ブログ『鍼道 一の会』

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四季と人体(7)五節句ー七夕の節句

      

 

 今回のテーマは7月7日、「七夕の節句」についてお話させていただきました。

 

 「七夕」とは、その言葉の通り、「7月7日の夕方」のことを指します。

 別名、七夕祭、星祭とも呼ばれています。

 もともとは「シチセキ」と発音していたそうですが、「棚機(たなばた)」の風習と重なり、「たなばた」と発音するようになったと言われております。

 

 古来の七夕は秋の季語。

 旧暦の7月7日は、2021年(令和3年)の8月14日、24節気に当てはめますと、立秋と処暑の間。

 7月の別名、文月の語源は、七夕の短冊に願いを書いたところから、文をしたためる月と言われるようになったとの説があります。

 

 この頃の外気と身体のベクトルのおさらいです。

 

【夏】

 成長化収蔵の「長」外へ外へと陽気が発散するイメージ、外界で強まる陽気の影響を受け、身体の上下のベクトルもまた、上へと登りやすくなるイメージです。

 

【秋】

 農作物が収穫されていく季節。身体のベクトルは内向きに。収斂、引き締まるイメージです。

 外気が内向きになり、ベクトルも全体に下向きとなります。

 

 このような季節の節目に、昔の人々は、どのように過ごしていたのでしょうか。

 季節の行事にそのヒントは隠れています。

 

 現在行われている七夕のお節句、大きくわけると、3つの行事が1つになったものと言われています。

 

1つは、中国の「牽牛星(けんぎゅうせい)と・織女星(しょくじょせい)の星祭の伝説」

2つめは、そこから派生した中国・唐代の「乞巧奠(きこうでん)」

3つめは、日本在来の「棚機(たなばた)姫信仰」の3つのお祭りが集合した形といわれています。  (「陰陽五行説」)

 はじめのふたつが中国から伝わり、3つめの日本在来の信仰と交わった形になります。

 

 牽牛と織女のお祭りはみなさんもご存知だと思います。

 年に一度、彦星と織姫が天の川を挟んでに出会うという伝説です。

 

 乞巧奠の風習はこの伝説の織姫にあやかって派生したもので。7月7日の晩にお供えものをして、星を祭り、裁縫や習字、詩歌の上達を願う行事です。

 こちらは中国の唐代、玄宗皇帝・楊貴妃の時代にはじまったと言われています。

 乞巧奠の「乞」は「願う」、「巧」は「巧みに上達する」、「奠」は「まつる」、という意味で、織姫にあやかって、機織りや裁縫、習字や芸事の上達を星に祈る行事だったといわれています。

 

 この2つの行事が、日本にもとからあった、「棚機(たなばた)つ女(め)」の伝説と結びつき、奈良時代に宮廷や貴族に広まり、のちに庶民の行事として広がっていきました。

 

 棚機(たなばた)姫信仰とは年神を迎えるため、水辺にはたを織る小屋をつくり、巫女さんが機(はた)を織り、村の穢をはらい、その年の豊作を祈るという、水による禊の行事でした。7日7日は水に関する行事が多いのも特徴です。

 「穢」ケガレをはらう。邪を取り除くことで心身を清めることを意味する行事だったのですね。

(ケガレは「気が枯れる」の意、という説もあります。)

 これが、時期的に、お盆の前にケガレを祓うという、という先祖祭りともつながっていきました。

 

 七夕の飾りにも色々と意味がありますので、動画で説明させていただきました。

 

 中国では、乞巧奠に、豆、スイカ、うり、豆からつくられる月餅などを食べていたとの記録があります。また、小麦に米粉をくさえて作った、索餅というものをお供えに使っていたそうです。

 これが鎌倉時代に日本に伝わり、宮中では、索餅(さくぺい、さくべい、むぎなわ)を献上すると、熱病をもたらす鬼や厄災を退け、1年間無病息災で過ごせるという儀式となったそうです。

熱病をもたらす鬼…邪気、暑邪とか熱邪といったものでしょうか。

 そこには、例えば「瘧(おこり)」という病気が含まれていました。それが、広義に、外邪全般を指すようになったというところかもしれません。

 

 この索餅、「糸まきからはずした糸」のイメージだそうで、これが転じて、素麺を献上する儀式となりました。

 索餅と同じ、小麦を使った素麺を「糸」に見立て、宮中では、孝謙天皇の頃(755年)から始められたそうです。

 その際、7本の針に、陰陽五行説の五色(ごしき)青・赤・きいろ、白、黒の糸を通して、針仕事の向上を願いました。

 他には、ほおずきの根「酸漿根(さんしょうこん)」を煎じて飲む風習などもあったようです。

 

 さて、【7~8月の養生】についてです。

 

 まずは、いつもどおり、避けるべき邪気について検証してみましょう。

 夏まっさかりということで、他の季節と比べると圧倒的に、暑邪・熱邪の影響が高まることが考えられます。汗をたくさんかきますので、発汗過多から、陰血不足。

 気虚傾向になる方は衛気不足で、外邪に対する防御力が全体的に落ちているかもしれません。

 熱がこもりやすい体質の方は内熱傾向が顕著になることが考えられます。

 残暑の場合は、これに気温変化や、乾燥の影響を考えます。

 

 現代の事情を考えますと、冷たい飲み物や、アイスクリームなどの影響による寒邪、湿邪の影響。

クーラーの影響による、風邪・寒邪の影響も考慮した方がよいかもしれません。

 

 外は猛暑で、腠理(そうり)が開き、汗をたっぷりかいて、お留守になった体表にクーラの風寒邪が悪さをして体調を崩すなど、季節の影響に加えて、いまの暮らしに寄り添う養生を考える必要がありそうです。もちろん患者さんが元からもっている体質にも左右されます。

 

 お天気としては、台風の影響が考えられます。風・湿・熱邪。気機の乱れによる体調不良も考えられます。順風は夏~秋ですので、南から西の風、台風は逆風になります。

 

 これらを踏まえまして、養生のテーマは清熱・利水・気虚陰虚の回復、としてみました。

 

 熱や湿気がこもらない衣類や履物を選ぶ。

 クーラーや冷たい食べ物や飲み物をなるべく避ける。

 消化のよいものを選び、脾胃をいたわり、水はけをよくする。

 身体にこもった熱や湿気を出してくれる食べ物(スイカ、胡瓜など旬のもの)を選ぶ。

 夜はしっかりと寝て気血を養う。   

 

 私の思いついた養生は、基本的には、あまり昔のひとと変わらない感じになりました。

 みなさんならどう対処なさいますか? またお聞かせくだされば嬉しくぞんじます。

 

※ 「瘧」については、勉強会中に、稻垣先生が補足を加えてくださいました。

以下、資料からまとめなおしたものになります。

 

【瘧(おこり・ぎゃく)】

①《隔日また周期的に起こる》間欠的に発熱し、悪寒(おかん)や震えを発する病気。主にマラリアの一種、三日熱をさした。えやみ。わらわやみ。瘧(ぎゃく)。《季 夏》1)

② 現存する日本最古の医書『医心方(いしんぽう)』では「わらはやみ」の和名がつけられている。童病」の意。2)3)

 

【参考】

1) デジタル大辞林

2)『日本国語大辞典 第13巻 第2版』小学館国語辞典編集部編集 小学館 2002

3)『医心方 巻14 蘇生・傷寒篇』丹波康頼撰 槇佐知子全訳精解 筑摩書房 1998

 

【文責 川村 淳子】