の症例から、最大公約数的な病理を導き出して方剤を考案してるのが分かりますよね。
 中には、この病理の組み立てに合わない人もいるかもしれませんが、それよりもこの方剤で助かる人の数の方が多いのでしょう、きっとね。
 ちなみに、中国でも鍼灸治療の情報はまだですね。
 医療制度の異なる日本の東洋医学界では、中国のような対応は無理でしょう。
 ですが、この中国での対応から、我々は学ぶことが出来ます。
 もし身近な家族とかに万一のことがあれば、筆者は自分の手で治療を試みたいと思ってます。
 先ずは日ごろの養生。
 特に食生活ですね。
 そして万一治療が必要となれば、水と壮熱。
 このあたりを十分に意識してことに臨みたいと思います。
 
 

 

第7期 2020年度「鍼道 一の会」東洋医学講座 参加者募集のお知らせ

 本年4月より、「鍼道 一の会」東洋医学講座のカリキュラムを新たに致しまして、7期目の講座を開始します。

 

 多くの鍼灸師にとって、教科書や中医書、その他の文献で学び、いざ臨床で用いようとした時に立ちはだかるのが、

 

 「気」をどのようにとらえて鍼を施すのかという問題です。

 

 それを解決すべく、本来、目に見えないはずの「気」を捉えて術を施す、認識論と方法論を並行して講座を進めて参ります。

 

 我々が目指している本来の鍼灸医学は、内経医学に基づいた道術としての医学です。

 

 稻垣座長をはじめ、各講師陣も講座内容の装いも新たに、昨年度よりさらに充実度を高め、皆様のお役に立つ内容をと、準備をしております。

 

 また今回は、新たに講師として川村淳子先生が加わり、日常生活でなじみのある話題から医学へとつなげ、患者さんのお役に立つ内容を提供する予定です。

 

 加えて、術者は先ず何よりも、自分自身が元気でなければなりません。

 2020年度も、尾関克哉先生(健志堂 院長)による『身体学』は、術者の身体感覚に重点を置き、鍼の効果を最大限に引き出すコツを、参加者の皆様同士で実際に確認しながら進めて参ります。

 

 各講師のコメントは、以下をクリックしてご確認ください。

 あなたにお目にかかれるのを楽しみにしております!

www.ichinokai.info

 

▶ 2020年度 募集要項・課程|『鍼道 一の会』東洋医学講座

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2020年度 第7期募集要項

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感情の取り扱い方 活動報告―1月基礎医学講座

 2020年最初の基礎医学講座では、かねてより要望がありました「七情」をメインに取り上げました。

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 七情とは、人に備わっている感情です。その過不足が病因となりうることを、約2000年前に著された<素問・陰陽応象大論>で説いています。

 

 すごいですよねぇ、ストレス学説よりはるか以前に、すでに ”感情が人を害する” ことを見抜いているのですから。

 

 感情というのは大きな「気」、すなわちエネルギーですので、感情を表現する(=出す、発散する)ということは、我々の医学概念で表現すると自己瀉法=自然瀉法です。

 

 正気が充実しておりますと、感情表現=発散すると「快」となります。

 

 これは七情に限ったことではなく、汗・小便・大便なども、身体から出す際には快感を伴うことは、みなさまも経験がおありでしょう。

 

 しかし七情過多となり、むやみに感情を出しすぎると、瀉法が過ぎるので次第に正気は弱ってきます。

 汗や下痢が止まらないと、いずれ生死にかかわりますよね。感情も同じです。

 

 また逆に七情を抑え込むと、身体内部において気(エネルギー)がうっ滞しますので、非常に苦しい状況を招来します。

 例えが適切でないかもしれませんが、大小便を出さないで我慢し続けるのと同じ状況と考えてくだされば、これもまた深刻な病につながりますよね。

 

 また、感情を抑えることは、胸を閉じることにもなります。

 胸が閉じてしまうと腹の中の代謝も悪くなり、様々な邪気を生じることとなります。

 さらに、胸が閉じると感情は出て行かない代わりに入っても来なくなります。

 言うなれば「こころ」に蓋をした状態と言えるでしょうか。

 結果、深刻な場合は顔から表情が消え、鬱になったり閉じこもるようになったりします。

 

 この感情の過不足は、喘息やアトピー、また癌や脳神経疾患など、多くの病の根底にひっそりと隠れるように存在しています。

 

 そしてこの七情問題が根深く絡んでいる場合、治療をしてもなかなか根治しません。

 

 なぜなら、この七情問題を解決できるのは、その人(本人)以外に無いからです。

 

 東洋医学では、この問題を「四診」を用いて認識し、治療を行います。

 治療により改善する事例も多くありますが、根本的な解決にならない場合もあります。

 

 では、どうするのか。

 まず治療者自身がひとりの人間として、自分自身の問題と向き合うことです。

 その経験を元に、患者本人が問題解決へと向かえるようサポートするのです。

 

 今回の基礎講座では、参加者自身が自分とどのように向き合っているのかを開示し合いました。

 いわば、自分自身のトリセツといったところでしょうか。

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 随分、なごやかな雰囲気となり、あっという間に時間は流れて参りました。

 

 ***

 

 最後に、この「感情」について、筆者なりの見解を開示したいと思います。

 

 感情は、いわば自然現象と考えます。

 風が吹けば水面にさざ波が立つことと同じです。

 この自分の中に湧き起こった感情は、時間と共にまた元の状態に鎮まるのが自然です。

 が、実際はそうならない場合も少なからずありますね。

 いつまでも自分の中をぐるぐる回っているばかりでなく、場合によってはさらに大きくなって嵐になることだってあります。

 

 このさざ波を嵐にまで育て上げるのは、観念と思考です

 (分かったかのようなこと書いてますが、実はこれ仏法の教えです。)

 

 現代社会、特に日本では、感情をあらわにすることはネガティブな事としてとらえられがちですが、この感情こそが人の生き生きさでもあります。

 また、この感情のやり取りにより、人と人との気の交流が深まります。

 

 円滑な感情、和するということは、一体どういうことなのでしょうね。

 

 東洋医学には、終始という思想があります。

 いつまでもその時の思いや感情にしがみつくのではなく、季節が移ろうように流れて行くのを善しとします。

 このあたりのことは、<素問・上古天真論>で『恬惔虚無』という一言で表されています。

 もう少し深く知りたいと思われる方は、ブログ『鍼灸医学の懐』をのぞいてみてください。

上古天真論(一)-天寿を全うする(1)

黄帝内経 素問
 
 





 

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